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魔狼討伐依頼 2

続きです。

 アテネの放った『竜の風』がフェルリオンを撃ち抜いた。

 『竜の風』はアテネが禁術『竜の力(ドラゴンソウル)』を発動させた状態によって使うことができる竜系統魔法である。

 『水蛇の女王』戦以前まではこれを使うだけでも暴走の危険があったが、真理と『契約』を交わすことによってアテネの魔力が安定し、さらに新魔法少女(セカンド・ステージ)になることで『竜の力(ドラゴンソウル)』の暴走の危険性は皆無となった。そのため暴走の危険性を鑑みることなく『竜の力(ドラゴンソウル)』による竜系統魔法が使用可能なのである。


 「ガアアアアアアア!」

 グリフィンでは大して傷つけられなかったフェルリオンだったが、『竜の風』によってフェルリオンの体表は血だらけになっていた。フェルリオンはあまりの痛みに瞬時に体を動かすことができなかった。

 そんなフェルリオンの様子を見ながらアテネは油断することなく新たな魔法を唱えた。


 「今まで犯した悪行の報いよ吹き下りろ!『断罪の下降噴流(ジャッジメント・ダウンバースト)』」


 『断罪の下降噴流(ジャッジメント・ダウンバースト)』。それは風系統魔法の中でも高難度の魔法である。

 その効果は対象の上空から下降気流を作り出し、対象の自由を奪いつつダメージを与える。魔法による事象と物理法則による事象の複合であるため、対象はほぼ抵抗することができない。(魔法による事象だけなら、より強い魔法を放つことでその魔法を破壊することができる。)

 かなり強力な魔法であるが、対象を認識して下降気流を生み出すポイントを設定しなければならないため、効果を発揮するまで時間がかかる。

 もっとも、アテネは『竜の目』を発動しているため空間認識は片手間にできる程度である。

 アテネはまだ体力を残しているフェルリオンを一撃で倒すためにこの魔法を使い自由を奪った。


 『断罪の下降噴流(ジャッジメント・ダウンバースト)』によってフェルリオンは地面に縫いつけられる形になった。

 「私が・・・押さえつけられる・・・とはな」

 「チェックメイトよ。抵抗はしない方が苦しまないで済むわ」


 アテネはグリフィンをフェルリオンに突きつけた。

 真理は後ろで傍観を決め込んでいた。


 フェルリオンが声にならない音を放つ。それが言葉だったのか叫びだったのかわからない。

 ただ一つだけ言えるのは。

 その音をトリガーにして、フェルリオンの体表に不可思議な紋様が現れ、『断罪の下降噴流(ジャッジメント・ダウンバースト)』による拘束が破られた。


 「Gaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaaa!」

 フェルリオンの咆哮は辺り一帯に風圧という形で衝撃を与えた。

 アテネと真理は思わず耳をふさいだ。


 咆哮が止み二人が再びフェルリオンに目を向けると、フェルリオンの様子が変っていた。銀色の毛皮の上に赤に輝く紋様が至る所に描かれ、さっきまでのフェルリオンの王者たる表情が一変し、その瞳はどす黒く目の前の敵を屠る光景しか見ていないようだった。

 「Garrrr!」

 フェルリオンは一足でアテネに飛びかかった。

 対するアテネはグリフィンで応戦する。


 キィーンと硬質な物体同士がぶつかり合った音が響いた。

 アテネの鎌形法具とフェルリオンの牙がぶつかり合った音だ。

 互いに力を込め合い、わずかな均衡が保たれた。

 しかし、片や上から体重を加える中、先に押し負けたのはアテネだった。


 「ぁっ」


 アテネはグリフィンに風魔法をかけながらその刃をフェルリオンに突き立てる。

 フェルリオンはその攻撃を食らいながらも魔法弾を打ちながらアテネに飛びかかった。


 そして。再びアテネのグリフィンとフェルリオンの牙が打ち合った。

 しかし、フェルリオンの勢いにアテネは押し負け、後ろに押された。

 押し負けたアテネの上によだれを撒き散らして襲いかかるフェルリオンが圧し掛かった。

 フェルリオンは下敷きにしたアテネに牙を突き立てた。


 「アテネ!」

 真理はフェルリオンに駆け寄り拳を突き立てた。

 しかし、フェルリオンの硬い毛皮はその打撃を無効化し、真理は返ってくる反動に顔をしかめた。

 「くそっ」

 フェルリオンは真理を気にすることさえせず、アテネの首筋に牙を押し込みその生き血を啜る。


 「っぁ・・・『竜の風』」

 アテネはあまりの痛みに苦しみながら魔法を行使する。

 強大な風の力をフェルリオンに零距離でぶち当てた。


 爆風にフェルリオンとアテネは違う方向に吹き飛んだ。

 真上に吹き飛んだフェルリオンはそのまま地面に叩きつけられたもののすぐに立ち上がった。

 一方傷を負い魔法を行使したアテネはなんとか立ち上がるものの顔色が悪く両腕をだらりと下げたままだった。

 「大丈夫か!?」

 真理はふらつくアテネを支えた。

 「まさか、フェルリオンが吸血してくるとは思いもしなかったわ。おかげでかなりふらふらよ」

 「くそっ、このままだとやばいな」

 「真理・・・」

 「アテネ、しばらく休んでろ。時間は俺が稼ぐ」

 「真理!それは無理だよぉ・・・私だってこんなんだから」

 「俺だって怖いよ。だけどやるしかない」

 「・・・」

 「早く体力回復させて俺を援護しろよ」

 「わかった」


 アテネはふらふらと岩陰に、真理は眼を血走らせるフェルリオンに立ちはだかった。


 「これからは俺が相手してやる」

本当なら2話で終わる予定だったのですけれど、長くなったので次に続きます。

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