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RIN ~共に生きる異世界生活~  作者: ジルコ
第四章:テンタクルの街より
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捜索開始!

 ギルドにテンタクルで預かった荷物を渡して依頼の報告をする。毎度のごとくランクアップを薦められたが固辞した。ミアさんが居れば話は早かったのだが今日はお休みだそうだ。

 目立つのは嫌だ。気楽に旅をするのが私のこの世界での目標だ。幸いなことにお金には余裕があるからそんなに積極的に仕事をしなくても大丈夫だし。


 宿に戻り起きていたヒナと合流し中級迷宮に向かう。中級迷宮は入っている人自体の数が初級迷宮に比べてとても少ないのでどんな時間に行っても待ち時間がほとんどないので気が楽だ。

 気が楽だと思っていたのだが・・・。


「なんニャ、これは。」

「さあ?」


 中級迷宮の門の前に20人くらいの冒険者の集団が並んでいた。以前は全くいなかった露天商までぽつぽつとだが存在している。2か月前までは全くなかった光景だ。

 冒険者たちの装備を見ると一部を除いて、いい装備を着けているようには見えない。見た目初心者装備の私が言うなという感じではあるが。嫌な予感がする。

 とりあえず何事もないような顔をして列の後ろに並ぶ。そして会話に耳を澄ませる。


「今日からは7階層のローラーだろ。」

「ああ、また一週間は潜りっぱなしだな。またまずい食事が続くぜ。」

「おい、テンションが落ちるようなこと言うなよ。」

「何か見つけた奴には特別報酬があるって話だぞ。」

「娼館のリンちゃんを身請けするって本当かよ。」

「ああ、俺も中級迷宮に入れるようになったしな。」

「お前の実力じゃねえだろ。」

「運も実力だぜ。この日のためにこつこつ貯めてきたんだ。」

「・・・」


 雑多な冒険者たちの会話から関係のありそうな会話を拾っていく。確定ではないが・・・。


(ヒナ。)

(そうだニャ。・・・リンちゃんが身請けされるニャ。)

(あれー、ヒナの知り合い?)

(全く知らないニャ。)

(なーんだ。)

(いや、そこじゃないだろ。)

(冗談ニャ。状況は思ったより悪そうニャ。)


 効率的に依頼を達成するためにはそういう手段があるとは考えていた。しかし契約から考えるとだいぶグレーゾーンな気がする。こんな手段をとる冒険者だ。この下請けっぽい冒険者は仮に発見したとしても、報酬どころか口封じに殺される可能性もあるぞ。

 とりあえず明日ギルドによってミアさんに最近の状況を確認してみよう。


 適当に中級迷宮の魔物の話などをしつつ受付が終わるのを待つ。30分ほどしてやっと私たちに番になりギルド証の確認などを経て2か月ぶりくらいに中級迷宮へ降り立った。

 先の冒険者集団は一直線に2階層への階段がある方へ向かって行く。小走りまではいかないまでも早歩きぐらいの速度だ。列に乱れが無いし、かなり慣れているな。

 まああの集団にはかかわらない方が良さそうなので早くこの階層から出て行ってくれるのはありがたい。


「じゃあヒナ。探索を開始しますか。」

「わかったニャ。」

「ということでルージュ分離ね。」

(りょーかーい。)


 ルージュが光と共にクロスバイクとマウンテンバイクに分離する。私に合わせてセッティングされているクロスバイクをヒナに合うようにサドル高などを変える。身長差とサドルの高さの変化が違う事を気にしたら駄目だ。私自身は標準のはずだ。標準的日本人だ!


「じゃあ打ち合わせ通りヒナは東から私は西から走って探すよ。いいね?」

「大丈夫ニャ。この辺りなら全く問題ないニャ。」

「ルージュもマップで確認頼むね。」

(まかまれたー。)


 私たちは二手に分かれ反対方向に進み始めた。分離したルージュに乗って。

 1階層についてはすでに探索も終わっている。出てくる魔物はフィールドウルフにグリーンスライムそれにグリーンラビットだ。強さは街の外の魔物と同じか弱いくらいだし単独で後れをとるような魔物ではない。なのでそれぞれ単独で探索することにした。

