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余命幾ばくかの傭兵  作者: いろじすた
第2章 潜れ、アマテラスの根幹

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「準備OK」

「経験値の分配はどうする?」

「取り合えず10階層までは俺と豪志をミニマムにおいて、その分井波さんにフルにいくようにしようと考えているんだけど」


 パーティ内の経験値の配分は全体が100%であり、1人当たりの最小設定値は10%とされている。 

 俺が考えていたのは、レベルカンストの俺はともかくある程度レベルがある豪志ですら10階層以下のフィアーの経験値はそこまでの足しにはならない。

 逆にレベル1の井波さんにとっては10階層以下のフィアーはレベル上げにはうってつけの獲物だ。


 だから、俺と豪志で各10%、井波さんに80%と経験値を分配することで井波さんのレベルを早い段階で底上げしようという算段だ。


「もちろん、構わないぜ? てか、それしかないだろ」

「よ、よろしくお願いします!」

「よし、設定完了!」

「ありがとう豪志。あっ、そうだ」


 何かを思い出したかの様に収納箱に手を入れる。

 取り出したのは井波さんの背丈ほどの銀色のショートスピアとプラチナ製の指輪が3つ。


「井波さん、これ装備しようか」

「……これはなんですか?」

「井波さんは前に出て戦うスタイルではないかなぁと思って。敵とある程度の距離を保てる槍がどうかなって」

「確かに春風はそれがいいかもな。てか、その槍かなりいいやつだろ?」

「重たそうですね……私に持てるでしょうか?」 

「フェザースピアって言ってね南米の迷宮32階層で手に入れた物なんだ。その名の通り羽の様に軽い槍だから井波さんの今の力でも問題なく使えるよ。ほら」


 俺は井波さんにフェザースピアを手渡す。


「凄い……まったく重さを感じません」


 井波さんは、楽しそうにフェザースピアをブンブンと振り回している。


「おいおい、名持ち(ネームド)かよ」

「うん、一応そうなるね」

名持ち(ネームド)?」

「迷宮には何らかのオプションが付与されている名持ちの武器が存在するんだ。春風が持っているその槍には所持者に重さを感じさせないオプションが付与されているんだと思うぜ? しかし、レア物をポンポンとどんだけ気前がいいんだよお前は」

「あの……ちなみにレア物って言う位だからお高いんですよね?」

「それはそうだぜ春風。そのフェザースピアをオークションに出しら、最低でも5億の値が付くと思うぜ?」

「ひぃッ!? ご、ご、5億!? 無理無理無理、無理です! これ返します!」


 井波さんは、真っ青な顔でフェザースピアを俺につき返そうとするのだが、もちろん俺がそれを受け取る事もなく。


「井波さんに使ってもらいたいんだ。夏菜ちゃんのためにも井波さんには無事でいてもらわないといけないしね」

「でも……」

「春風、俺達はパーティだ。お前がその槍をもって自分の身を自分で守れるなら、俺達は俺達で敵に集中できる。お互いにとって利点なんだよ。だから、今は素直に甘えていればいいと思うぜ? それにな、俺達であれば5億なんて金、すぐに稼げるようになる」

「そ、そうなんですか?」

「海人、お前は俺達のレベルを300まで押し上げるって言ったよな?」


 俺はコクリと頷く。


「春風、レベル300といえば世界最高峰だ。レベル78の俺でさえ月に1千万は稼いでいるんだぜ? 億なんてすぐだよ」

「豪志の言う通りだよ。だから、気負わずにその槍を使って欲しい」

「わ、分かりました……ただし、迷宮を出たらお返しするという形でお願いいたします。もし、無くしたりしたら私……」

「そんなに心配しなくても名持ちなんて他にも沢山持ってるから俺は気にしないんだけど」

「私が気にするんです!」


 井波さんの気迫に押されそうになる。


「う、うん、分かったよ。そうだ、豪志の武器ってなに?」

「ん? あぁ、俺のはこれだよ」


 豪志が保管の聖櫃具から取り出したのは、全長50センチほどの鉄製のハンドアックスだった。


「トマホーク?」

「ご名答っと!」


 豪志は、トマホークを力強く投げる。

 前方に聳え立つ木の枝を切り落としたトマホークは吸い込まれるかの様に豪志の手に戻り、パシッと豪志が掴み取る。


「見事な物だね」

「おうよ! 斬ってよし、投げてよしの俺の相棒さ」

「だったら、豪志にはこれを」


 豪志のトマホークより一回り大きいハンドアックス。


「おいおいおい、まさかこれって」

「アフリカの迷宮で手に入れたボルケーノって名前なんだ。攻撃力も高いし、炎が付与されているから使い勝手がいいと思う」

「それを俺に?」

「うん。俺、ハンドアックス使わないし、ただ俺が持っているよりもパーティメンバーの豪志が使ってくれた方がいいと思うんだ」

「ハッハッハ、まじかよ……ありがとう。大事に使わせてもらうぜ」

「うん、どういたしまして」


 新しい武器を装備した二人のステータスを確認する。


名 前:宮本豪志

ランク:Cランク

パーティ:カイト

レベル:78

H  P: 156

攻撃力:322(+150)

防御力:162

敏 捷:195

技巧性:210

運  :55

装備:ボルケーノ(攻撃力+150)


名 前:井波春風

ランク:Fランク

パーティ:カイト

レベル:1

H  P: 10

攻撃力:110(+100)

防御力:10

敏 捷:110(+100)

技巧性:10

運  :777

装備:フェザースピア(攻撃力+100、敏捷+100)



「それと、これを二人に」

 

 俺はプラチナ製の指輪を二人に渡す。


「これは?」

「パーティで共有できる保存の聖櫃具だよ」

「共有ですか?」

「うん、この中にモノを入れると三人で共有する事ができるんだ。ほら、中身を見てみて。一応ポーション類を入れてあるから」

「本当だ。確認できました」

「すげぇもの持ってるな……どうしたんだこれ?」

「これは、知り合いに作ってもらったんだ」


 副団長のダニエルが、団員みんなで迷宮に潜ると思い作ったのだが、団長の指示により結局みんなソロで挑む事になりお蔵入りになった指輪だ。

 俺の収納箱に保管してそのままだったのを思い出して今回活用する事にしたのだ。


「これで準備はOKかな?」

「あぁ、そろそろ行こうぜ」

「よ、よろしくお願いします!」


 俺達カイトの第一歩が今始まる。

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言]  リセマラ(リセット・マラソン)できないリアルにおいてこの”爆運”があれば、同レベル帯においては”世界最強”を名乗れるんじゃない(笑)  余談として、当人の気持ちと資質が合えば”銀の乙女団…
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