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余命幾ばくかの傭兵  作者: いろじすた
第2章 潜れ、アマテラスの根幹

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「ランカー」

 昨日のごたごたから一夜が明け、

 今日もみんなとの集合時間に合わせて調達屋協会に向かう。


 昨日、あの後、協会の警備隊に取り押さえられた無精ひげの男の男達は、通報によって現場に現れた番人(ガーディアン)達により連行された。一般的にアークマスター絡みの事件は番人が、雨音の様なアークレスは警察が受け持つことになっている。裁かれる場は相互変わりはないが、力を持つ者の宿命というべきなのか同じ罪でもアークレスよりアークマスターの方が重い処罰が課せられる事が主流とされている。


 昨日は調書とかで時間を取られ家に着いたのは結局9時過ぎになってしまった。一緒に夕飯を食べる約束を破ってしまった俺に対して不機嫌だったスミをルミが宥めてくれて何とか事なきを得た。


「今日は夕飯に間に合うようにしないとね」


 流石に二日連チャンなんて事があればスミは俺を許してくれないだろう。

 義妹に嫌われたくないと思う俺がいる。


 そんな事を考えながら協会のエントランスを通り抜けると、昨日と同じように待ち合わせ場所である食堂へと向かう。


 案の定、今日も俺が一番最後だった。


「二人ともおはよう」

「おう、おはよ!」

「おはようございます!」

「どうだ? お前も飲むか?」


 豪志は右手に持った蓋付きの紙コップを俺に向ける。

  

「いや、さっき飲んできたから今はいいかな」


 豪志はそうかと言って、紙コップの中身を一気に飲みほすと椅子から立ち上がる。そんな豪志をみて井波さんも同じような行動に出るのだが、急にドリンクを流し込んだせいで、咽てしまいゲホゲホと苦しそうに咳き込む。


「大丈夫か? 春風」

「す、すみません。お見苦しいところを」

「まだ、集合時間の前だしゆっくりでいいよ。それに今日はゲートに並ばなくていいから時間に余裕があるから」

「そうだな。すまねぇ、俺がせっかちなせいで」

「ゲートに並ばなくていいってどういう事なんですか?」

「ナンバー1受付嬢のである纏さんのパートナーとなった俺達は、纏さんの専用部屋から迷宮に入る事ができるんだ」


 これも受付嬢とのパートナーを結ぶことによって得られる特典の一つだ。

 纏さんの場合は専用部屋があるので、そこから迷宮への行き来が可能だ。ちなみにナンバー2以下はパートナー共有ゲートになる。それでも一般のゲートに比べて圧倒的に空いているので、行きも帰りもあの列に並ばなくてもいいのはかなり時間の短縮になる。


「そんなものまで……ナンバー1受付嬢って凄いんですね」

「……そんな大した事はありませんよ?」

「ひゃぅ!」

 

 当の纒さんにいきなり耳元で囁かれた井波さんがとび跳ねるかの様に驚く。


「おはようございます、皆さま」

「おはようございます」

「おはよう! 纏さん」

「はぅ、びっくりしました……おはよごうざいます」

「うふふ、ごめんなさい。井波様の耳があまりにも可愛い形をしていたのでつい」


 いつも表情を崩さない纏さんが初めて人懐っこい笑みを浮かべる。

 あきらかに意図していないこっちの表情の方が自然体なのだろう。


「ちょうど今から纏さんの所に行こうと思っていたんだ」

「そうだったのですね。今日は、初日ですのでご案内にまいりました」


 初日というのはパートナーになってから初日という意味だろう。


「わざわざありがとうございます。じゃあ、みんな行こうか」

「おう」「はい」

「では、こちらへ」


 纒さんの背中についていく俺達に周囲の注目が集まる。ナンバー1受付嬢の名は伊達ではないということなんだろう。

 そんな状況に豪志はなんだから誇らしげに、井波さんは気まずそうにしていた。俺はというと、世界最高峰の傭兵団の一員として腐るほど注目を浴びてきているため全く気にならない。


