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余命幾ばくかの傭兵  作者: いろじすた
第2章 潜れ、アマテラスの根幹

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「廊下にて」

 校門の前の人集りの原因。

 それは、銀の乙女団の仲間であるこの二人だった事に驚いてしまう。


 グレン・グレゴリウス。少年の様な容姿をしているがもうすぐ30歳になるオジさんだ。

 グレンは、上級アーク【超剛力(ハイパーマッスル)】のマスターで、その可愛らしい少年の様な容姿とは裏腹に力だけであればうちでトップクラスのパワーファイターだ。

 また、強さもさることながらその容姿によって異性にかなり人気があり、非公式のファンクラブがあると聞いている。


 そして、次に。ミリー・ジョーンズ。

 腰までまっすぐ伸びきった黒髪は、団にいる時は、鼻先まで前髪で覆われているのだが、今日は余所行き仕様だ。

 ミリーは、いつも髪で顔が覆われているため分からないが、実はかなり整った顔をしていてグレンと同じく我が団の広告塔でもあるため、対外ミッションなどがある時は団長のしじでその容姿を全面的にオープンにしている。

 ミリーは【最上の癒し手(パーフェクトヒーラー)】という特級アークマスターで、死なない限りどんなケガでも治せる、うちの団の頼りになる回復役なのだが、自分で考えたえげつない新薬を勝手に撒くなど多々暴走する事が玉に瑕だ。

 今日は普段着ている不気味な黒色のナース服は纏っておらず比較的に明るいワンピース姿だ。

 ミリーもまた、グレンと同じようにファンクラブがあると言う。グレンはともかく、ミリーの本性を知ったらみんな逃げると思うのだが、これまた団長の命令で本性を隠しているので端から見たらただの綺麗なお姉さんだ。


「グレン、ミリー……なんで二人なここに?」

 

 俺が、二人に話しかけると野次馬達はーー


「なんなのよあの子、グレン様とどういう関係!?」

「サンコーの落ちこぼれが俺らのミリーちゃんを呼び捨てにしやがって」

「でも、二人も知ってる様子だぜ?」

「おい、あいつ、あれじゃないか? 佐伯さんを倒したっていうサンコーのヤツって。ほら、銀の乙女の養子だっていう」

「私も聞いたよそれ! それならあの二人と顔見知りなのも納得よね」


 とまぁ、今度は俺の方へ興味が集まる。


「ここでは何だから、とりあえず中に入ろう?」


 とグレンは、親指で校舎を指す。


「学校に? 学校は部外者は立ち入り禁止だけど」

「心配すんな、行くぞ。わりぃな、学生たち。おじさん達を通してくれ」


 グレンが爽やかな笑顔でそう話すと、校舎に向かってモーゼの十戒の様に人の群れが割れる。


「ありがとう。じゃあ、行こうか」


 俺達はグレンを先頭に校舎に入っていった。



「それで、その子が団長に言ってたダチか?」


 来客用のスリッパに履き替え終わったグレンが井波さんを見てそう訊ねてくる。


「うん、クラスメートで今一緒に迷宮に潜ってる井波さんって言うんだ」

「井波春風です。鷹刃君には、その、色々と本当にお世話になって」

「へぇ、かわいい子じゃねぇか。やるな坊主」

「か、可愛いだなんて! あの【小さな巨人(リトルギガント)】のグレン様に恐れ多い……」


 リトルギガントは、グレンの二つ名で、俺の【双刃(ブラックマンティス)】と同じようなものだ。小柄な見た目では巨人の様なパワーを持っているグレンにピッタリな二つ名だだろう。


 この様子だとどうやら井波さんもグレンの事は知っているらしい。

 まぁ、銀の乙女団は、世界最強の傭兵団として名高いためアークマスターであれば誰しも一度は憧れを抱く存在と聞いた事がある。それに、俺達銀の乙女団のメンバーは、傭兵専門誌である月刊マシーナリーに載らない事がないため、さらにその認知度は高い。まぁ、俺は顔を出した事がないため認知されることはないだろうけど。


「カッカッカ! そんな畏まるなって。坊主のダチなら俺らともダチだからな。改めて銀の乙女団のグレン・グレゴリーだ。よろしくな春風ちゃん。ほれ、お前もちゃんと自己紹介しろよ」

「ミリー・ジョーンズ……です、よろしく、お願いいたします」

「よ、よろしくお願いいたします!」


 室内履きに履き替えた俺達は、周囲の注目を浴びながら廊下を進む。

 まだ、グレンの口からなんでこの場所にグレン達がいるのか聞かされていない。もしかしたら、井波さんの前で話せない事なのかもしれない。


「遅いぞグレン、ミリー」


 前方から担任の茅野先生が歩いてくる。


「久しぶりだな香雅里! すまねぇ、校門前で学生達に囲まれてよ」

「遅れてすみません……」

「えっと……茅野先生と二人って顔見知りなの?」


 この学校に来てはじめて茅野さんと出逢った俺とは違いグレン達は茅野先生の事を知っている様子だ。


「まぁな。坊主がうちに来る前、一時期行動を共にしたことがあんだ」

「うち?」


 井波さんが反応する。

 一応、家族以外は俺が銀の乙女団のメンバーとは知らない。

 別に井波さんとかには教えても問題ないとは思うが、タイミングを掴めずにいる。


「井波、お前は先に教室に行ってくれ」


 茅野先生が空気を読み井波さんを先に教室に行く様に指示する。


「あ、はい。では、私はこちらで」

「おう! またな」

「さよなら……」

「俺もすぐにいくから」


 井波さんは、深く頭を下げたのち教室に向かう。


「良さそうな子じゃねぇか」

「うん、いい子だよ。すごくね」

「さて、お前達はこっちだ」


 俺達は教職員の会議室へ通され、茅野先生を除いてそれぞれ席につく。


「グレン、鷹刃には?」

「さっきは、春風ちゃんがいたからな。話してないぜ」

「そうか。この場所なら誰にも聞かれる事はないだろうから、自由に使ってくれ。私はホームルームに向かう」

「おう! ありがとうな」


 茅野先生が、会議室から出て行くタイミングでグレンが口を開く。


「坊主、お前狙われてるぜ?」

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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