201話 宴もたけなわ
「貴方って……臆病者なのですか?」
皇女殿下……つまりイリスに呆れられたように言われ、俺は反論できなかった。
フィリアとソフィアにダンスのパートナーになるように迫られ、挙げ句のはてに俺が選んだのは、イリスだった。
初対面のイリスを選べば、親交を深めるという名目も立つ。フィリアやソフィア、それにアルテを選ぶよりも角が立たないだろう。
ただ、イリスにもそのことはよくわかったようで、ちょっと不機嫌そうだった。
まあ、悪いのは俺なので、仕方ないけれど……。
イリスの手を取り、俺はくるりとステップを踏む。
さすがは皇女というべきか、そのダンスの技量はたしかなものだった。俺のリードにまったくよどみなくついてくる。
イリスはちょっと頬を上気させ、俺を見つめた。
「ソロンは……ダンスも得意なんですね」
「まあ、器用貧乏の一つに過ぎません」
「器用貧乏の域を超えていますよ、この私についてこられるなんて……」
しだいに、イリスはパートナーになった経緯なんてどうでも良くなったようで、ダンスに熱中するようになった。
以前、俺を殺そうとした相手と、こんなふうに踊るなんて、想像もできなかった。
やがて周囲の目が俺たちに注がれ始める。
一曲踊り終えると、途端に俺とイリスに向けて、歓声と拍手が飛んできた。
何人かの若い貴族がにこにこしながらこちらへやってくる。その多くはイリスが目当てのようだったけれど、何人かは俺に話しかけてきた。
そういった貴族たちは、イヴァン皇子と同じで、冒険者としての俺の話を聞きたがった。彼らは退屈しているのだ。
そして、冒険者への憧れもあるんだと思う。貴族としてではなく、自らの力で成功していくというところは魅力的で、でも、実際に命を賭けて挑戦するのはためらう人は多い。
クレオンやかつてのアルテのように、実際に冒険者になる貴族の子弟もいるけれど、少数派だ。
やがて、ふたたび舞踏の時間がやってくる。
そして、フィリアが進み出た。
照明にその赤い頬が照らされて、恥ずかしそうにフィリアは目を伏せた。いつもと違って、胸元がはだけ、露出度がだいぶ高いイブニングドレスをフィリアは着ている。そういう格好だと少し大人びて見えて……ちょっとどきりとする。
フィリアはくすっと笑った。
「わたしに見とれていた?」
「正直に言えば」
フィリアは嬉しそうに瞳を見開き、微笑んだ。
「そっか。ソロン、喜んでいいよ。次はわたしがパートナーの番だから!」
「ええと、ソフィアはどうしたんでしょう……?」
「ソロン……ソフィアさんとの方がいいの?」
フィリアにジト目で睨まれ、俺は慌てて首を横に振る。
「いえ……そういうことではなく、さっきまであれほど自分がダンスのパーティになるといっていたのに……」
「じゃんけんで勝ったの」
「へ?」
どうやら、次の俺のダンスのパートナーを決めるために、じゃんけんをしたらしい。
……そんな子どもみたいな……と思うけど、よく考えたら、フィリアはまだ14歳だ。
ちょっと離れた位置から、悔しそうにソフィアと……そして、アルテが俺を見つめていた。
「アルテさんもじゃんけんに参加したんだよ?」
フィリアが面白がるように、俺の耳元に口を近づけてささやいた。
フィリアが微笑み、その小さな手で、そっと俺の手を握った。
「さあ、これからが本番だよね?」
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