第四百二十六話 クイズ大会開始
13時30分。
軽快で壮大なBGMが流れる。空気を震わせた音楽に集まった者も、そうではない者も一斉にステージへ目を向けた。
ステージ袖から派手な格好に身を包んだ一人の青年が飛び出す。
「はいはいどーも! 今日も元気ハピネス! VR実況者カンちゃんこと甘ロショーユ―です! 本日はお集まりいただいてありがとうございまーす!」
軽快な口調と元気な声に、ステージ前に集まっていた観客らの声が響く。
反応の良い初動に甘口は満足げに頷くと口元に存在するマイクの位置を調整させた。
「今日は以前より告知していました、甘口ショーユ―主催クイズ大会、本戦を楽しくお送りしまーす!」
挨拶は手短に、彼らの関心はイベントの内容。前置きが長くなりすぎるとグダってしまい観客の関心が別の方へ飛んでしまう。場の空気を盛り上げつつ甘口は頭の中で組み立てた脚本を瞬時に確認する。
「いやぁ、事前に告知していたとはいえこんなに人が集まって貰いありがたいですね。皆さんそんなに甘ちゃんに会いたかったんですか? え? お前じゃない? 俺らの推しを早く見せろ? 邪魔だ退け? あれ、俺のファンは何処に?」
軽いボケに周りが笑うのを見つつ周りの客層を把握。
自身のファンや新規古参のプレイヤー。ついでに寄ったと思われる客層もいる。
そして――
(上出来過ぎて草生えるわ)
人混みの中に紛れる人物たちの姿に、甘口は胸の内にほくそ笑う。
掴みも上々、このままサクっとゲストの紹介へ移ろう。
「はいはい、そんなに早くゲストが見たいなら見せますよ。それではー、本日イベントに参加する挑戦者の方々はこちら!」
ドドン、と背後を手で示すと同時。甘口の背後に垂れていた幕が左右へ一気に引かれた。
引かれた幕の奥から出てきたのは合計16名のプレイヤー。彼ら彼女らの登場に観客たちのボルテージも急上昇した。
「右側から順番に紹介しましょう。まず一組目はチーム『8SHY』の皆さん。酒好きが集まるギルド【JRWA】に全員所属。優勝した暁には美味い酒をしこたま買うそうです」
わー、と歓声を受けたチーム『8SHY』のメンバーは腕を組み仁王立ちのまま。自信があるというより祭りを盛り上げるような態度だ。彼らのファンサに会場はさらに盛り上がりを見せる。
「続きまして二組目はチーム『ベタ担当班』の皆さんです。ギルド【大図書館】からの参加です。おぉっと、チーム全員が首から何かぶら下げてるぞ!?」
紹介されたチーム『ベタ担当班』のメンバーはぶら下げている板を持ち上げて見せる。
【新刊寄贈中! 買い取り可能! 詳細は《ライブラリー》にて!!】
「どうやら宣伝のようだ! ご興味のある方は是非とも足を運ばれてはいかがでしょうか」
ぱちぱち、と拍手が起こる。どうやら彼らは宣伝目的での参加のようだ。文化祭シーズンなんて名目なものだからか【大図書館】でもイベントが開催されているらしい。
「さぁ、宣伝も済んだ所で続いていきましょう! こちらもまた有名ギルドから参加だ! チーム『妖精三姉妹』の皆さんです!」
呼ばれて前へ出てきたミクたちの姿に歓声がより一層高まって行く。
この中では一番の知名度を誇る三人は大きな歓声を受けても堂々とした態度で佇んでいた。
「流石はギルド【疾風の妖精達】の方々。俺の登場よりも会場が盛り上がってしまいました!! ちくしょうめ!」
わはは、と甘口の自虐に笑い声が起こる。
ミクたちが下がるのを確認して、甘口は続いての参加者を紹介する。
「続いてはこちら『BGO交通同盟』! 名前を聞くだけで彼らがどのジャンルのオタクか分かりますね。現在はBGOで線路をどうにか作ろうとしているらしいです」
紹介を受けた三人組。拍手を受ける彼らの衣装は駅員を彷彿とさせる制服だった。綺麗な姿勢で並ぶ姿は本当に職員かもしれない。
「そして、最後になりました。こちらも最近何かと話題になっているギルド【白雪姫】から『仲良し三人組!』の皆さんでーす!!」
最後に紹介されたシロたちは一歩前へ出て観客たちの声を浴びる。
ユキは楽しそうに、フィーリアは微笑み、シロは無表情。三者三葉の態度はこのイベントに対する姿勢を分かりやすく示していた。
全員の紹介を終えた甘口は続いて企画の説明を集まった観客たちへ向けて行う。
「それでは、本日の企画の説明へと参りましょう」
参加者より前へ躍り出て、甘口は観客の視線を自身へ向けるように誘導する。甘口の合図と共に、後ろでは天井から白い幕が降り立った。
「今回のクイズ対決は三つのゲームを用意をしております。三つのゲームに挑戦していただいて成績に応じたポイントを獲得。最終的にポイントがより多いチームが勝利となります。それでは! まず最初のゲームへと参りましょう!! 第一ゲームはこちら!」
ドドン、と効果音を鳴らしながら白い幕に文字が浮かび上がってくる。
1stゲーム 答えを見つけろ! 《アクションゲーム》!
ルール:クイズの答えを設定範囲にバラまかれたカードの中から見つける。
「第一ゲームは《アクションゲーム》、こちらのステージを中心に《ガウス街》に問題が書かれたカードがばらまかれております。そのカードを持ってステージに戻り、問題を答えてもらうというルールになっております。一問正解につき10P、制限時間は10分とさせてさせていただきます」
一つ目はクイズ番組でもお馴染みのゲーム。散らばったカードをステージに持ってきて、その問題を答えるというもの。問題の難易度に関係なしにポイントは一律10P、どれだけ早く自分が解けそうな問題を引き当てられるかが鍵となりそうだ。
「第一ゲームの詳細は以上です。何か質問がございますでしょうか」
甘口は一度参加者たちに視線を向ける。しかし、ステージの裏で説明を受けていたため質問が飛ぶことはなかった。
参加者たちからの質問がないことを確認すると甘口は体を大きく広げマイクに声を乗せる。
「では、さっそく参りましょう! 第一ゲーム、よーい!」
甘口の声に合わせてカウントが始まる。
数字が徐々に減っていき、0に変わる。
「スタート!!」
刹那、ステージに立っていた参加者たちが一斉に動き出した。




