踏破の結果
50000PV達成記念投稿で本日二話投稿します。
リアルがヤバくなっています。
1日1回の更新は続けたいですが書く時間がないかもなので出来上がり次第投稿します。
「初級迷宮踏破おめでとう。ギルドカードがちょっと変わるし、説明もするからちょっとおいで。」
翌日久しぶりに寝坊をして朝の訓練が出来なかった。すでにヒナは起きて食堂でお茶を飲んでいたので朝食を食べ、一緒にギルドへ向かった。
ミアさんに話しかけたら先ほどのように言われ、今は前に事情聴取を受けた奥の小部屋に座っている。
「まずこれが新しいあんたらのカードだ。」
目の前に私たちのギルドカードが置かれる。特に変わった様子はないようだが。・・・あぁ、これが増えたのか。
「見てわかるように一番下に「初級迷宮踏破」という文言が追加されているよ。これがあればある程度の実力があるって依頼主を納得させられるはずさ。」
「そうですね。級以外の判断基準と言ったところですか。」
「私の場合はもう6級だからそうたいした影響は無いニャ。」
まあそうかもしれないな。ギルドのランクとしては10級から7級が初心者、6級から4級がベテラン、3級が一流、2級が超一流、1級が化け物って感じだからな。7級と4級から級が上がるときは試験があるらしいし。
「それとステータスを見るとわかると思うけど称号が「初級迷宮踏破者」になっているはずさ。まあこれは特殊な道具を使わないと他の人には見えないけどね。」
へぇー、そんなことができる道具があるんだな。どんな仕組みなんだろう。魔術式を研究している者の端くれとしては一度見てみたいな。それにしても称号が変わるのか。「アンの後継者」って気にいっていたんだけどな。・・・あれっ、変わってないけど。
「ヒナ、称号って変わってる?」
「変わっているニャ。タイチは変わっていないのかニャ?」
「うーん、前からの称号のままだね。」
「まれにそういうことがあるらしいよ。称号を変えるのは神様さ。基準が明確なわけじゃないんだ。まさに神のみぞ知るってやつだね。」
まあいいか。アンさんとの繋がりがわかる今の称号は気にいっているし。初級迷宮よりアンさんとの修行のほうがはるかに厳しかったしな。この程度で変わってしまったらあの修行の日々は何だったんだってなるし。
「なんて称号なのニャ?」
「「アンの後継者」って言う称号だよ。」
「アンってタイチの師匠のことだったかニャ?」
「そうだね、師匠でメイド長だよ。」
「変わった人ニャ。だからタイチも変わっているニャ。」
今の発言をアンさんが聞いたらにっこり笑いながら近づいてきて、死にそうな特訓に強制的に連れて行かれるんだろうな。命拾いしたね、ヒナ。
「うわっ、なんか今すごく背筋がぞわっとしたニャ。」
「・・・。」
私じゃありませんからね、アンさん。
「今回の迷宮踏破と最近の魔石の買い取り実績から2人ともランクを上げられるけどどうするんだい?」
「私は上げるニャ。」
「私は別にいいかな。ランクを上げることに興味がないし、7って言う数字が好きだし。」
(えー!!)
私の発言に2人も驚いていたが一番驚いたのがルージュだった。今までミアさんがいるから静かにしてるねって言って黙っていたのにそんなに驚くようなことか?
(どうせなら1級目指そうよ。楽しそうじゃん。)
(やだ。級が上がるとしがらみが増えそうだし、そうなったら旅も出来なくなってルージュとも走れなくなるよ。)
(うーん、うーん・・・。)
(そんなに悩むことなのか?)
別に級によってステータスに補正がかかるとかの効果があるわけでもないし、生きていく分には魔物を狩れば事足りるし。級を上げて目立つのは少なくとも今はやめたい。
「本当にいいのかい?」
「別に級が上がる資格が無くなるわけじゃないですよね。ならまたいつか上げたくなったら上げるからいいです。」
「まあタイチらしい気もするニャ。」
ミアさんがヒナのギルドカードを持っていき外にいた職員に渡す。たぶん更新の手続きをするのだろう。
「で、最後にこれのことなんだけど申し開きはあるかい?」
机の上にきれいに2つに分かれたジェネラルの剣が置かれる。それをみた瞬間、ヒナの顔から汗がにじんできたのがわかる。そんなに怖いのか。
「いや、ジェネラルを倒すのに余裕がなくって剣を斬ってしまったニャ。ミアおばさんには申し訳ないと思っているニャ。」
「ほう、そうなんだね。その割に剣に打ち合ったような傷がないねえ。」
ミアさんが疑うような視線をヒナに向ける。
「ほら、あれニャ。そこは一生懸命避けたからニャ。なんとか一撃当てることが出来て、それがたまたま剣まで斬ってしまったニャ。きつい戦いだったニャ。」
「正直に言いな、ヒナ!!」
「約束をすっかり忘れて、剣ごと一刀両断しちゃったニャ。ごめんなさいニャ。」
追い詰められてだんだんと顔から汗の流れる量が増えていっていたヒナがついに降参して頭を下げて謝っている。机に頭をぶつけそうなくらいの下げ具合だ。
「すみません、私もそれをそのまま見ちゃったので同罪です。」
一緒に頭を下げておく。パーティだし責任を取るのも一緒だ。
「はぁー、まあいいさ。出来ればって話だったしね。先方にはこちらからまたの機会にって伝えておくから。」
「ありがとうございます。」
「ありがとうニャ。」
先方と来たか。ギルドに影響力を持っている人なのかもしれない。ちょっとまずかったかな。しかしミアさんなら私たちの情報を話すようなことはしないだろうし、初級迷宮は踏破されることも定期的にあるみたいだからまあ大丈夫だろう。
「なんにしても、攻略おめでとう。そういえばヒナは里帰りをいつするつもりなんだい?」
「もうしばらく猶予があるからゆっくり帰るつもりニャ。」
「そうかい。帰る前には一度私のところへ寄っておくれ。主様に渡してほしいものがあるし。」
「わかったニャ。それじゃあ帰るニャ。」
「ああ、じゃあね。受付でギルドカードを受け取っていきなよ。」
「失礼しました。」
ヒナと2人でギルドを出る。そうだよな、ヒナの目的は初級迷宮を踏破することだったんだから、それを誰かしらに報告する必要があるはずなんだよな。里に帰るってことはしばらくしたらヒナともお別れか。この街だけの関係と初めからわかっていたとは言えこれだけ濃密な時間を過ごしたヒナと別れるのは寂しく感じるな。
なんとなくちょっと落ち込んだ気分で歩いていると、ヒナがくるりと振り向いた。
「よし、タイチ。今から打ち上げするニャ。」
「あれっ、夜にマタリさんが用意してくれるって言ってなかったっけ。」
「別に今日の予定はそれだけなんだし、昼から祝ってもいいはずニャ。」
「わかったよ。前の酒場でいい?」
「どこでもいいニャ。ルージュも飲むかニャ?」
(むりー。)
「だね。」
「それもそうだニャ。」
そうだな、今そんな先のことを考えても仕方がないか。純粋に迷宮を踏破したことを皆で祝おう。
その後皆で酒場へ行き、昼間から酒を飲みながら迷宮の話や昔に自分が失敗した時の話などいろいろな話をした。楽し気に話しているヒナを見ながら、なんとなくヒナも寂しく思ってくれていたのかもなと思ったりした。
どんなに自分が成長しても頭が上がらない人っていますよね。
なんででしょう?
読んでくださってありがとうございます