 周囲の注目を浴びながら纏さんの専用部屋へと向かい、俺達は専用ゲートを使い11階層へと転移した。


 今日は、13階層まで移動しそこでレベル上げをした。

 13階層では、真っ赤な巨大猿アングリエイプや二つ頭の巨狼であるオルトロス、そして刃の様な鋭い牙を持つサーベルタイガーなどのフィアーが主流だった。

 ここら辺までは武器の性能もあり、俺なしでも二人と危なげなく戦えた。


 井波さんのレベルが豪志に追いついた事もあり、経験値の配分を俺10、豪志45、井波さん45に変更した事で豪志のレベルもどんどんと上がっていた。


 そんな俺達は、13階層を突破し14階層へとたどり着いた。

 時刻は15時PM。まだ、時間的に早いがキリもいいので今日の活動はここまでする事にして、俺達は到達ポイントの登録を済ませ纏さんの専用部屋へと帰還する。

 カチャガチャとディバイスを操作していた纏さんが俺達の姿に気付く。


「あら? お早い帰還ですね。何かございましたか?」

「キリが良かったから今日の活動は終わりにしたんだ。ライセンスの更新をお願いします」


 俺達は纏さんに各々のライセンスカードを手渡す。


「承知いたしました」


 纏さんは俺達のライセンスを順にカードリーダーに読み取らせる。


「まぁ、たった1日で14階層まで……しかも、このレベルの上がりよう、信じられません」


 11階層以降は難易度がグンと上がるため一つの階層を攻略するためには最低でも1週間はかかるとされているため、俺達のこのペースは異常らしい。


「しかも、このレベル……井波様の次のランクアップも早急に考慮する必要がございますね」


 井波さんと豪志の今現在のステータスは次の通りだ。


名 前:井波春風

ランク:Dランク

パーティ:カイト

レベル:100(+25)

H  P: 307(+75)

攻撃力:407(+100)(+75)

防御力:307(+75)

敏 捷:407(+100)(+75)

技巧性:307(+75)

運  :777

装備:フェザースピア(攻撃力+100、敏捷+100)



名 前:宮本豪志

ランク:Cランク

パーティ:カイト

レベル:102(+24)

H  P: 238(+72 )

攻撃力:394(+150)(+72 )

防御力:234(+72 )

敏 捷:267(+72 )

技巧性:282(+72 )

運  :55

装備:ボルケーノ(攻撃力+150)


 驚く事に豪志のステータス上昇値もMAX値になっていた。

 井波さんの効果だろうか?


「えっ? 私、昨日Dランクにあげていただいたばかりですよ?」

「井波様のレベルは100。これは、この調達屋協会日本支部のレベルランクTOP500に入ります。そんなランカーである井波様をこのままDランクに留まらせておくことはできません」

「ランカーですか?」

「ランカーはレベルランク上位1,000位以内に入った会員様の事をいうのです」

「まぁ、俺も到達階層10階でレベル70そこらでCランクになったのだから、到達階層14階でレベル100の春風がCランクになってもおかしくないだろう。ランクは上げておいて損はないぜ? Cランクになれば所得税の税率が低くなったりあらゆる面でメリットがあるからよ」

「メリットがあるのでしたら、ぜひ、お願いします」

「承知いたしました。では、支部長の方へ稟議を上がる様に致します」

「よろしくお願いいたします。それにしてもレベルランクですか……鷹刃君がぶっちぎりの1位ですよね」

「1位は俺じゃないよ」

「ふぇ? だって、鷹刃君のレベルって999じゃないですか? それより高い人が存在するんですか?」

「いえ、カイト様はランク登録をされておられないため、ランクに載っておりません」

「あんまり悪目立ちしたくないから登録していなんだ。因みに、1位ってどんな人?」

「現状この支部の1位は、パーティー【クマオヤジ】のリーダーでSランクの熊澤郡司様でレベルは278になります」

「郡司さんか、それはそうだよな」

「豪志は知ってるの? その郡司って人」

「もちろんだぜ! 世界でもトップ3にはいる調達屋だぜ? しかも、面倒見のいいめっちゃいい人だぜ!」


 自分の事の様に誇らしげに語る豪志を見て口元が緩む。


 それから俺達は、取得品の換金を行った。

 査定額は約1200万円。当初の約束通り俺達は400万ずつ分配する。

 まぁ、井波さんは終始顔が引き攣っていたけど、気にしない事にした。

 時間にして30分ほど纏さんの専用部屋で過ごした俺達が踵を返そうとしたその時、纏さんに引き留められる。


「カイト様、もう少しだけお時間よろしいでしょうか?」


 用件は大体想像がつく。おそらくクララの事だろう


「少しならいいよ」

 

 今日は、夕飯に遅れるわけにはいかないからね。 

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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