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Break Ground Online   作者: 九芽作夜
第四章 SHINNINGGIRL&GHOUSTREMAINS
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第八十九話 幻獣



 ネーム:ハク 【幼体】 種族:ペガサス

 レベル:10  HP:2000  MP(マジックポイント):1000

 STR:150 INT:300 VIT:200 AGI:150 DEX:100 LUK:100 TEC:100 MID:100 CHR:100


 保持スキル:【風魔法】Lv5 【聖魔法】Lv5



「……マジか」

「……マジみたいだね」

 

 フィーリアのメニュー画面を覗きながら呆然と呟くシロとエル。後ろで覗き見る他のメンバーも同じような表情をしていた。皆の表情を見て、フィーリアはオドオドとしている。


「あ、あの、シロ君。何がどうなってんですか? 皆何でそんなに驚いているんですか?」


 全員の様子に何か悪いことをしたのかと、フィーリアはシロに訊ねる。フィーリアのその問いにシロはいまだに戸惑いを浮かべながらも答え始めた。


「えぇと、いいかフィーリア? ペガサスというのはな、【幻獣】と呼ばれる類の種族で遭遇出来ることもレアなモンスターなんだ。それに遭遇してもテイム出来るのは相当難しいと言われている」

「【幻獣】ってどうすれば好感度上がるのか分かってないのよね」


 そもそも【幻獣】とは各フィールドから移動しないモンスターとは違い、気ままにあっちこっちへと移動すると言われている。さらに、警戒心が半端なく高く、見つけたとしてもすぐに逃げることなんてしばしばある。隠れるのも上手く、人が行き来出来ないであろう場所にも普通にいるという報告もされていた。


 いつか、BGOで【モフモフ同好会】というテイマーの集まりのギルドで〈幻獣仲良し作戦〉というのが為された。これは、人海戦術で【幻獣】との遭遇率やテイム成功率を調査する目的の作戦で、【幻獣】の遭遇しやすい場所や環境、さらに好感度の上昇方法が調べられた。

 しかし、数字などは取れたのだが好感度の上昇方法が分からずじまいという結果に終わったのだ。


「で、でも、【幻獣】を持ってるプレイヤーはいると思いますけど」

「数万人いるとされているプレイヤーの中で【幻獣】持ちなのは、確認されているだけで数人だけよ」

「えぇ……」

「しかも、初めて【幻獣】をテイムした野郎のグリフォンもイベント関係での報酬だからな。純粋に遭遇してテイムしたのは相当珍しいと思うぞ」


 シロたちの言う内容にフィーリアはただ呆然とするだけであった。あまりに現実味が持てなくてどう反応していいのか分からない。聞く限り、自分はすごいことをしたらしいのだが、実感が持てない。


「BUU?」

「……ハク」


 フィーリアが暗いことに察したのかハクは寄り添うように体を密着させた。その優しい気づかいにフィーリアは顔を綻ばせる。


「んで、どうするフィーリア?」

「?? どうするとは?」

「このままこいつを手元に残すのか、それとも……逃がすか」

「!?」

「ちょっ、シロ君!」

「ユキは黙ってろ。というか、お前も大体察してるだろ」

「それは……」


 シロの唐突の発言にフィーリアは目を見開かせて、ユキはシロを窘めようとするが次に言われてしまった言葉に黙り込んだ。しかし、フィーリアにはそれが何のことなのか理解出来なかったのでただただ戸惑った。


「シ、シロ君、それはどういう……」

「いいか、フィーリア。BGOに限らず、MMORPGというゲームではレアなアイテムや装備などを所有していると目立つ。しかも、【幻獣】持ちなんて超絶珍しいぞ、UW(ユニークウェポン)持ちと同等くらいの珍しさだ。そうなるとどうなると思う?」

「どうって……」

「確実にギルドへの勧誘合戦になる。そうならなくても、どうやってテイムしたのかって質問攻めにあうだろうな。情報は価値があるって話したことあるだろ?」

「はい」

「歩くたびに奇異な目をされ、事あるごとにパーティへの誘い、ペットの譲渡させろという恐喝めいたことをする輩も出て来るかもしれない。お前、それに耐えられるのか?」

「……」


 シロの言い分は至極真っ当である。こういったゲームではとりあえず強力なプレイヤーを自分のギルドへ引き込もうとする慣習が残されている。特に最前線に陣取るギルドとなるとフィーリアのようなプレイヤーは恰好の獲物に違いない。躍起になったどこかのバカがフィーリアに害を及ぼす可能性だって否定できないのだ。

 ただでさえ、初対面の人に構えてしまうフィーリアにその自然災害的な人の波は耐えられないだろう。


「……」

「BUU?」


 チラッ、とフィーリアは隣に佇むハクを見る。つぶらな瞳で見つめ直すハクにフィーリアは、唇を一文字に結んだ。

 確かにシロの言う事は正しいのかもしれない。自分はまだこのゲームについて詳しくない。無知というのはそれだけで不利だ。知らないと対策も何もないし、言いくるめられてどこぞのギルドへ入らさせるかもしれない。自分がそれに耐えられるとは到底思えなかった。でも――


