111話 魔法剣士ソロンと守護戦士ガレルスの戦い
俺とガレルスの決闘に、リサ、そしてフィリアの二人は味方として参加してくれるらしい。
けど、リサはともかく、皇女であるフィリアを戦わせるわけにはいかない。
俺は慌ててフィリアを止めようとしたが、フィリアは首を横に振った。
「わたしだって、少しは支援魔法が使えるもの。ソロンが教えてくれたんだから」
「ですが……」
「それに、わたしとソロンは魔力回路がつながっているから、だから、わたしの魔力がソロンの力になっていると思うの。感覚でしかないけど……」
「いえ、フィリア様のおっしゃるとおりです」
俺は認めた。
七層の崩落の際に魔族の毒を受けたはずなのに、俺には全く効かなかった。
聖人サウルの恐ろしい魔法攻撃も、俺の剣で弾き返すことができた。
どれもフィリアの魔力の助けのおかげだと思う。
フィリアが魔王の子孫として規格外の魔力量を持っているからだ。
だから、フィリアが意識的に俺に魔力を供給し、支援魔法を使ってくれれば、たしかに俺がガレルスに勝てる可能性は上がるだろう。
けれど、それは本質的にはクレオンがアルテたちの魔力を奪っているのと同じことだ。
加減を間違えて、フィリアからの魔力の供給量が大きくなりすぎれば、フィリアの身体になにか異常が生じるかもしれない。
それに……。
ガレルスが「ほう」とつぶやいて、にやりと笑う。
「皇女殿下だろうが、決闘に参加された以上はオレの敵。戦いで怪我をされても、オレの責任じゃありませんよ」
ガレルスの言う通り、フィリアを危険にさらしてしまうことになる。
決闘は結果がすべてであり、そこに参加するかぎり、身分の上下は何の意味も持たない。
俺はやっぱりフィリアを押し留めようとしたが、代わりにフィリアは俺の背中に手を回し、ぎゅっと抱きついた。
そして、俺を上目遣いに見る。
「もしかしたら、魔王復活の犠牲にされているのは、わたしかもしれなかったんだよね。ソロンはフローラさんたちを助けてあげたい?」
「……はい」
フローラは俺のかつての仲間で、俺たちのために動き、そして俺のことを好きだと言ってくれた。
そして、アルテはフローラの姉だ。
フローラたちは善人ではないけれど、こんな凄惨な扱いを受け、虐殺されていいとは思わない。
それに、クレオンやガレルスたちも正義の側にいるわけじゃない。彼らは魔王復活のためならどんな犠牲でも払ってよいと思っているのだ。
俺は覚悟を決めた。
フィリアの力を借りてガレルスを倒す。
ガレルスが約束通り、俺が勝ったらフローラたちを解放するとは思わない。クレオンがそれを許すはずがないからだ。
ただ、いまガレルスは明らかに俺を見下して油断しているし、決闘に勝った直後なら、フローラとアルテを苦しめ、魔力を吸い上げている装置を奪う機会があるはずだ。
そうすれば、フローラたちの犠牲のもとに行われている魔王復活も止められるはずだ。
俺は微笑んでフィリアの頭を軽く撫でると、フィリアは恥ずかしそうに顔を赤くした。
そして、フィリアはうなずいた。
「ソロン、わたしたちに勝利を!」
「必ず俺たちで勝って、フローラたちを助け、そして魔王復活を止めましょう」
俺はゆっくりフィリアから離れると、宝剣テトラコルドを抜き放った。
そして、宝剣をガレルスにまっすぐ向けた。
ガレルスもまた、にやにやしながら大剣を構える。
リサが横から口をはさむ。
「わたしのことを忘れないでくださいね? わたしもソロンさんの味方ですから」
「ありがとう。本当に助かるよ。まずはフローラの治療を続けていてほしいな。それで、もし俺が戦闘に支障をきたすような怪我をしたら、そのときは俺に回復魔法をかけてほしい。頼める?」
「もちろんですよ!」
リサは杖を左手に持ちながら、了解というふうに右手を軽く上げる。
次の瞬間、ガレルスが俺に向かって大きく踏み込んだ。
多くの冒険者が見守るなか、俺たちとガレルスとの戦いが始まった。






