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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第二章:メルリスの街にて
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リミット

(次のT字路を右に曲がってしばらくはそのままだな。)

(うん、そうだね。)


 どうしても道を確かめながらになってしまうので60キロでは走れず45キロ程度まで落として走っている。このままいけばタイムリミットの30分前にはつけるはずだ。

 焦りは禁物だ。道を間違えてしまえばその分だけ時間がかかってしまう。イコール生存確率が低くなることを意味するのだ。それだけは避けねば。

 ルージュと一緒に罠や魔物に警戒しながらペダルを回す。幸いにも15階層は特にトラブルもなく階段へ着くことが出来た。


(いよいよだな。覚悟はいい?)

(いつでもー。)

(・・・ルージュは緊張とかしないの?)

(まあ、何とかなるでしょ。)

(ははっ、そうだな。)


 ルージュと一緒ならどこへでも行けるはずだ。そして16階層への階段を降りた。

 特に変わりばえのしない16階層を走る。相変わらず他の冒険者とは会わない。14階層でマップの端で確認したのが最後だ。こんな時間に迷宮には来ないか。

 しばらく走ると魔物の反応があった。コボルトリーダーとコボルトの群れだ。情報通りリーダー1匹にコボルト3体の組み合わせだ。


(ルージュ、今回は倒すよ。)

(りょーかーい。)


 角を曲がり目視で確認する。相手も気づいたようだ。コボルトリーダーはコボルトを一回り大きくした感じだ。ただ武器がナイフではなく短剣になっているのでリーチが伸びているから注意しないと思わぬ怪我をしそうだ。

 コボルトリーダーが突進してくる。速い!!この迷宮で今まであった敵の中で一番だ。コボルト達がリーダーを迂回するように回り込んで走ってくる。リーダーに時間をかけるとコボルトの攻撃を受けそうだ。統率力がゴブリンと段違いだ。

 今すべき最善の手は・・・。


 スライムの糸のついた土製ダートを投擲する。力が十分には入らないが大丈夫だ。コボルトリーダーに当たる前に斧の形にしてスピードと重さでリーダーの頭をかち割る。


「なにっ・・・。」


 当たると思った直前、コボルトリーダーが剣でその斧を防ごうとした。結局はスピードと重みに耐えられず剣を弾かれ頭に突き刺さったが、本来の速度では無いとは言え私のダートに反応した魔物は初めてだ。

 倒れたコボルトリーダーのすぐそばを通り、回り込もうとしていたコボルトを置き去りに走り去る。


(これはまずい。今までの魔物に比べてコボルトリーダーの強さが違いすぎる。)

(でも今簡単に倒してたじゃん。)

(1対1ならね。2グループとかがまとまっていたら簡単にはいかない。少なくともルージュに乗ったままだと駄目だろうな。)

(そんなに?)

(1匹倒している間に接近されるからね。)


 そんなことが無いことを願うだけだ。まあ魔物が2グループまとまるなんて滅多にないことなので大丈夫だろう。

 その後もコボルトリーダーだけを集中的に狙う事で時間のロスを減らした。コボルトリーダーの統率力が高い分、リーダーが倒されると部下のコボルトの動きが一瞬止まるので簡単に逃げられる。スライムの糸が大量に消費されていくのでこの依頼が終わったらスライム狩りをしないといけないな。


(うわっ、なんか寒気がした。)

(えっ、なんかあった?)

(いや、何もないんだけど嫌な予感がしたんだ。)

(わかった。注意しておく。)


 何だろうな、しばらくは注意しながら進もう。

 特に何もなく16階層と17階層を走破する。罠もまだまだ私たち二人の感知を欺くようなものは無い。残り時間は1時間5分。これなら間に合いそうだ。

 18階層を走りながらちょっとほっとする。後はこの階層と19階層のギルドの宿までを無事に走れば大丈夫だ。ギルドの宿は入り口と出口の中間くらいにあるので実質あと1階層と半分だけだ。余裕だな。

 そう油断しているときにこそ異変はあるものだ。


(んっ、なんだあれ?)


