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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女コミカライズ連載開始!
第五章

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87話 聖女様に憧れる白魔道士

 白魔道士の少女リサに飛びかかろうとする魔石狼。

 俺はその前に立ちはだかった。


 魔石狼がその巨大な口を大きく開き、俺とリサを喰らおうとする。

 このまま食べられれば、狼の体内にある魔石の栄養源にされてしまう。


 俺は宝剣テトラコルドを眼前の敵へと繰り出した。

 狼はそのまま構わず口を閉じ、宝剣ごと俺を噛み砕こうとする。


 俺は宝剣を振り上げた。

 狼の上あごが斬られ、鮮血が吹き出る。


 俺は宝剣テトラコルドを再び振り下ろすと、同時に詠唱なしで即座に炎魔法を放つ。

 魔石狼の頭部はあっさりと吹き飛んだ。


 普通の生物であれば、当然、生きてはいられない。


 けれど。


 魔石狼は、頭部が肉塊同然の姿になって、それでもなおうごめいていた。

 魔族を動かす原動力は魔力。

 それがまだ尽きていないからだろう。

 

 つまり身体の中心部にある魔石を破壊しなければならない。


 魔石狼は俺を面倒な相手だと見たのか、俺の横をすり抜ける。

 そして、リサのほうへと直進しようとした。


 手負いのリサが「ああっ!」と恐怖の声をもらす。


 しかし、次の瞬間、俺の剣が魔石狼の腹部を捉えた。

 たしかな手応えがある。


 俺はそのまま宝剣テトラコルドをまっすぐに突き出した。

 だが、それだけでは足りない。


 確実に魔石を破壊しなければならない。


「我が剣に神の加護を。我が剣に道を切り開く力を!」


 俺は剣を刺したまま、低い声で呪文を詠唱した。

 宝剣テトラコルドが鈍く輝きはじめる。


 俺の剣は魔石狼に突き刺さったままで、二撃目は繰り出せない。


 もしここで仕留められなければ、剣が刺さったままの狼は痛みに暴れ、そして俺たちを殺すだろう。

 

 ここが正念場だ。

 

 宝剣テトラコルドが何かを打ち抜く感触がした。

 同時に暴れていた魔石狼が、ぴたりと動くのをやめる。


 良かった。

 なんとか魔石を破壊して、倒せたようだ。


 振り返ると、灰色竜種も騎士団の幹部たちの手によって追い詰められていて、ほぼ戦いの決着がついていた。

 この戦いは攻略隊の勝利となったのだ。


 けれど、まだ第三層だというのに、この調子では先が思いやられる。

 すでに重傷を負ってしまった冒険者もいるし、そもそも最初に吹き飛ばされた一部の人たちがいないような気がする。


 彼らはばらばらに遺跡の奥に引き込まれ、そして、そこで殺されているかもしれない。

 

 ともかく、今の俺にできることは、目の前のリサを治療することだ。

 俺はしゃがみこみ、リサの怪我を見た。


「痛む?」


 と聞くと、リサはこくこくとうなずいた。


 いくらか血が滲んでいるけど、命に関わる重傷というわけではなさそうだ。

 この程度なら、ちょっと時間をかければ俺でも治せる。


 俺が回復魔法を唱えると、リサはおずおずと俺に尋ねた。


「剣士さんはなんてお名前?」


「俺? 俺は魔法剣士のソロンだよ」


「聖ソフィア騎士団副団長のソロンさん?」


「昔はそんなふうに呼ばれていたこともあったけど」


 俺がそう言うと、リサはぱあっと顔を明るくした。


 そして、あどけない表情で、俺を見つめる。


「聖女ソフィア様の恋人ですよね!」


「こ、恋人!?」


「そうです! だって、ソロンさんと駆け落ちしたから、ソフィア様は騎士団をやめたんだって聞いてますもん」


「いや、えっと、そういうわけではないんだけれど……」


「わたし、ソフィア様の大ファンなんです! ソフィア様に憧れて白魔道士になったんですもん! 名門貴族の生まれで、魔法学校も最年少の首席で卒業した天才。帝国教会に選ばれた聖女様。規格外の力。そして、とってもお美しい容姿! わたしの憧れなんです!」


 リサは胸を張って弾んだ声で言い、それから「いてて」とつぶやいた。

 傷がまだ痛むんだろう。


 でも、恐怖に歪んでいた表情はもう完全に消え去った。


 リサは目をきらきらと輝かせていった。

 もしそれほどソフィアに憧れていたというなら、どうしてうちの騎士団の団員にならなかったんだろう?


 それを聞くとリサはちょっと悲しそうにした。


「入団試験に落ちちゃったんです」


「ああ、あれね。まあ、難しいし、運にもよるから」


 聖ソフィア騎士団は冒険者の憧れの的で、その団員となるだけでも名誉と言われていた。

 当然、騎士団に簡単に入ることはできず、新規団員となるためには入団試験が課されていたのだ。


「実力をつけたから聖ソフィア騎士団に入ろうと思っていたのに、その騎士団自体がなくなっちゃうなんてひどいですよ! でも……」


「でも?」


「ソロンさんに会えるなんてラッキーです!」


「いや、ソフィアは立派な聖女様かもしれないけど、俺は大した人間でないよ。クレオンたちと比べたって実力があるわけじゃないし……」


「ソフィア様の恋人が偉い人でないはずがないです! だって、わたしのことを助けてくれたじゃないですか!」


「それとこれとは別だと思うよ……」


 とかなんとか話していたら、周囲の戦闘が落ち着いたのを見て、フィリアたちがこちらにやってきていた。

 後ろの護衛のナーシャとラスカロスが微笑んでいる。


「やったね! ソロン!」


「はい。フィリア様のご命令を果たすことができました」


 俺が微笑む横で、リサが目を大きく見開いていた。

 そして、嬉しそうにつぶやく。


「皇女様だぁ」


 たぶん、このリサって子はミーハーなんだろうなあ、と思う。

 リサがぽんと手を打った。


「皇女様。ソロンさん。わたしを仲間にしてください! いえ、手下でオッケーです!」


「手下?」


「はい! わたし、ずーっと明かりをともしてるだけなんて、そんなの嫌なんです。普通にしてたら、クレオンさんの命令に従わないといけないじゃないですか」


「ああ、なるほど。それでフィリア様の護衛になりたいと」


「はい! それにソロンさんからソフィア様の話も聞けますし!」


 リサは目を綺麗に輝かせている。


 実力がないわけじゃないとは思うのだけれど、さっきまで死にかけていたのに、なんだか緊張感が欠如しているような気がする。


 そういう性格なのか、遺跡攻略に慣れていないのか、わからないけれど。


 でも、ともかく、ラスカロスやナーシャたち以外に味方が増えるのは結構なことだ。

 どこまで信用できるかともかく。


 クレオンだって他の冒険者を照明係にすればよいだけだから、そこまでうるさくは言わないだろう。


「じゃあ、フィリア様の護衛を頼むよ」


「はい。これで、わたしも皇女様の側近ですね!」


 リサは楽しそうに笑い、フィリアも歳の近い少女が護衛に加わったからか、少し嬉しそうにしていた。


「よろしくね、リサ」


 フィリアも嬉しそうに微笑んだ。


 俺もフィリアもリサも、ノタラスもラスカロスもナーシャも、みなが無事に地上へと戻れるだろうか。

 いや、戻れるようにしないといけない。

 

 ここから先には、まだ十七層の遺跡が待ち構えていた。



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