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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第一章:イーリスの街にて
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先生のお仕事

初レビュー記念投稿です。

本日二話目なので、ご注意下さい。

「あれっ、何か失敗しましたか?」


 まったく覚えがないぞ。店主たちとの関係はうまくいっている。微妙なのは、頑固そうなおじいさんがやっている食堂くらいだ。未だにあまり話せていないのでどう思っているのかわからないんだよな。


「いやっ、タイチ君はうまくやってくれているよ。お店からの評判もいいし売り上げも上がっているしね。減らしてほしいのはギルド側の事情さ。ギルドの準会員って知ってるかい?」


 首を横に振る。仮会員なら自分だったから知っているが、準会員は知らないな。


「ギルドの本会員になるにはいろいろと条件があってね。その条件の1つに12歳以上という条件があるんだ。しかしそれ以下の年齢でも街の中の簡単な仕事ならこなせるから、準会員として登録して仕事をしてもらっているんだ。ランクは上がらないけれど報酬はもらえるよ。」


 そんな制度があるのか。確かに街の中の簡単な仕事を、戦いのできる冒険者が好んでするとは思えないし。

 私の登録の時は条件を満たしていたからキナさんは説明しなかったんだろうな。


「タイチ君も本ギルド証に変わったし、これから街の外で活動することも増えてくると思う。そこで、タイチ君の仕事方法を後輩に教えてあげて欲しいんだ。」


 確かに私だけがこの仕事をしている状況はよろしくない。サーラちゃんの依頼の時も代理で受けるような冒険者がいればギルドに迷惑をかけることもなかったし。

 それに私もいつかは旅に出るつもりだ。今のうちに仕事の情報の共有をしておいた方がいいだろう。


「わかりました、それでいつから仕事を教えればいいんですか?」

「できれば明日からかな。今日中に準会員の子たちに声をかけておくから。マジックバックはギルドのを貸し出すからタイチ君は心配しなくてもいい。研修期間は3日、1日ごとに4軒ずつ回ってもらう予定だから。」

「了解しました。では今日の配達に行ってきます。」

「すまないね、本来なら冒険者の仕事をギルドが奪うようなことはしたくないんだけれどね。」

「いえ、気にしないでください。私にとっても都合がいいので。」


 本当にすまなさそうな顔をしている男性職員に笑顔で手を振り配達へ向かった。


 朝食の後、いつものようにギルドの図書館へは行かず屋敷へ帰った。引き継ぎ書を作るためだ。

 配達時に店主たちには事情を説明しておいたので、明日混乱することはないはずだが、引き継ぎした準会員の子が仕事を覚えきれるとは限らないからだ。

 引き継ぎ書に仕事の流れ、各店舗の位置、入り方、店主の名前、得意料理、訪問希望時間、趣味、今までに購入した素材、好きなこと、嫌いなこと、癖など今までに集めた情報を記載していく。

 1枚完成したところで、ギルドの職員が「準会員の子たち」と言っていたことを思い出す。

 とりあえず5枚くらい作っておいて、余ったらギルドへ渡して、足りなかったらまた後日に渡すようにしようと決め、2枚目に取り掛かった。


 翌朝、ギルドへ行くと3人の少年が待っていた。その中の一人の白髪の獣人の子に何か見覚えがあったので記憶を探ってみると転んだワクコを助けたあの少年だった。


「「「おはようございます。今日はよろしくお願いします。」」」

「おはようございます。こちらこそお願いします。」


 三人が声を合わせて挨拶をしてきた。礼儀はちゃんとしているようだ。ギルドがマジックバックを一時的にとはいえ預ける人材だ。それなりの信頼と実績のある将来有望な3人なのだろう。


「まずは自己紹介をするよ。私はタイチ。この町で最近冒険者になりました。この依頼を2か月くらいしています。これから仕事の流れを覚えてもらいますので、今から配る紙を見ながらついてきてください。わからないことはその場で質問してくださいね。」