「……それでも、私はこの子を手放したくないです」


 しっかりと、それでいて力強くフィーリアは言い切った。

 このゲームで初めてシロやユキに頼らず、自分で考えて行動した結果ハクと友達になれた。この子は自分が何かした証なのだ、そう簡単に手を放せる訳がなかった。

 フィーリアのその迷いのない答えにユキや【向日葵の輪(イエローホープ)】の面々は、意外そうな顔をしていた。彼女の性格から見ても、シロの言う事態に対処できるとは思えないからだ。しかし、シロだけは黙って頷くと口を開いた。


「そっか、ま、いいんじゃないか? 脅すような真似しておいて変かもしれないが、フィーリアがそうしたいならそうすればいいと思うぞ」

「シロ君……」

「この世界(ゲーム)は自由なんだ。どう遊ぼうがフィーリアの勝手だ」

「はい!」

「BUU!」

「へへ、ハク、これからよろしくお願いします!」

「BUUUUU!!」


 嬉しそうに微笑みを浮かべるとフィーリアはハクの頭を撫でた。覚悟は決まったようである。

 シロは覚悟を決めたフィーリアの引き締まった顔を、満足げに眺めた。



☆☆☆☆☆☆



「う~ん、美味い!」

「ほんと、おいしいです~」

「美味……」

「うまし……」

「これをミルフィーが、ですって……っ!」

「フィーリア、おいしいよ」

「あ、ありがとうございます」


 フィーリアがハクと共にいることを決めた後、シロたちは作っておいたカレーを食べていた。ちなみに、ハクには食材を適当に与えている。

 しかし、カレーに舌鼓を打っている中にシロとミルフィーの姿は見えない。それに関わらず、エルたちは火を囲って楽しそうにキャンプっぽいことをしていた。

 そんなワイワイとした空気の中に間延びした声が響いた。


「おまたせ~、できたよ~」

「こっちも出来ましたよ」

「おぉ、待ってました!」


 ニコニコ、と笑顔を浮かべながらも目にどことなく闘志を燃やしているミルフィーに少し遅れる形でシロも現れる。手にはそれぞれ蓋をした皿を持っており、それをエルたちが作ったサラダとポテサラの近くに置いた。

 ミルフィーがシロの料理の手際のよさを見て、挑んだ対決。内容はお互いに好きなものを作り皆に食べてもらう、そして多数決で勝敗を決めるというものであった。まぁ、シロとしてはどうでもいいのだが、毎日家事をしている身としては負けれらない所もあるので全力で行かせてもらった。


「じゃ~、あたしからオープン~!!」

『おぉ!!』


 やる気いっぱいでお披露目された料理を見て、皆から感嘆の声が上がった。

 皿には、ホクホクと湯気を放ち山のように積み上げられている唐揚げが存在していた。綺麗な揚げ色を帯び、カリッと仕立てられているのが見た目からして分かった。これは、美味そうだ。


「今すぐ食べたいけど、その前にシロ君のほうも料理出しておこうか」

「分かりました。それじゃ、どうぞ」


 ミルフィーとは反対にどこかやる気のなさそうな声を出しつつシロも皿の上に置かれている蓋をどけた。それを見た、エルから「ほぅ」と小さく漏れた。

 皿の上には、エルたちが簡単に作ったサラダと同様に野菜が乗せられているが違うのはその上に魚の切り身のようなものが添えられていることだ。


「簡単にカルパッチョ作ってみました。魚結構釣れましたし、どこかで消費しておいたほうがいいと思いまして」

「す、凄いね、ちなみにこのソースは?」

「調味料や果実系がありましたからそれを使いました」


 にべもなく言うシロであるが他のメンバーは目を丸くしてシロを見ていた。もはやシロの腕を知っているユキとフィーリアはそこまで驚かないがその他の面々はシロの女子力の高さに負けたような気分になった。


「と、とにかく食べてみようか」

「そ、そうだね!」

「わーい! いっただきまーす」


 エルの一言にミカとユキが乗っかり、各々目の前の料理に手を伸ばしだした。シロも自分の分のカレーを片手にミルフィーの作った唐揚げを一つ取った。


「いただきます」

「……いただきます」


 シロ同様にカルパッチョを箸でつまんだミルフィーに向かって言うと、相手もボソッ、と呟く。互いに互いの自信作を口に入れる。

 唐揚げは、外はカリッと中はジューシーで肉汁から鶏肉のうまみが凝縮されているかのようであった。まさに絶品、口にしたシロは思わずその味に目を細めミルフィーに視線をやる。すると、シロのカルパッチョを口にしたまま顔を強張らせていた。


「……うまい」

「……おいしい」


 両者、まるで悔しそうにだが十分にそれを顔に出さないようにしながら感想を述べる。シロもシロなりに自信があったからか、はたまたミルフィーという人物を知っているからか、ミルフィーの腕を称賛するとともに素直に口に出来ない心情であった。


「うま~い!」

「おいしいよミルフィーちゃん!」

「ミルフィーのくせに……っ!」

「シロ君、おいしいです」

「モグモグ……」

「両者……」

「引き分け……」


 そんなシロの心情を他所に他の面々はどちらの料理にも満足のようで、どちらかなど選べない様子である。

 結局、ミルフィーが起こした勝負は結果引き分け。だが、両者互いのプライドがことごとく打ちひしがれる結果となったことは言うまでもなかった。

 その後は、シロとミルフィーも互いに距離を置きつつ全員でワイワイガヤガヤと楽しく食事をしシロたちと【向日葵の輪(イエローホープ)】との親睦を深めるのであった。



 

 





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