70話「今もこれからも――」
2019/02/24に短編小説として、『貧乏学生の相手は大手企業! バレンタインデーもただでは終わらない』を書きました!
ネコクロの名前から飛んでいただければ見えると思うのですが、この最終話から数ヵ月たった、バレンタインデーの話になっております♪
ぜひとも、読んでみてくださいヘ(≧▽≦ヘ)♪
「――久しぶりにここに来たわね……」
そう言って、楓先輩は愛おしそうな表情をした。
俺達が来たのは、俺達の街――清水町が見渡せる丘だ。
今は夜中の為辺りは暗くなっており、綺麗な夜景が見える。
ここは前に楓先輩を連れて来た場所だ。
俺達の思い出の土地でもある。
前にここに来た俺は、ここを最後に彼女と決別するつもりで来ていた。
だけど今は、楓先輩とここでやり直したいと思ったから、俺は彼女をここに連れてきた。
「楓先輩」
「何?」
俺が名前を呼ぶと、楓先輩が首を傾げて俺の顔を見上げてきた。
「俺、手術を受ける事にしたんです」
「……そうだと思ってた。それ以外にアメリカに行く理由がないもの……。でも――」
楓先輩は不安そうな表情をする。
手術をする事により、俺が死ぬかもしれないと思っているからだ。
「大丈夫です。紫之宮会長が腕の良い医者を手配してくださいましたので、成功率はかなり高くなりました」
「お爺様が……そう――そうなのね!」
俺の手術が成功する可能性が高い事に、楓先輩が嬉しそうな声を出してくれた。
俺は一つ深呼吸をする。
これはケジメだ。
そして、俺が生きて帰ってくる為の理由にもなる。
「だから先輩――俺が手術を終えて帰ってきたら、俺と付き合ったください!」
俺はそう言って、頭を下げた。
「嫌……」
「え……?」
だけど、楓先輩から返ってきたのは拒絶の言葉だった。
……え?
俺、振られたの……?
あれ、楓先輩は俺の事を好きになってくれてると思っていたのは、俺のうぬ惚れ……?
「なんでそうやって、保険をかけるの? 別に帰ってきてからじゃなくてもいいはずでしょ……?」
楓先輩はいじけたようにそう言って、俺の目をジーっと見てきた。
あ……。
そう言う事か……。
俺が少しだけ逃げてる事に、楓先輩は気付いたんだな……。
「すみません、言いなおします。楓先輩――俺と付き合ってください!」
「喜んで!」
楓先輩はそう言うと、俺に抱き着いてきた。
俺はそんな楓先輩を優しく抱きしめる。
「絶対帰ってきてよ……?」
「わかってます」
「じゃあ、誓いを立てて」
そう言って楓先輩は目を瞑り、顎を少しだけ持ち上げた。
……これはあれか?
俺にキスをしろという事だよな?
えぇ……そこまでしていいの……?
