第百一話 暗闇探検4
遅れてしまい申し訳ございません。
短めです。
ミルフィーが恐怖を克服して骸骨戦士を倒すと、シロとミルフィーは並んで暗い道を歩いていた。ミルフィーの目の前を【ライトボール】がゆらゆらとと浮かんでいる。シロが最初に出したからということでミルフィーが出していた。貸し借りは嫌だと言うことだろう。
「………」
「………」
互いに何も言葉を発しない。だが、シロはその空気が決して気まずいものではなかった。これは、互いに警戒をしているからだ、そしてこの緊張感を孕んだ空気がシロは心地よくさえ感じていた。
ミルフィーも同様にさっきまでの気まずさは消え、警戒に集中出来ていた。この感覚は【向日葵の輪】の時とは違う、どちらかというと【六芒星】の頃によく似ていた。
(どうしてかな?)
何故、彼といるとこんなにも落ち着くのだろう。ミルフィーは不思議でたまらなかった。しかし、それを考えることよりも今は、出口を探してエルたちと合流することが先決である。余計な考えは捨て、しっかりと前を見据える。その姿はやはりトップギルドのエース、堂々としている。
そんなかつての仲間の姿にシロは感慨深いものを感じながらも自分もスキルを持って周りを警戒する。
昔、シルバーがいた頃はミルフィーと二人一緒に中衛として戦った経験がある。ギルドの中では一番相性が良かったと思う。今、二人の空気は少しだけ昔に戻ってきているように思えた。
と、シロがミルフィーの変化を感じていると目の前に骸骨戦士が三体ほど現れた。反射的に刀を抜こうとしたシロであるが……。
「【スパーク】!」
抜刀する前にシロの横を電撃が走り、相手を蹂躙した。
見違えるほどに堂々と敵を倒したミルフィーであるが、全く驕ることなくその目はしっかりと前を見据えていた。まさか、ここまで変化するとはシロとしても予想外であるがこれで自身の負担もかなり減ったのだから万歳ものである。
敵を薙ぎ払ったミルフィーは足を止めることなくどんどん進んでいく。シロもその背中を追いかけていったのであった。
☆☆☆☆☆☆
さらに進むこと数分、シロたちはまたしても最初の広場とは違う場所に辿り着いた。そこはまるで神殿のように太く長い柱がいくつも並べられており、よく見ると二階部分が存在しているが階段は見当たらない。バルコニーのような造りの二階部分には、規則的に古びたランプが並べられていた。
シロとミルフィーは、その広い空間の中央まで歩み寄るとキョロキョロ、と辺りを見渡した。モンスターが出る気配もなければ、先ほどの壁画のように何か歴史的に残されているものもなかった。だが、ただ一点だけ、とても見逃せない違和感がシロたちの目の前にあった。
広い空間の中央、そこに寂し気に、それでいて堂々とした雰囲気を醸し出しているのは石ころである。いや、石ころに見えるが細長いそれはただの石ころのようには見えなかった。
「……なんでしょうかこれ」
「さぁ? 説明でも見れば分かるんじゃない」
若干、冷たいその口調で答えるミルフィー。しかし、そんな彼女の態度にも動じることなくシロは「なるほど」と石ころのようなものを凝視しだす。
「……何も出ませんね」
「そっ、じゃあ、ただの石ころなんじゃないの?」
「こんな広い場所の中央で堂々と建っているのに?」
シロの疑問に返す言葉が見つからないミルフィー。シロもそこまで答えを期待していたわけでもないので気に留めない。
中央に備えられているその石ころは、なおも堂々と二人の前に佇んでいた。その姿はどこか禍々しさを漂わせているように感じた。その禍々しさに当てられた二人は触ることを拒む。しかし、触らないと何も調べられないと思ったミルフィーは、慎重に石ころに手を伸ばす。
ゆっくりと伸ばされた手をシロも注目し、成り行きを見守る。ミルフィーの細く長い手はやがて、石ころとの距離をゼロとし台座から石ころを離した。シロとミルフィーはすかさず周りに意識を向ける。
「………」
「………」
だが、一向に変化らしい変化は起きない。シロとミルフィーはゆっくりと臨戦態勢を解き、一息つく。
「ふぅ、何も起きないじゃない。驚かさないでよね」
「そうすっね。でも、何も起きないなら起きないで……」
と、喋っているシロの言葉が途中で止まる。違和感を感じたミルフィーがシロのほうを向くと、先ほどとはまるで真逆の力強い眼をして周りを見ていた。
どうしたのだろうか、と一歩足をシロに踏み出した。その時……
「っ、上だ!!」
「え? キャッ!」
足を動かしたミルフィーの耳にシロの叫び声が響いた。驚くミルフィーであったが、次の瞬間に体が浮遊感に襲われ、地面に倒れ込む形となった。
「いてて、何するのよ……」
急に倒れたミルフィーは、倒れた原因に文句を言おうとしたが言葉が続くことはなかった。
倒れた拍子になのか、それともそこまで意識が回らなかった、目を開いたミルフィーのすぐ傍にシロの顔があった。
「てて、大丈夫ですか?」
「ダ、ダイジョウブ」
「何で片言なんですか?」
「そ、そんなことないよ。って! どいてよね」
「あぁ、すみません」
ミルフィーの文句に素直に体を横へずらした。ミルフィーも迅速に体を起こすと、目を細めてシロを睨みつける。だが、ミルフィーの鋭い目線が突き刺さることはなかった。シロの視線はずっと違う場所を捉えていた。
その視線に気づいてたミルフィーもシロの視線を追うと、顔を強張らせた。
「HYOOOOOO」
黒いボロボロなマントに身を纏い、マントの間から伸びているのは白く細い骨。そして、下半身は存在せず、地面に浮いている。
その細い腕の骨が持っている巨大鎌はさっきミルフィーがいた場所に突き刺さっていた。
ブラッド・レイン Lv103
まさに死神がシロたちの目の前へ現れていた。




