あなたは私を助けてくれるんでしょ?
やあ!この小説を読んでいるみんな!私、八千代よ!最近なすびが元気ないの。元気を出して欲しいから、こんなものを用意したわ!
「八千代、お前誰に向かって言ってるの?」
「なすびは血液型何?」
「Aだよ」
八千代は紙を取り出した。血液型占いと称しているが、ただのあみだくじだ。しかもあみだくじの結果に、大当たりとかはずれのような占いではないような結果もある。なすびの結果は「悩み事は早く言って解決!」だった。ある意味、的を射ている。
「何で悩んでるか知らないけど、結果通りにしたら?」
ガラガラと教室のドアが開く音がした。田丸先生とアンナが入ってきた。
「アンナも田丸先生もこれしよう、これ!」
八千代はやたらと血液型占いを勧めている。自信作らしい。ただのあみだくじなのだが。
「私はパス」と、アンナ。
「俺はハズレか」と、田丸先生。
「えーっ、アンナもやろうよー」
八千代が不満気にアンナの肩を掴んで揺らした。
「うるさい!私は選択肢がないのよ!私、稀血でケーゼロなんだから!」
「まれけつ?」
なすびが不思議そうに首を傾げると、田丸先生が出現頻度が低くて輸血が難しい血液型だと教えてくれた。
「じゃあ、アンナのAで、A型ってことにしよう!」
「八千代、どうしてもしてほしいのね。分かったわ、やればいいんでしょ」
***
八千代の占いに背中を押されて、なすびは決めた。アンナに告白しよう。なすびはアンナを体育館裏に呼び出した。
「体育館裏に呼び出しなんて、ベタすぎない?」
なすびは一気に思いの丈を言った。
「た、単刀直入に言うと…俺はアンナのことが好きだ。付き合って欲しい」
「アンタ、私に彼氏いるの知っててそれ言うの?」
「そ、それは、アンナ、君をーーー」
なすびはアンナを見つめた。
「助けたいからだ!」
「何、それ。誰に吹き込まれたの」
アンナの心に響くはずの決め台詞は失敗したらしい、となすびは悟った。
「何って、メールで…」
「…なすびも、あの人の手先なの?!」
アンナの雰囲気が変わった。あの人って誰だ。手先って何のことだよ。なすびはアンナに睨みつけられた。そんな、睨まれたって意味分からないよ。なすびが困惑していると、アンナは口を開いた。
「ごめんなさい。なすびがあの人の手先なんてなるわけないのに。なすびが本気で私を助けたいって言ってくれたのに…」
アンナは涙ぐみ始めた。
「私、今ある人に狙われているの。そうだ、私、これから一時間ごとになすびにメールするから、来なかったら連れ去られたか、死んだと思ってよ」
「は?ある人って誰だよ。何でお前が狙われるんだよ」
「ある人については…まだ、私も分からないの。だって私、その人と面識が無いから」
「なんで見ず知らずの奴にそこまで怯えてるんだよ」
「このこと、ミーシャには言わないで!なすびのメールもその人からだと思う!」
アンナが突然まくし立てた。
「ヤバい事に巻き込まれてるんだったら、警察を頼れよ。俺なんかじゃなくて」
「警察?もう、相談したよ!でも全然相手にしてくれなかったわ。女のストーカーってだけで、実害も無いから!」
「女のストーカー?」
アンナははっと口を手で抑えた。
「…後ね、この学校の何処かに奴に加担してる裏切り者がいると思うの。気をつけて」
「俺がその、裏切り者じゃないって保証はないのか?」
裏切り者であるわけがないのだが、なんとなく言いたくなった。するとアンナはふっと微笑んだ。
「あなたは私を助けてくれるんでしょ?」