俺が迷ってると、楓先輩がギュッと体を抱きしめてきた。
……よし。
「絶対楓先輩の元に帰ってきます」
俺はそう言って――楓先輩にキスをした。
「えへへ、うん――信じて待ってる」
楓先輩はハニカミながら、そう言って笑顔を向けてくれた。
俺はそんな先輩を再度抱きしめ、それから一時間ほど二人だけの時間を楽しむのだった――。
2
次の日、俺はアメリカへと渡った。
テストは今までの成績と、手術を優先しなければいけないという事から、免除になった。
そして――もちろん手術が失敗するという事は無く、無事成功した。
それからは夏休み丸々と一ヵ月で、日本に帰って来れた。
本当ならリハビリを兼ね、経過観察もしないといけないため、まだまだ入院をしなければいけなかったのだが――後の事は紫之宮財閥が抱える大きい病院でしてくれるという事で、俺の退院が認められた。
――そうそう、アメリカに居る間に、一人の凄い男と出会った。
彼等とともにちょっとした(?)事件を乗り越えたのだが――それは事が事だっただけに、俺ら三人だけの秘密という事になった。
いずれ誰かに話す事になるかもしれないが――今は例え楓先輩だろうと、その話しをするつもりはなかった。
そんなこんなでやっとこさ学園に帰ってきた俺は――ちょっとした面倒ごとに巻き込まれていた。
……いや、巻き込まれていたというより、その中心が俺なのだが……。
「だから――もう噂の問題は解決したんだし、龍は悩み相談委員に戻すべきよ!」
そう言って、夕美が俺の机の前で、隣に立つ女子に言う。
「駄目だよ! 黒柳君には生徒会に入ってもらうんだから!」
そんな夕美に対して、新生徒会長になったばかりの大森新会長が、夕美から俺を庇う様に俺の前に立ち、両手を広げた。
……現在昼休み――俺は帰国してから初めての登校だったのだが……何故か、俺が悩み相談委員に戻るのか、生徒会に入るのかで揉めて事が起きていた。
……ちなみに、俺の意思は度外視です……。
白川会長、楓先輩は、俺に生徒会へと入ってほしいらしい。
――楓先輩は、俺に悩み相談委員に戻られると困るかららしいが……。
そして夕美達悩み相談委員のメンバーは、当然俺が帰国したら悩み相談委員に戻ってくるものと思っていたため、俺を勧誘にきた大森新会長に食って掛かっていたのだ。
「ねぇねぇ、クロヤン! 私と一緒に生徒会に入ろうよ!」
傍観していたはずの佳織が、そう言って俺に抱き着いてきた。
「ちょっ――花宮さん!? なんであなたが生徒会に入る事になってるの!? というか、龍君から離れなさい!」
夕美と大森新会長が言い合いをしているのを、少し離れた所で見ていた楓先輩が、血相を変えて俺から佳織を引きはがそうとする。
もう、クラスメイトからの視線が痛い……。
俺の噂は無くなったはずなのに、このままじゃあすぐ噂が立つだろう……。
「ごめんなさい、紫之宮先輩……。花宮さんのお願いを断れなくて……」
先程まで夕美と言い合いをしていたはずの大森新会長は、そう言って気まずそうに楓先輩に謝った。
……佳織の奴、大森新会長の何か情報を仕入れて、脅したな……?
俺はそう思って、未だに右腕に抱き着いてる佳織を睨む。
佳織は『てへっ』と、舌をだした。
うん、十中八九脅してるな……。
「こら! そんな事よりも離れなさい!」
楓先輩は俺達のやり取りよりも、佳織を俺から引か剥がすのに必死になっていた。
そんな姿を、白川会長や新生徒会役員――そして、加奈達が苦笑いをしながら見ていた。
結局この日、俺は佳織と一緒に生徒会に入る事になった。
楓先輩は俺が生徒会に入った事を喜ぶかと思いきや――凄く複雑そうな顔をしていた。
この騒動が起きた時、俺は察した。
『あぁ……これからは、こんな学園生活になるんだろうな……』――と。
きっと、俺達の関係は今の様な状態から変わらないのだろう。
どうせこれからも、俺は様々な厄介毎に巻き込まれる気がする。
その中で――あの男とも再び相まみえる事があるかもしれない。
俺は未だに騒いでいる女の子達を横目に、一段と騒がしい昼休みをそんな風に考えながら過ごすのだった――。
これで『貧乏学生の相手は大手企業!』が完結しました!
ネコクロが人生で初めて書いた拙い小説を、最後まで読んでいただきありがとうございました!
この作品は一番のメインヒロインが全く出てこないという、変わった話だったと思います。
それでも読んでいただけたのは、凄く嬉しいです!
龍がアメリカでした出会いは、いずれ短編として書きたいと思っております!
ただ、ネコクロの都合もありまして、実際に書けるかどうかは未定となっております。
70話ピッタリで終われたので、キリが良かったと思います。
最後にもう一度、『貧乏学生の相手は大手企業!』を最後まで読んでいただき、ありがとうございました!







