夏の天気は変わりやすい
「雨凄いねー」
「うん……ハナも傘持ってないよね? どうしよっか……」
下校時間。下駄箱で靴を履き替えていると、先程までは主張の激しかった陽光は何処へやら。滝のような雨が降り出していた。
夏の天気は変わりやすい。
「お嬢様、こちらをお使い下さい」
「フ、フジさん!? なんでここに!?」
「源龍様からのご指示です。お嬢様が学校にいる時はいつでも見守っていますから」
そういえばそんな事言ってたっけ……
「では……」
瞬きをすると姿は消えていて……その様は忍──
「忍者みたいだね」
「あははっ。ね、同じ事思った」
「でも傘一つしかないね。私はいいからハナ使いなよ」
「なんで? 一緒に使お?」
◇ ◇ ◇ ◇
二人並んで傘に入る。ハナが傘をさしながら「ナツおいで」なんて言うから、ハナの横にすっぽりと収まっている次第。
こういう時はハナ主体のことが多くて……でも、ハナに甘やかされるのは嫌じゃない。
「ナツ、それじゃ濡れちゃうよ? もっとくっつかないと」
「そ、そうだよね……」
ハナの温もりと柔からさと匂いに包まれて耳が熱い。雨音よりも鼓動が勝っている。
「ねぇナツ、こうしてると……周りからどんな風に見えるのかな?」
「どういう事?」
「……ナツ、傘もっと下げて」
「こう?」
「もっと」
下げすぎて傘の骨組みが頭に当たってしまう。
なんだか恥ずかしくて笑ってしまうと、頬に温かくて柔らかな感触。それはほんの一瞬、周りの音が……止んでいた。
「ハ、ハナ!?」
「へへっ♪ こうすれば見られないでしょ?」
確かに、傘のお陰で外からは顔が見られない。
頬に残る幸せを噛み締めていると、ハナは甘い声で名前を呼び……顔を赤らめながら少し俯いていた。
そんなハナの頬へ……お返しをする。
「ハナ……手、繋ごっか」
「うん……でも手は外から見られちゃうね」
「……私達ジャージだし、外から見たら誰かも分かんないし、その……恋人同士に見られても分かんないし……」
自分でも何を言っているのか分からなくなってしまう程乱れる心。
どうしたらいいのか分からなくて、兎に角冷静になろうと努めていた所、ハナから手を繋いでくれた。お互いに言葉は無かったけれど……
視界の端に見えるハナの顔は、赤く染まっていた。
◇ ◇ ◇ ◇
「あっ、雨止んだね」
「ホントだ……」
寂しそうにするハナ。
どしたらいいのか、答えは一つだけ。
「……傘、差したまま帰ろっか」
「うん♪」
日差しは再びここにありと主張をし、蝉たちが一斉に鳴き出す。
夏の天気は変わりやすい。