「「「はい、よろしくお願いします、タイチさん。」」」


 声を合わせて元気に返事をする3人に、先生はこんな気持ちなのかなと思いながら指導を開始した。


「最初に行くのは南門の宿屋です。店主のかたは親父さんって呼ばれています。家族は奥さんと娘さんが1人でサンドイッチとスープが朝食に出てくることが多いです。毎月1回、飲み物無料の日があるのでその当日は配達料が多いですね。」


 今日は同行者が3人いるのでルージュはお留守番をしている。軽いランニングくらいで走りながら店の説明をしていく。


「あのっ、タイチさん、さっきの紙にも、いろいろ、書いてありました、けれど、その情報、いるんですか?」


 まだ2kmも走っていないのにちょっと息が苦しそうだ。ペースを少し落とすか。


「ただ依頼をこなすだけならいらないかな。」

「じゃあ・・・」

「しかし、その人のことを知っていると言う事はとても大切です。もしあなたが買い物をするときに、知り合いと全く知らない人だったらどちらから選びますか?」

「知り、あいです。」

「それに相手のことを知っていると言う事は、相手のことを考えた行動がとれると言う事です。相手に親切にされたらこちらも親切にしようとするでしょう。」

「そう、ですね。」


 納得した少年には言えないが、知っていると言う事は良い意味でも悪い意味でも重要なんだ。そう悪い意味でもね。


「はい、というわけで到着。ここが一軒目の南門の親父さんの店です。おはようございます、親父さん。」

「「「おはようございます。」」」

「おう、おはよう。こいつらが昨日言ってた準会員か?」

「はい、いい子たちですよ。あと皆、まだ朝早いから気合が入るのはいいけれど、挨拶は小さめの声でね。」

「「「はい・・」」」

「なんだ、タイチ。しっかり先輩やってんじゃねえか。」

「親父さんのおかげですかね。じゃあ今日の分ですね。そういえば、昨日のフォレストウルフの肉が嫌いな冒険者はまだ泊まっています?」

「ああ、そいつら用に何かいい肉でもあるか?」

「いつものグリーンラビットかオークくらいしか今日は無いですね。」

「しゃあねえな、グリーンラビット追加しといてくれ。」

「了解です。毎度あり。今度からこの子たちが来ることもありますのでよろしくお願いいたします。」

「「「よろしくお願いします。」」」


 受取証をもらい、店を出て次の店に向かってランニングをし始める。


「そういえば、なんでフォレストウルフが嫌いな冒険者がいるって知っていたんですか?」

「昨日、たまたま親父さんの宿に朝食を食べに行って、その時に話を聞いたんだ。」

「じゃあ、準備していたんですか?」

「そうだね。もちろん必ずしも朝食を食べに行く必要はないけれど、どこに情報が転がっているかわからないから、いろいろと興味を持つ方がいいよ。その店の得意料理に使えるいい食材が手に入ったら伝えてみるとかもね。」

「簡単に見えて奥が深いんですね。」

「いい冒険者になりたいならいろいろな知識があった方がいいよ。何が役に立つかわからないし。ギルドの2階に図書室もあるから利用してみるのもいいかもしれないね。まあ、冒険者になりたての私が言う事ではないかもしれないけれど。」


 笑いかけながら走る。同じように3軒を回り、今日のノルマは終わった。後2日これを続ければ引き継ぎは終了になる。明日は説明を聞くのではなく、実際に体験してもらおうと計画しながらその日は帰った。


 引き継ぎ期間の3日が終わった。注文の品を取り違えそうになったりと多少のトラブルはあったが、大きな失敗はせず終えることができた。この3人なら大丈夫だろう。


「それでは、先生。3日間ありがとうございました。」

「またね、先生。」

「じゃあ、タイチ先生。」


 3日の指導の結果、「先生」と呼ばれるようになってしまった。なんとなく先生っぽいかららしい。

 恥ずかしいからと断ったのだが、無視されてしまったのであだ名をつけられたと思っておいた。


 先生か、もし旅を終える時が来たらそれもいいかもしれないなと何となく思った。

私が週三日勤務なら、自転車乗り放題ですね。

読んでいただいてありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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