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夏休み最終日


 夏休みも終わりを迎え、いよいよ学校が始まる。けど、姫はご不満の様子で……


「終わっちゃうーーー!! イヤーーー!!」


 手足をバタつかせベッドで駄々るハナ。

 その気持ちはよく分かるけど……


「でもほら、夏休みが終わったらさ、アレがあるでしょ?」

「うん……でも……」

「でも?」

「ナツと離れ離れになっちゃう」


 確かに、夏休みの間は常に一緒にいた。

 隣にいるのが当たり前で……学校が始まれば授業の間は別々。

 俺だって寂しいよ。


「……そうだね、離れ離れだね。私も嫌だな」

「うん……」

  

 窓の外、喧騒と鳴く蝉の声。

 女子二人でおセンチに。

 学校か……


「ハナ、ちょっとお出かけしない?」

「うん、する!」


 ◇  ◇  ◇  ◇


 ネットで頼んだ可愛い服。

 何が正解なのかサッパリ分からなかったけど、自分なりに選んでみた。

 似合っているといいけどな。


「ナツ、その服いつ買ったの?」

「この前ね。変かな……?」

「ううん、すっごく似合ってるよ。可愛い♪」

「あははっ、ありがと」


 大きめの日傘を仲良く半分こ。

 まだまだ残暑、今日も真夏日を越えそうだ。


「ねぇナツ、どこに行くの?」

「いいからいいから」


 ゆっくりと辿るのは、毎日歩く道。

 この道はあと何回歩くのだろうか。

 

「ナツ……もしかして学校に向かってる?」

「正解♪ 明日だと意味がないから」


 門を抜け、下駄箱から靴を取り出す。

 何度も繰り返すいつもの動作。

 静まり返った廊下、人の気配は無い。


「こんなに静かだとなんだか別の場所みたい。あーあ、早く冬休みにならないかなぁ」


 教室の前に到着。

 いつもはここでお別れだけど、今日は同じ場所へ行く。


「ハナの椅子に座ってもいい?」

「うん、どうぞ♪」


 ハナの机、隅にはマジックで “ナツ” と書いてある。

 いつも……私の事を想ってくれているんだね。


「……ハナにはこんな景色が見えてるんだね」

「でもナツがいないから退屈だよ」

「……私の椅子にも座ってみる?」

「座るー♪」


 クラスを跨いで私の席につくハナ。

 嬉しそうにその景色を満喫し、愛しそうに机を見つめている。


「ふふっ、ナツの机……落書きしちゃお」


 油性マジックでひょっとこの絵を書き始めた。

 授業中にこんなの見たら笑っちゃうよ。


「この机に私が座るのは、あと何回かな?」

「えっ?」

「ハナと一緒に……登下校するのも、お昼ご飯を食べるのも、あと何回かな? きっと、これから先この景色を思い出すんだろうけど……悔いが無いようにしたいよね」

「悔い……」

「この学校は私とハナが出会った場所で……ハナと中学生っていう時代を過ごす場所で……卒業したらもう二度と体験出来ない場所。授業中は寂しいけど、同じ時に同じ場所で同じように私もハナの事を想ってるから……それは一つの思い出だと思う。色んな思い出を、もっとハナと作りたい。ここでしか作れない思い出、一緒に作ろ?」

「ナツ………」


 私からキスをする。

 思い返すと、自分からしたのって殆ど無いや。

 それだけ愛されてる証拠だ。


「ふふっ、いけない事してるみたいだね」

「……ハナ大好きだよ。いつもハナの事、考えてるから。だから、明日から頑張れるかな?」

「うん! 頑張る♪ 私にはナツがいるから。かかってこーい!」


 ハナも俺もやる気満タン。

 せっかく訪れたJC生活、満喫しなきゃ勿体ないもんね。


 夏休みが終わる。

 そして次に控えるは……


「ナツ、修学旅行の服買いに行こ♪」


 修学旅行。いい響きだ。


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この作品を生み出してくださって、本当にありがとうございます。 あなたの文章が大好きです。どうか最後まで、高校卒業まででも書き続けていただけませんか。 私はずっとあなたの作品を追いかけていきます。
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