 進路上の100メートルほど先に黒い霧のようなものが広がり始めている。


(本当だね。何だろう?)


 マップには何も表示されていない。何らかのガスの罠か?それにしてはギルドの地図には何も書いてなかったし、ヒナも何も言っていなかったが。


 霧の広がりが止まり、しばらくその場にとどまる。あと50メートルほどだ。そしてマップに赤い点が急に表示され、霧の中からコボルトとコボルトリーダーが出現する。


(へー、あんなふうに発生するんだ。初めて見た。)

(何言ってるのタイチ、このままだとぶつかるよ!!)

(えっ、まずい。)


 幸いにもコボルトリーダーたちも出現したばかりで反応できていない。しかしこのままではぶつかってしまう。ぶつかったときに被害が大きいのはこちらだ。最悪ルージュの修理が必要になる可能性もある。ハンドルを切るだけでは間に合わない。


「うおぉぉぉー」


 左へハンドルを切り、ぶつかる直前で右へ切り返す。腰を上げリアタイヤを少し浮かせてその勢いのまま腰を振り、車体を左方向へ回転させていく。その回転でコボルトリーダーをかわし、リアタイヤが着地したと同時に腰を後ろに下げ、そして地面をペダルを通して蹴りつける。飛びあがると同時に体を右にひねり空中で更に半回転して正面を向く。

 曲芸のような動きでコボルト達をかわし、そのまま置き去りにして走り続けた。


(ふう、焦ったー。)

(それはこっちのセリフだよ。観察するのはいいけど時と場合を考えてよ。)

(それは本当に申し訳ない。)

(いいよ、わかってくれれば。でも良かったね。この前ロックホップ練習しておいて。)

(ああ、いつか使うかもと思っていたがこんなに早く使うことになるとは思わなかった。)


 この曲芸のような動きもちゃんとした自転車の技だ。リアタイヤを滑らす恐怖心と戦うのが一番の難題だが、基礎能力が上がっている今なら余裕だ。前の世界では回転が足らずに転んだり、リアタイヤが急にグリップして転んだりして習得まですごく苦労したし習得した後でも成功させるのに苦労したのにな。こんなに簡単に出来るとちょっと悲しくなる。


(改めて能力の上昇ってすごいって感じるな、まあそれはそれとしてあと少しだ。油断しないで行こう。)

(おー。)


 これ以上イレギュラーが発生しないように願いながら走り続ける。お約束ならこんな感じで考えると何かトラブルが発生するものだろうが特に何も起こらず無事に19階層へ着くことが出来た。


(さあいよいよ最後だ。)

(時間は大丈夫だね。)

(あぁ、タイムリミットまであと45分あるから大丈夫なはずだよ。)

(じゃあ、行く?)

(そうだね。)


 MPの残りは3割程度。MPポーションはアイテムボックスに入っているからまだまだ余裕はある。この階層でよほど変なことに使わない限りは大丈夫だろう。

 宿への最短ルートを走っていく。今までの階層より魔物に会う確率が低い。この階層にいるギルドの職員とかが定期的に討伐しているのかもしれない。まあ正確な理由はわからないが今は都合がいい。

 はやる気持ちを抑え一定のペースを保つ。私の仕事はただ薬を届けるだけではない。患者を助けて初めて依頼が達成できたと言える。宿に着いた段階で私が疲れて動けないような状態では意味が無い。


(もうすぐ着くよ。)

(ああ、マップでも反応を確認した。ルージュそろそろ変形お願い。)

(りょーかーい。)


 マップ上に7つの人だと思われる反応が固まっている。そこがギルドの宿のはずだ。この角を曲がれば見えるはずだ。

 角を曲がって見えたギルドの宿は高床式のコテージのような家だった。出入り口に一人の男性が立っている。おそらく見張りのギルドの職員だろう。


 タイムリミットまであと約30分。無事にギルドの宿に到着することが出来た。

ロックホップを練習するときは転ぶことを前提に服やプロテクターを考えましょう。

気にしないと高確率で破けます。

読んでくださりありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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