ひょっとこナツ太郎
する事もないので、スマホをポチポチ。
気になるニュースは……お、これなんかよさそうだな。
『ネットで話題沸騰中! 天才中学生、凄腕ギターを披露』
同じ中学生としてジェラっちゃうな。
とりあえず動画を見てみるか……
なになに……ひょっとこナツ太郎?
変な名前でやってんだな。
ん?
……んん??
「ハナッッッ!!!!」
◇ ◇ ◇ ◇
「ご、ごめんね?」
「説明してくれる?」
動画に映し出されていたのは、ひょっとこをつけた俺がギターを弾いているものだった。
確かにそんな機会は何度かあったけど……
「私の提案よ!」
勢いよくドアを開け、ドヤ顔でハナママは登場した。
「ハナママが?」
「夏ちゃん、15歳だよね? こう言ったらなんだけど……異常よ? そんなに弾ける中学生いないと思う。だからプロデュースしてみたの」
「私がプロデューサーでーす♪」
「……このひょっとこナツ太郎って名前は?」
「私が考えたんだよ! 可愛いでしょ♪」
ひょっとこナツ太郎ね……
【ナツタロサァン!!】
「凄い人気なんだよ? 登録者数80万人で投稿した動画は殆どが100万回以上再生されてるし!」
「へー……」
「ママの名義でやってるから収益もあるんだよ! ゆくゆくは私がマネージャーをして仕事中もナツと一緒にいるのが夢なんだー♪」
俺の知らない所で……
まぁハナとは四六時中一緒にいたいけど。
【ナツタロサァン!!】
それやめてくれる?
【ナツタロサァン……】
「まぁなんとなく理解したけど……その、せめて一言……ね?」
「ごめんなさい……」
ションボリするハナ。
可愛い。
しかしあまり有名になっても……
あの事件は世間的にも厄介な事件だし、その当事者ってバレたら……
ハナも普通に生活出来なくなるかもしれない。
おまけにおじいちゃんは有名なYakuzaだし……
どうしたものかな……
「ナツが困るならやめるよ?」
「うーん……そうした方が良さそうな気が……」
「でも勿体ないわね。結構収益あるのに」
「ちなみにどれくらいですか?」
指で数字を作るハナママ。
「えっ!!? マ、マジで?」
「マジマジよ?」
サラリーマンだった俺が汗水垂らして働いていた一月分を、ひょっとこナツ太郎は軽々と超えていく。
おもむろにひょっとこを装着し、ギターをチューニング。
「……プロデューサー、何を弾きましょうか」
「ナツ太郎……よーし、じゃんじゃん弾いてもらうよー♪」
かくして本人公認ひょっとこナツ太郎の誕生である。
自分も動画に出たいと言い、おかめのお面をつけたおかめハナ子が誕生するが、それはまた別の話。




