SS 席替え
日間ランキング4位になりました!
まさか、自分がこんな順位を取るなんて…
皆さん、ありがとうございます!! これからも読んでいただけると幸いです。
五月に入り、クラスの雰囲気ようやく慣れ始めた頃。教室の空気の変化に和樹は気づいていた。何なら少し怖いくらいの空気である。
大抵のことでは動じない和樹が今の教室の雰囲気に冷や汗を浮かべていた。その原因となっているのはクラスの男子たちから発せられている邪悪なオーラである。普段は大人しい彼らが一体なぜここまでのオーラを出しているのかというと理由は担任から出されたとある提案である。
☆☆☆☆☆☆
__五分前
和樹たちのクラスは一日の授業を終え、生徒たちは帰りのHRを受けていた。そこで担任からある提案が出された。
「あ~、五月にも入ったことだし。そろそろ席替えをしようと思ってるけど大丈夫か?」
その一言が放たれた瞬間、クラスの男子たちから一斉にただならぬオーラが発生した。そして、和樹は彼らが今考えていることが手に取るように分かった。
(((柊さんの隣に座りたい!!)))
「はぁ、男子ってホントバカだよな。いや、俺も男子か」
女子が言いそうなセリフを言いながら和樹はため息をつき、小さく呟いた。そんな男子のオーラの源泉を見てみるとなぜか暗い表情を浮かべている。雪のことだからこんな小さなイベントとかでも楽しそうにしているものだと思っていたのだが。不思議に思った和樹は声を掛けた。
「おい、柊、大丈夫か?」
「え? あ、大丈夫、大丈夫だよ」
「本当か? 顔色悪そうだけど」
「こ、これは、その……シロ君と離れるのが嫌とかそういうわけではなくて、えっと…」
「??」
よく分からないが本人が大丈夫と言ってるなら大丈夫なのだろう。あと、シロ呼びは後で矯正させよう、などと考えているといつの間にか担任は教室を出て、黒板の前にはクラス委員の男子と女子が立っていた。どうやらあとは生徒に丸投げしたようである。
「はい、じゃあ、この箱から適当に紙を引いてください」
女子の委員がそう言うとクラスの生徒たちはぞろぞろと前に置かれている白い箱の前へと群がって行った。席替えはくじ引きで行うようで出た数字の席が新しい席となる仕組みである。和樹のクラスの人数は36名で席は6×6の並びになっており、和樹の座っている席の一番前から縦に1~となっている。
次々にクラスメイトたちがくじを引いていくなかで和樹はまだ席から立ち上がろうとはしなかった。
「あれ? シロ君は引かないの?」
立ち上がる気配を見せない和樹を不思議そうな顔で雪は尋ねた。
「俺は最後でいいよ。どうせ、どこでも一緒だし。あと、シロじゃなくて白井な」
「あ、ごめん。でも、どこがいいとかないの?」
「ん~、強いて言うなら一番前かな、黒板見やすいし」
「…ほんと勉強熱心だね」
「悪いか?」
「いや、すぐにそういうこと言えるのはすごいなって思っただけ。じゃ、私は先に引いてくるね」
雪は手をひらひらさせて教卓の方へと向かった。くじ引きも終盤に差し掛かっているようで皆、友達と席がどこだったのかを確認し合っている画がまた青春を感じさせた。
「はい、次は柊さんの番ね」
ザワッ!
女子の委員が言ったその言葉に教室にいた男子たちに緊張が走る。そんな事をつゆ知らない雪は手を箱に入れ、中をゴソゴソと探る。そして、一枚の紙を掴むと雪は箱からそれを取り出した。
「「「ゴクリっ」」」
男子たちの注目を集めながら雪は折りたたまれた紙を開く。全男子(和樹を除く)が固唾を飲むなか雪はゆっくりと書かれている数字を確認する。
「雪、何番だった?」
雪の近くにいた一人の女子が何気なく番号を尋ねる。そして、皆、雪の次の言葉に耳を傾ける。
「…9番」
「よっしょあああああああ!!」
「「「くそおおおおお!!」」」
雪の告げた番号に一人の男子が渾身のガッツポーズを決めるのと同時に多数の男子が膝を折って悔しがった。
「…見てて意外と面白いなこれ」
普通、席替えでこんな盛り上がりは見られない。これから行われる席替えすべてこんな感じになるのだろう。
「さて、そろそろ行くか」
和樹は教卓に近づくと最後の一枚を男子の委員から渡される。躊躇いなくめくると12の数字が書かれていた。
「お、ラッキー、隣じゃん移動楽だな」
和樹の引き当てた席は雪が座っていた席である。移動の際は机ごと移動するのであまりに離れすぎていると地味に大変なのだ。
和樹は持っていたくじを男子委員に返すと自分の机へと戻ろうとした。が、ここで意外なトラブルが生じた。
「あれ?」
女子の委員がとあるくじを見て首を傾げた。それはさっき雪が引いたくじである。
「ねぇ、柊さん」
「うん? 何?」
「これ9番じゃなくて6番だよ」
「「へ?」」
和樹と雪の声が見事にシンクロした。同様にさっきまで喜んでいた男子の顔も呆然とする。
「ほら、ここ6と9が紛らわしいから線引いてるでしょ。線が引いてあるほうが下なの、ごめんなさい言い忘れていたね」
女子委員は申し訳なさげにそう言うとせっせとくじを片付けて自分の席を移動させるべく机へと移動した。
つまり、雪が引いたのは9ではなく6であり、6の席というのが和樹が座っていた席である。そうなると必然的に雪の隣は…。
「俺、かよ」
雪と和樹は互いに顔を見合わせる。顔を見合わせると雪は嬉しそうにニコッと笑った。破壊力抜群のその笑顔に和樹は不覚にもドキッとしてしまった。
だが、そのドキッも周りからの殺意に塗れた視線のおかげで8割減ぐらいになった。人が本気で殺意を剥き出しにするとこんなに怖いもんなのかと普通では味わえない経験を積んだ和樹である。
「また隣だね、よろしくシ、白井君」
「…何でそんなに嬉しそうなんだ?」
「そうかな? 普通だよ普通」
「はぁ、ま、いいけど」
席を移動させた後、皆がパラパラと帰っていくなかで和樹と雪は言葉を交わした。
(また、一ヶ月くらいあの視線に耐えなきゃならんのか)
和樹がさらに不安を覚えたのは言うまでもない。




