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追放された万能魔法剣士は、皇女殿下の師匠となる漫画4巻が2025/1/15から発売中  作者: 軽井広@北欧美少女コミカライズ連載開始!
第六章

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118話 ソロンとルーシィの薬草探し

 翌日の朝、ルーシィが二日酔いで苦しそうにしながら食堂に現れたので、さっそく俺はフィリアの体調不良について尋ねた。


 俺の作った簡単な朝食(小麦の粥と目玉焼きだ)を食べながら、ルーシィが言う。


「見てみないとわからないけど、魔力を使ったからでしょうね」


「それってもしかして……」


「ソロンがフィリアから魔力を借りた反動ってこと」


 ルーシィはさらっと言ったけれど、俺にとっては衝撃だった。

 フィリアの魔力の暴走を抑えるために、俺はフィリアと魔術回路をつないだ。


 その結果として俺はフィリアからの魔力供給を受けることができるようになり、ネクロポリスではかなり助けられた。


 特にガレルスとの戦いではフィリアが意識的に俺に魔力を流し込んでくれて、そのおかげで勝てたようなものだった。

 

 ただ、それはアルテたちが魔王の子孫を道具として使い潰して魔力を奪ったのと本質的には変わらない行いだ。


 だから、フィリアの身体に悪影響が出るのを心配していたのだけれど、悪い予想があたってしまった。


 ルーシィは俺の暗い顔に気づいたのか、ぽんぽんと肩を叩いた。


「安心して、ソロン。きっと、そんなに深刻な話じゃないわ。フィリアを回復させる方法はあるから」


「本当ですか?」


「あなたの師匠を信じなさい。それより……昨日、なんで一人で勝手に私の部屋から帰っちゃったの?」


「それはルーシィ先生が寝てしまったからですよ」


「だったら、横で一緒に寝ててくれてもよかったのに」


「フィリア様と同じことを言うんですね」


 思わず俺はぽろっと言った。

 しまった。


 ルーシィが真紅の瞳で俺を睨む。


「もしかしてフィリアのとなりで一緒に寝たりしたの?」


「ええと、その昨日はフィリア様も体調が悪そうでしたし、その……せがまれて仕方なく……」


「本当は嬉しかったくせに」


 とルーシィは決めつけた。


 けど、フィリアはかなりの高熱だったし、ベッドに戻ったらすぐに眠ってしまったから、特に何かがあったというわけではまったくない。


 起きたとき、「ソロンが隣にいるから安心して眠れるの」とフィリアは言って微笑んでいた。


「ごちそうさま。……早くフィリアを治してあげないと」


 ルーシィにとってもフィリアは孫弟子だし、親族でもある。

 心配なのだろう。


 と思ったら、ルーシィは別のことも心配しているようだった。


「このままだとフィリアがソロンに甘え続けちゃう……」


「そんなこと気にしなくても」


「気にする! 前も言ったでしょう? ソロンが弟子とふしだらなことをするなんてダメなんだから」


「ふしだらなことなんてしてませんってば」


「ともかく! フィリアの様子を見にいきましょうか」


 俺たちは食堂の席を立つと、二階の部屋へと向かった。

 部屋をノックして開けると、クラリスがフィリアを心配そうに覗き込んでいる。


 フィリアは顔を赤くして毛布にくるまっているけれど、意外と元気そうだった。

 ただ、高熱なのは変わらないらしい。


「ソロン様……やっぱり流行りの風邪でしょうか?」


「いや……」


 俺はルーシィの顔をちらりと見ると、ルーシィはうなずきを返した。

 やはり原因は俺らしい。


 俺はフィリアとクラリスに事情を説明した。

 つまり、俺がフィリアから魔力を奪ったせいで、フィリアが高熱を出してしまっているかもしれないということだ。


 俺が頭を下げると、クラリスが慌てた。


「そんな……ソロン様はフィリア様を守るために魔力を使ったんですよね? それならソロン様のせいなんかじゃないですよ」


「でも……実際にフィリア様は苦しんでいるし……」


「わたし、ソロンのことを責めたりなんかしないよ。ううん、嬉しいぐらいかも」


 そう言ってフィリアはくすくす笑って、少し起き上がると、潤んだ瞳で俺を見つめた。


「わたし……やっとソロンの力になれたんだもの。いままではソロンに守ってもらうだけだったけど、今はわたしの力をソロンが使ってくれる」


「……フィリア様に気をつかっていただけて嬉しいです」


「気を使っているんじゃなくて、本当に嬉しいのに。それにね……ソロンと魔力回路がつながっているのって、すごく気持ちいいの。ソロンと一つになれているって感じがして」


 そう言って、フィリアはいたずらっぽく瞳を輝かせた。

 顔が赤いのは高熱のせいか、恥ずかしがっているのかどちらだろう?

 

 脈拍が上がり、頬が熱くなるのを感じる。


 と、突然、ルーシィが手を叩いて鳴らした。

 見ると、ルーシィは頬を膨らませて、かなりご機嫌斜めの様子だった。


「はい、そこまで。フィリアの熱を下げるのは簡単にできるわ。だって、ソロンが奪ったのは大した量の魔力じゃないもの」


「そうなんですか?」


「普通ならかなりの量の魔力だけど、魔王の子孫の膨大な魔力量からすれば、ほんの一部のはずね。特にフィリアは魔王の子孫の血が濃いから」


 そうだったのか。

 俺はちょっと安心した。


 ルーシィは続ける。


「フィリアが熱を出しているのは、なれない魔力回路の使い方をして消耗したのが原因。特殊な症状だけど、治すのにはある薬草を煎じた湯を飲んでゆっくり休めばいいだけ。ただ……」


「ただ?」


「必要な薬草がかなり貴重なものなの」

 

 聞けば、「ヤナギラン」というその薬草は、帝都の薬品専門店にすら置いていないという。

 帝国中心部の気候だと生えてこない草らしい。


 それに効能も、外部との魔力回路の接続による消耗の回復ぐらいしかないから、あえて売るほどの使いみちがない。


 どうしたものかと考えた俺は、そういえば薬草の宝庫と呼ばれる遺跡があったことを思い出す。

 

 コリント庭園というその遺跡は、階層によっては地上とは気候がかなり異なっている。

 だから、変な植物が生息しているのだ。


 ルーシィはそれを聞いて、ぽんと手を打った。


「決まりね。さっそくソロンと私の二人で探しに行きましょうか」


「え? 先生も来てくれるんですか?」


「決まってるでしょう? 今日は魔法学校の講義も休みだし」


 そう言うと、ルーシィは「ソロンと二人きりで遺跡探検……」とつぶやいて、嬉しそうにふふっと笑った。


 フィリアが「いいなぁ」と言って、うらめしそうにこっちを見た。

 俺は笑ってフィリアの頭を撫でた。


「体調が治ったら、また今度、遺跡探索に一緒に行きましょう。初心者向けのレニン神殿に連れて行くと言っていましたものね」


「……ソロン。約束だよ?」


「はい」


 俺は微笑むと、フィリアも「うん」と応じて、頬を緩めた。


「さあ、さっそくコリント庭園へ行くとしましょうか!」


 ルーシィが俺の腕をとると、くすっと笑った。

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