表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
余命幾ばくかの傭兵  作者: いろじすた
第2章 潜れ、アマテラスの根幹

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

57/72

「初戦闘」

 斥候役の豪志を戦闘に鬱蒼とした森の中を進んでいく。

 この国の楔への道筋(ザ・ロード)である樹海。

 直径10キロメートルほどの森の中では、スライムや1メートル程の大きさのネズミ型のキラーラット、群をなさない狼型のロンリーウルフをメインに小型のフィアー達が現れるとされている。


 フィアーには、4つのランクが設けられていて、落とす角石によって区分されている。

 角石には、白く青く黄く緑く赤く銀く金の順に魔力の含有量が増していく。

 フィアーの区分の仕方は、下級ランクは白と青、中級ランクは黄と緑、上級ランクは赤と銀、特級ランクは金とそれぞれの角石を落とす。

 理解しやすいように角石で説明をしたが、もちろんランクが高いほどフィアーから得られる素材も上質の物になる。

 また、金が最高ランクとされているが、それは、現状見つかった角石の中で金が最高ランクなだけで、もしかしたらそれよりも上質な角石がある可能性は高いとされている。

 金の角石が見つかったのも数年前の話で、それまでは銀が最高ランクとされていたのだからあながちその仮説は間違いではないと思う。


 とにもかくにも、迷宮は深く潜れば潜るほど強力なフィアーが現れるため、この迷宮の準備段階である樹海のいや、基本、楔への道筋に現れるフィアーは、下級ランクしかいないのが定石だ。


「前方にキラーラット2体。どうする?」


 どうするとは、これくらいのフィアーであれば全員で事を構える必要が無いため、どっちがやる?という意味合いだろう。

 

「そうだね……ちょっと捕まえてくる」

「捕まえる?」


 俺が何をするのか知っている豪志とは違い、俺の言葉の意味を理解出来ない井波さん。

 まぁ、今日が初日だし仕方ないよね。

 俺は特に説明をすることもなく軽く頷き、キラーラットに向けて歩き出す。レベル差があり過ぎるとフィアーは逃げる傾向があるため念のため、気配遮断のアークを使う。

 背後から、「おいおい、格闘士じゃなかったのかよ」と豪志の呆れ混じりの声がするのだが、ここは気づかない振りをする。

 両手でキラーラットの首もとを掴む。


「「キューキュー」」


 いきなり首もとを捕まれて慌てている2体のキラーラット。俺は、気配遮断のアークを解除するとキラーラット達は俺から逃げようとジタバタする。


「少し大人しくしようか」


 と軽く威圧すると、2体のキラーラットは白目を剥いて気絶する。

 気絶している、キラーラット達を井波さんの前に置く。

「あの……?」

「その槍で刺してみて」

「ぇえええ!?」

「何を驚いているの?」

「す、すみません。いきなりだったので……少し取り乱してしまいました」

「春風、可哀想だとか、生き物の命を奪うなんて事は無しだぜ? 調達屋として生きるなら、フィアーの命を奪うことが仕事なんだ。少しでも出来ないと思うなら今すぐに回れ右して来た道を戻った方がいい」


 俺が言いたかった事を豪志が代弁してくれた。

 フィアーを前にして、躊躇なんかしているとパーティ仲間や何よりも自分自身の命が危険に晒される。

 割り切らない者にはこの仕事は向いていない。


「わ、私は、調達屋になります!」


 井波さんはフェザースピアを両手でギュッと握りしめ、地面に転がっているキラーラットを睨み付ける。

 そして、一度深く深呼吸をし、小刻みに震える矛先を振り下ろす。

 矛先がキラーラットとの腹部に突き刺さる。すると、ポンという音を立ててキラーラットは、霧の様に散っていく。


「ほら、もう1体残ってるよ」

「は、はい!」


 同じ要領でキラーラットを葬る井波さんの足元には、白い角石2つとキラーラットの牙と皮が転がっていた。


「はぁ、はぁ、はぁ……」

「はい、お疲れ様。どう? やれそう?」

「はい、なんとか」

「数をこなしていけば慣れるから」

「そうだぜ? しかも、その槍だったら少しこつくだけでここら辺のフィアーはイチコロよ」


 取得物をパーティ共有の収納箱に次々といれる豪志。


「あっ、レベルが上がってます!」

「経験値の配分とラストアタックのお陰だね」

「ラストアタック?」

「フィアーに止めを刺した人には25%経験値が加算されるんだ」

「だから、カイトは春風に止めを刺させたわけだ。まぁ、生き物の命を奪う事にも慣れて欲しいという思惑もあると思うけどな」


 的確に俺の考えを当てた豪志に頷く。


「ステータスの変化はどう?」

「えっと、こんな感じです!」


名 前:井波春風

ランク:Fランク

パーティ:カイト

レベル:2

H  P: 13(+3)

攻撃力:113(+100)(+3)

防御力:13(+3)

敏 捷:113(+100)(+3)

技巧性:13(+3)

運  :777

装備:フェザースピア(攻撃力+100、敏捷+100)


「すげぇ、初っぱなから最大上昇値って! ついてるな春風」

「ラッキーですね!」


 とはしゃいでいる二人を余所に、静かに心踊らせる俺がいる。


 基本レベルが上がると各ステータスのパラメータは1~3でランダムに上昇するが、ミニマム2ポイントくらいに落ち着くと言われている。


 そう考えるとMAX値で上昇することは凄く運がいいと言える。

 豪志も井波さんもまだ気付いていないだろう。これがただ単についているとかそう言う次元の話ではないと言うことを。


 井波さん育成計画。

 これから先が本当に楽しみだ。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

感想、ブックマーク、評価点、いいねなど頂けましたら、

すごく励みになりますので、ぜひ、よろしくお願いいたします。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