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一緒なら


 ハナと一緒に朝の登校。あの平屋に戻ることは無く、ハナの家で暮らし始めた。


「ナツ、あの通りまでは手繋いでいこ?」

「うん。でもなんであそこまで?」

「だって誰かに見られたら恥ずかしいし……」


【ほぉ〜】


 朝から湧き出てこないで?


「じゃあ私とハナの秘密だね」

「ナツ……あのね、ナツが……」

「ん?」

「ううん、何でもない!!」


 ハナの顔が赤くなっていたけど、気が付かないフリをした。


 ◇  ◇  ◇  ◇


「ハナ、教室にいかなきゃだから……」


 教室の前まで来たけれど……ジッとこちらを見つめてくるハナ。逃さまいというその瞳。俺だって、そんな気はさらさら無いけど……


「一緒がいいなぁ……なんでクラス違うんだろ……」

「……その分会えた時に嬉しいから。ね?」

「うん……」


 駄々る姿も可愛い。

 宥める様に頭撫でて、ポケットからあるモノを取り出した。これでいいのかは分からないけど……


「……これ、持ってて? 私のハンカチ。私の匂いがついてるから。それから……ハナが寂しくなりませんように…………はい、どうぞ」


 祈るように願いを込めてハナに渡すと、眼の前のその光景に……顔が熱くなっていく音が聞こえてくる。


「ナツ……ナツの匂いだ……へへ♪」


 この可愛さ。流石にKO寸前。

  

「私頑張るね!! ナツ大好き♪」

「うん、私も」


 ◇  ◇  ◇  ◇


 あーあ、早く休み時間にならないかな。


【その身体も随分と板に付いてきたじゃないの】


 まぁ……それなりにね。


【もし元に戻ったらどうする?】


 そりゃ嬉しい……嬉しい……よ?


【繋がりを持つという事はそれ相応の覚悟がいる。故に尊いのだ】

 

 急に真面目になるなよ、調子狂うじゃん。

 …………覚悟ね。


 ◇  ◇  ◇  ◇


 休み時間になってもハナは教室に来なかった。なんだろう、胸騒ぎがするな……様子を見に行ってみるか。


「──してよ!!」


 隣のクラスがなにやら騒がしい。これってハナの声……?


「いいから返して!!」

「お前なにアイツとつるんでんだよ。おまけにハンカチ握りしめてニヤついて。そんなに大事か? ホレホレ」

「返して!! 返してよ…………」

「返してほしけりゃ取ってみオッフッフッ!!?」


 嫌がらせをしている男子生徒のキン◯マを思い切り蹴り上げた。悶絶してるけど、潰れたって構いはしない。


「嫌がってるだろ、やめろよ。ハナ、大丈夫?」

「ナツ……ナツのハンカチ取られちゃって……ナツ……」


 人目も憚らずハナが泣き付いてくる。

 これはもう俺だけの問題じゃ……ないよな。

 ……いいよ、覚悟ね。


「誰だか知らないけどな、文句があるなら私に言えよ。ハナがテメェ等になんかしたのか? 私のハナを泣かしてみろ、許さねぇからな! 筋を通せ、分かったか!?」


 その場の全員が黙り俯く。

 少し野蛮な言い方だったかもしれないけれど、葉月夏というバックには何がついているのか、中学生でも理解出来ただろう。


「ハナ、おいで」


 ハナの手を引き、その場から立ち去った。


 ◇  ◇  ◇  ◇


「ごめんねハナ、私のせいで……」

「…………ナツ、私が朝言おうとした事なんだけどね……」

「ん?」

「ナツが記憶を無くしたのは、私と出会う為……なんて……ふふっ、自惚れてるのかな……」


 もう……戻りたくない。ハナの……ハナの葉月夏でいさせて欲しい。ハナが笑ってくれるならなんだっていいやって思ってたけど……ハナを笑わせるのは自分でありたい。 


「私も……私もそう思うよ、ハナ」


 ハナの手を優しく握りしめる。今朝とは逆に、こちらから逃さまいという瞳でハナを見つめた。

 ハナも俺も……笑っちゃうくらい顔が赤い。


「授業サボっちゃおっか。ハナの家でアイス食べよ?」

「食べる!! 私授業サボるの初めて……なんだかいけない事してるみたいだね♪」

「あははっ、いけない事だよ? でもさ……二人一緒なら平気平気」


 二人、一緒なら。


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