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最低最悪のクズ伯爵〜離縁してくれと言われたので離縁しましたが  作者: kae「王子が空気読まなすぎる」2巻発売中
空白の5年間

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⑧不信感

「あら?」


ある日のこと、エルトマン侯爵が定期的に開いてくれるお茶会に出席していたユリアは、ふと違和感を覚えた。


 このお茶会は週に1度は必ず開かれている気軽なもので、子どもも大人も、息抜きに参加するのを楽しみにしている。

 特に招待状などもない。

 この日にお茶会が開かれているので、どうぞお茶を飲みに来てくださいというスタンスが、逆に気軽に参加できてよかった。

 晴れている日に、広大な裏庭を会場にして行われるので、動き回れて子ども達にも大人気のお茶会だ。

 

 ユリアたちが参加するのも、これでもう3回目になる。



 その日も好きな者同士で話したり、子ども達も自由に移動して遊んで、とても楽しい時間を過ごしていたユリアだったが、ある事に気が付いた。

気が付いた瞬間から、ドキドキと心臓が脈打つ。


 お口の周りを汚したレオを抱っこする時に、一時的に外してテーブルに置いたネックレス。

 それが見当たらないのだ。


 


自分が座っていた席、その周辺以外にも、お皿やナフキンをさり気なく持ち上げて探してみるけれど、やはりない。

 もしかしたら落ちてしまったのかと、滑らかで皺ひとつない、よく見れば見事な刺繍の施されているテーブルクロスをめくって地面を見ても、どこにもネックレスは見当たらなかった。


 ユリアは先ほどまでの自分の行動を思い出す。

 確かオルトハラ伯爵夫妻の娘、ライラちゃんたちと遊んでいたレオが、休憩とばかりにユリアやハウケ伯爵夫妻のいるテーブルまで帰ってきた。

 その可愛いお口の周りに、ベッタリとクリームが付いていたのを、ハウケ伯爵夫妻と一緒に、微笑ましく笑った。


 またすぐに遊びに行こうとするレオを引き留めて。

自分のネックレスを外してテーブルに置いき、そしてレオをお膝に抱きかかえて、ナフキンで口の周りを拭いてあげた。


 レオがライラちゃんをキョロキョロと探しているので、抱っこをしたまま、ライラちゃんのところまで連れていってあげた。

 ライラちゃんはもう一人の女の子、ダルトン男爵夫妻の娘、サブリーナちゃんと人形遊びをしていた。

 そこまで連れて行ってあげて、ライラちゃんやサブリーナちゃんとも少しお話をして。

 そうして遊び始めた子ども達に、もう付いていなくても大丈夫そうだなと思って、またテーブルに戻ってきたら、ハウケ伯爵夫妻もちょうど戻ってくるところだった。

 どうやらユリアがテーブルを離れた後、ハウケ夫妻も少し席を外していたようだ。





 そこで、さてはずしたネックレスをつけようと見たら、そこに置いていたはずのネックレスがなくなっていたという訳だ。


「うん? どうしたんだい、ユリア」


 ユリアの父親であるハウケ伯爵が、いつもの優しい笑顔で聞いてくる。


「……なんでもないわ、お父様」


 心配をさせないようにと、ニコリと笑う。


――しまったわ。ネックレスをテーブルに置いたまま、レオを連れてライラちゃん達のところまでいってしまった。お父様たちがいるから大丈夫と思って油断してしまったけれど、お父様たちは、私がネックレスを置いて行ったことに気が付いていなくて、席を離れたのね。




ハウケ伯爵夫妻にネックレスを見ていてほしかったのなら、きちんとそう伝えるべきだった。

いやそれよりも、当然のことながら、外したネックレスをテーブルに置いていくべきではなかった。


 ――これは私のミスだわ。


ユリアは心の中で後悔した。

お茶会の会場では、30人以上のゲストたちが、自由に動き回って、おしゃべりやゲーム、お茶を楽しんでいる。

 ゲスト以外にも、優秀なエルトマン侯爵邸の使用人たち何人も、食事やお茶を運んだり、ちょっとした汚れなどもさり気なくすぐに掃除をするべく、目まぐるしく動き回っている。

 子どもが興味本位で持って行ってしまった可能性だってある。

 その場合はきっと、後から返してもらえるだろうけれど。

 誰がどのテーブルに近づいたかなんて、誰も気にしていないだろう。



 ――私がうかつにテーブルに置いていってしまったせいでなくなったのだもの。騒ぎにはしたくないわ。もしかしたらわざとじゃなくて、お皿を下げる時に使用人が間違って持って行ってしまったり、地面に落ちてだれかが踏んで壊してしまったかもしれない。その場合、私のせいで使用人の誰かが怒られてしまうわ。



 一瞬「怪盗エリス」という言葉が頭をよぎるが、ユリアはその考えを振り払った。


 ――あれは子どもが汚しても良いような、普段使いのネックレスだったから、諦めましょう。汚れたり、壊れたりすることも覚悟の上でつけていた物だったのだから。


 自分にそう言い聞かせて、ユリアはごくりと、不信感を飲み込んだ。






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