 マップの探しているものを見つける機能があるので私とルージュがそれぞれ使えば見落としは無い。目標とするのはジンさんだ。1番身軽で偵察に向いているので単独行動していそうだとか、坊主頭の冒険者なので見つけやすそうなど理由はいろいろあるのだが、一番の理由はうっかり見つかりそうな感じがするのがジンさんだということだ。なんとなくだがこの勘は間違っていないと思う。


 ルージュの意識が基本的にヒナの方へ集中しているのでルージュと話すこともない。用事があるときはフレームを叩くとこちらに意識を移してくれる。マップの機能を使うためには中途半端では無理だったのだ。

 久しぶりに自分一人での探索兼自転車だ。前の世界では当たり前だったはずなのになぜか寂しく感じる。そういえばこの世界に来てから、純粋に一人で冒険するのはほとんど無かったかもしれない。ジンさん達なりアンさんなりルージュなりヒナなり誰かしらと一緒に過ごしてきた。

 これまでの事を考えながらペダルを回す。土魔法はほとんど使わず、マウンテンバイクの性能と全身のばねを利用して迷宮を駆けていく。マップと地形を見ながらコースを選択し、時に跳び、時にタイヤを滑らせながら。次第に心が落ち着き、無心になっていく。

 心にただ1つ残るのはジンさんを見つけると言う事。

 近づいて来る魔物が土魔法のダートに撃たれ、次々とマップから消えていく。しかしそれさえも今の私にとってはマウンテンバイクの通り道にある障害物に過ぎない。

 1時間半ほど走っただろうか。マップの端を高速で移動する白い点を見つけた。おそらくヒナだ。やはりこの階層にはいなかったようだな。マウンテンバイクをコンコンっと叩く。


(ルージュ。)

(・・・なあに?)

(すれ違ったよね。)

(うん。)

(それじゃあ端まで行ったら2階層への階段へ集合って伝えて。)

(りょーかーい。)


 再び静かになったルージュに乗り端を目指す。マップの探索がしてあった1階層で約1時間半かかった。2階層以降は新規に探索をすることになるので、その2倍の3時間かかると想定して1日につき2階層から3階層といったところか。初級迷宮のように壁が無いため順路に迷うことは無いが広さは広いため1階層にかかる探索時間は同じくらいだ。まあ二手に分かれなければもっとかかっているはずだが。


 私の方が2階層への階段に近かったため、ちょっと早い昼食を作りながら待つ。ここへ来るまでに見つけたグリーンラビットを解体して香草焼きにしているのだが、匂いにつられてフィールドウルフがさっきからやってくるのでちょっと面倒くさい。魔石だけ抜かれて近くで山になっているフィールドウルフの死体のせいかもしれないが。フィールドウルフはあんまり美味しくないからなー。


「うーん、いい匂いニャ。」

「お疲れ。」

(なんか山が出来てるね。)


 10分ほどでヒナたちも階段までやってきた。今朝ギルドに向かうまでに買ったパンと以前作ったかぼちゃのポタージュスープを取り出す。


「とりあえずご飯にしよう。」


 ルージュとヒナに多めに取り分けて食事を開始する。探索の状況を聞いてみたが特に問題はなかったようだ。相談の結果、魔物の強さが単独では危なくなるまではこの方式で行くことにした。

 手早く食事を終え、2階層へ進む。、たぶんこの階層を走っているうちにお昼が来るので各自でマタリさんのお弁当を食べる予定だ。3人分頼んだのでルージュの分もある。理由も開かずに作ってくれたマタリさんに感謝だ。


 2階層の捜索は予想よりも少し早く3時間弱で終わった。まだ午後2時だったし3階層も探索しようと思えば出来たが初日であるし明日に疲れを残さないためにも帰ることにした。

 本格的に探すなら迷宮に泊まり込んで探すべきだろうが、さすがに低階層は調査も進んでいるだろうからそこまで注意する必要はないだろう。中級迷宮にいるという情報でさえ確定ではないのだから。

 しばらくは今まで通りマップを埋めながら探索していく方針だ。始めから根を詰めては長続きしない。さすがにすぐには見つからないはずだからな。

男子3日会わざればではありませんがいつの間にか変わってしまうことがあります。

昔あった駄菓子屋が駐車場になっていたりしてショックだった覚えが。

読んでくださってありがとうございます。

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RINの外伝の小説を書いています。次のリンクから読もうのページに行くことが出来ます。 「お仕事ですよ、メイド様!!」(飛びます) 少しでも気になった方は読んでみてください。
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