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余命幾ばくかの傭兵  作者: いろじすた
第2章 潜れ、アマテラスの根幹

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「複合人間」

 対フィアーに対して有効的な攻撃手段であるアーク。そして、そのアークを行使するマスターの存在は、今となってはこの世界の核心であり、アークマスターを中心に世界が廻っていると言っても過言ではない。


 そんな訳でアークマスターは、アークを持たない一般人【アークレス】にとって、渇望、危惧、嫉妬など様々な感情のターゲットであることも確かだ。ちなみに、47番目の染色体を持たないアークレスは地球全体の人口の7割を占めていると言われている。


 なぜ、持つ者と持たない者がいるのかは未だに判明されていない。

 そうは言っても楔やアーク、フィアーなどに関して判明されてない事案の方が圧倒的に多いのでそれはしょうがないと言えるだろう。


 アークレスと言っても人類の7割を占めているため、いくらアークマスターによって世界が廻っているといわれていても、それなりの権力者や資産家といった特級階級の者達も多数存在する。そんな特級階級の者達は、アークによって己の地位を失いかねないという持たない者だからこそ抱える不安に抗うかのように様々なアプローチが秘密裏に行われた。


 その中でも代表的な物が二つある。


 一つは、【超級マスター計画】である。

 そう、カイトという出鱈目な存在を生み出したプロジェクトだ。

 そして、もう一つは、複合人間計画(キマイラプロジェクト)だ。


【超級マスター計画】は最強のアークマスターを生み出すプロジェクトであり、複合人間計画(キマイラプロジェクト)とは【アークマスターを凌駕する存在を作り出す】を目的としたプロジェクトだ。


 プロジェクトの全容は、既存のアークマスターの細胞にフィアーの細胞を取り入れて超人的な存在を作り出そうとする至ってシンプルな方法だが、ただでさえ遺伝子構造が異なる二つの種族を掛け合わせるのは困難であるため、超級マスター計画同様多数の犠牲を必要とした。

 無謀に近いこのプロジェクトも屍を積み重ねる内に製造方法が確証され複合人間(キマイラ)の製造に成功したのだった。

 そして、量産可能になった複合人間は一部を除き、特殊な聖櫃具(ツール)により絶対服従の戦闘奴隷として高価に取引されているとされている。


――そして、今現在海人の目の前には見た目は人間と変わりないが狐の様な耳と尻尾を持つ少女が立っていた。


 

 少女を見てみる。


 雪の様な白い肌を覆い被る様な薄紫色の髪は腰の方まで伸びていて、頭部には髪の色と同じ一対の薄紫色の獣耳がピンと上を向いている。そして、全体的に女性らしさを帯びた身体をしている少女の臀部には薄紫色のモフっとした尻尾がついている。

 そして少女のか細い首に付けられたチョーカー。絶対服従の聖櫃具だ。

 

「まさか、複合人間(キマイラ)を連れているとはね」

「ハン! 少しはできるようだが、こいつ掛かればお前なんて一瞬の終わりだ! なんせ、こいつはカテゴリー2だからな! ぎゃっははは!」


 へぇ~カテゴリー2ね。


 複合人間にも強さによってランク分けがされている。

 一般的にカテゴリー1~4の4段階によって区分されている。

 基本的に母体となっているアークマスターのランクによってカテゴライズされているのだ。


 例えば、下級は4、中級は3と高ランクの母体であればあるほど低い番号になっていく。


 また、例外として複合人間のカテゴリーから外れた存在がいる。

 それがカテゴリー0の龍神オロチと呼ばれるバケモノだ。

 オロチは死刑囚だった特級アークマスターを母体に国一つを焼け野原にした災害級フィアーである蛇龍ヨルムンガンドの細胞を取り込んだ最悪最強の複合人間だ。

 実際に会った事はないが、世界最強のアークマスターとして呼び声が高い団長でも、オロチだけには勝てる気がしないと言っている程だからよっぽどなんだろう。

 でも、アークマスターの例外とも言われる存在である俺がオロチとどれ程やりあえるか興味がないと言えば嘘になる。


 さて、話を戻そう――。


「カテゴリー2となればかなり高額なハズなんだけど……あなた達がそんなにお金を持っているとは思わないし。その子はどうやって手に入れたの?」

「良く知ってるじゃねぇか。戦利品ってやつだよ。俺達に喧嘩を売ってきたアークレスから慰謝料として頂いたのさ! まぁ、こいつの事を売って借金の足しにしようと思ってたけど金づる様が現れたからな」

 

 金づるというのは俺の事だろう。

 

「まぁ、俺はあなたの金づるになるつもりはないけどね」

「ハン! 言ってろクソガキが! 少しは出来るからって調子に乗りやがって! おい、狐! あのガキを痛めつけろ!」

「……ハイ」


 ローブから現れる狐の少女の両手には、鉄の爪という鉄で出来た鋭い爪型の武具が装着されていて、その先端が俺の方へ向けられる。


「……行きます」


 少女は足音が聞こえないほどの軽い足取りで俺との距離を詰める。

 まずは、この少女がどれくらいやるのか様子を見る事にする。


 少女は、鉄の爪を用いて四方八方から引っ掻く様な斬撃を繰り出す。俊敏性はかなりのものだろうが、脅威となる攻撃は一つもない。

 全ての攻撃を見極めた上で躱していくと焦燥感に煽られているのか少女の攻撃が雑で、そして荒らしくなる。


「なんで、当たらないの……ッ」

「そんなの簡単だよ。俺が君より強いからだ」

「何をしている! 本気を出せ!」


 少女の首に付けられたチョーカーが発行すると少女は苦痛な表情を浮かべる。


「ハ、イ」


 少女の身体を青い炎が包み込む。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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