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第27話 かんけい

 結局、私達は当分の間パドレアさんに魔法についての授業を受けることになった。研修期間みたいなものらしい。

 もちろん魔物についての勉強もあるけど、パドレアさんが魔法理論の研究者なこともあって魔法のついての話が多い。


 でも。


「えっと、つまりこの魔法は初期魔法の重ねがけで、一部の次元が上げられてるから、その魔位の差が傾きを生むので、魔力の流れを生み出してるんですよね」

「なるほど……その流れを動かすことで魔法の発動が可能になると……」

「だいたいそういうことですね。なのでこのパターンは大体の魔法に組み込まれてますよ」



 まったくわからない……

 メドリは、それなりにわかってそうにふむふむとしてるけど、早々と学校を辞めた私には少しもわからない。

 なんだかすごそうなことを言ってるのはわかるんだけど……


 わからないけど、わからないからメドリの横顔を見て、大体の時間を過ごす。もう、なんか私はただの付き添いようになってる。


 見かねたパドレアさんが魔学の基本の情報が載ってるところを探してくれたけど、それもわからない。


「万物は魔力に変換できて、その大部分が情報で……」


 前提のところを読んでも、なんかしっくりと頭に入ってこないっていうか……書いてることは読めるけど、理解ができないというか。


 私が最初の最初で詰まってる間にメドリ達はどんどん進んでいって、置いてかれてる。

 いや、多分私に期待されているというか、役目なのは戦闘面だから、魔物について勉強しておけばいいのかもだけど。


 魔物についても基本的なことは、生物駆除者の時に大体学んだ。特に身体の魔力率が2割以上の強力な魔物達は、覚えてるのが多い。忘れたのも多いけれど。


「今日はこんな感じですかね……はい。お疲れ様でした」

「ありがとうございました」


 終わったみたい。

 メドリが片付け始める。


 メドリの手を握る。

 流石に勉強中は手を離してたから、なんだか久しぶりな感じがする。あたたかい……


 まぁ、勉強中も身体はくっつけてたけど。

 なんだかこんな風にメドリとずっと繋がっていられるようになるなんて、前までは思わなかったな……


「どうしたの? にやにやして」

「え? うん……その、嬉しくて」


 そんなにやにやしてたかな……恥ずかしい。

 でも、嬉しかったし……


 メドリが少し呆れたように微笑む。


「手なんていつでも繋いでいいから、ね?」

「うん……ありがと」


 手を強く握る。

 指を絡ませる。


「仲良いんですね」

「まぁ……はい」


 仲良しというか……恋人……なんだけどね。

 パドレアさんに、ていうか誰にもメドリが恋人ってことは言ってない。聞かれなかったし……まだ恥ずかしいし。


 恋人なんだって思うだけで、少し顔が熱い。

 メドリの顔もほんのり赤みがかる。同じようなこと考えてたのかも。そうだと嬉しいな。


「けど……ほんとにいつも一緒にいますよね? トイレとかも一緒に行ってましたし、今だって……イニアさんは今の話とかは退屈でしょう?」


 うんまぁ……正直なところわからなさすぎて、何も面白くはなかった。でも、メドリと一緒にいるから、楽しい……メドリといれればなんだって……


「退屈じゃないですから。その……一緒にいれば」

「ふふ……いいですね。そういう関係……」


 パドレアさんは微笑を浮かべながら、少し遠くを見ているように見えた。

 そういう関係って……もしかしてバレてる? いや、それでもいいけど……


「私は研究ばかりでしたからね……今はここの仲間達がいますけど」

「仲間……ですか」

「もちろんイニアさん達もですよ?」


 仲間……仲間……

 心の中で反復してるけど、まだそんな感覚はなくて。

 私はまだメドリ1人だけしかいない。この組織の人……それどころか世界中の人全員と比べても、メドリに天秤は傾いてる。


「パドレアさーん!」


 その時、研究所の扉が開く。

 そこには赤いロール髪の女が立っていた。


「え……あ……その、誰かいたんですか……すいません……!」

「いえ、いいですよ。もう終わったところだし、紹介もしたいって思ってたところですから」


 そう言って、パドレアさんは女の人を手招きする。

 少しびくつきながら、恐る恐ると言った感じでパドレアさんの少し後ろに立つ。パドレアさんの後ろに隠れてる。


 なんか……どこかで見たことある。

 あ、人見知りするメドリに似てるんだ。

 けど……なんていうか、身長が小さい。私も、メドリも、小柄な方だけど、それより小さい……子供かな?


「えっと……」

「この子は、アマム。まだ若いけど、研究に関してはすごいんですよ。もう私より魔法理論に関してはついていけないぐらいで」

「そ、そんなことないですよ! 私なんてまだまだで……」


 アマムさんは首を勢いよく、ぶんぶんと振る。

 赤いロール髪がそれに合わせて揺れる。


「えっと……私はイニアって言います。よろしくおねがいします」

「あ、その……メドリです……!」


 メドリは恥ずかしそうにしながらも、勇気を出して、自己紹介をする。

 頑張ってるメドリも可愛くて、つい触れたくなって、少し頭を撫でる。すると、さらに顔を赤くなって俯いてしまう。けど、少し嬉しそう。


「これからアマムにも協力してもらうこともあるだろうから、その紹介をね。アマムは魔法理論については詳しいし、それにイニアさんの魔力多動症にもね」

「え、魔力多動症なんですか!?」


 途端にアマムさんが身を乗り出してくる。

 なんだか目が輝いて見える。さっきまで、おどおどした感じだったのに。ちょっと怖い。


 メドリなんていきなりくるから、怯えてさらに引っ込んじゃったよ。


「ま、まぁ……そうですけど……」

「今度、魔力見せてください!」

「え、えっと……?」


 魔力……?

 魔力見られるの恥ずかしいんだけど……でも、検査って思えば、まぁ別にいいような気もするけど……


「ごめんなさいね。この子、魔力マニアなの。ほら、困ってるでしょ?」

「え、あ……! ご、ごめんなさい!」


 パドレアさんがアマムさんの肩を叩く。それで、少し冷静になったのか、またパドレアさんの後ろに引っ込んでしまう。


 ていうか魔力マニアってなに? 

 珍しい魔力波でも集めてるの?


「いや、私は別にいいですけど……」


 まぁ、そんな変なことはしないと思うし。

 それぐらい協力しよう。下手に荒波立ててもしょうがないし。


 ……この前は完全に売り言葉に買い言葉だったけど。

 あれはメドリのことを傷つけたから仕方ない……思い出したら、ちょっと腹が立ってきた。


「ほんとに!? えっと、じゃあいつ空いてますかね……?」


 ……この人、そんなに私の魔力見たいの?

 なんか恥ずかしくなってきた。


 ただ多量の魔力が動き続けてるだけなんだけど……

 メドリの魔力とかの方が綺麗だからいいと思うけど……


「もう帰るところなので、これからでもいいですけど……メドリはそれでもいい?」

「え? あ、うん……いいよ」

「ありがとうございます! じゃあ、こっちに……」

「アマム。何か私に用だったんじゃないんですか?」


 興奮して少し早口になってるアマムさんにパドレアさんが口を挟む。


「あ、忘れてました……隊長の魔導機の魔力系がちょっとおかしくて、見にきてほしいそうです」

「わかりました。あれ、でもそれ」

「はい……私も行かないといけません……すいません! イニアさん、また今度で!」


 アマムさんはそういうと、残念そうに、ほんとに残念そうにしながら、パドレアさんに連れられて、研究所を出て行った。

 私達を残して。

 なんか忙しい人だった……


「えっと……帰ろっか」

「うん!」

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