表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
貧乏学生の相手は大手企業!  作者: ネコクロ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/70

53話「燻る闇」

「――じゃあ、おやすみ」

 そう言って佳織は、俺にはにかんだ笑顔を向けてくれる。

「ああ、おやすみ」

 俺も彼女に笑顔で返した。

 あの後、東京に帰ってきたのが23時頃になってしまったため、俺は佳織を家の近くまで送っていた。

 流石に彼女の親に見つかるのはまずいため、家の近くで引き返す事にしている。

「えっと……また明日ね?」

 そう言って、佳織は俺の方を上目遣いで見てきた。

 あのやりとりから、佳織はずっとこの調子だった。

 俺達の間に有った壁が無くなったおかげで、前よりも仲良くなれたのだろう。

「そうだな、明日も今日と同じで朝が早いから、早めに休んでくれ。それと、明日からは忙しくなるから、覚悟しといてくれよ」

「うん、わかった。じゃあ、もう家に帰るね……おやすみ」

「おやすみ」

 俺は佳織が角を曲がるのを見届け、引き返した。

 彼女の家は角を曲がってすぐのとこにあるため、危険はないだろう。


「――お疲れ様」

 俺が歩き出してすぐ、今日会う予定だったもう一人の人が現れた。

「こんばんは、愛さん。すみません……こんな遅い時間になってしまって……」

 俺は愛さんに向けて頭を下げる。

 本当は20時に会う予定をしていたのに、こんな時間になってしまって申し訳なかった。

 本当なら明日にするべきだったのだろうが、時間があまりないため、早めに作業に入りたかった。


「ううん、大丈夫だよ。それにこっちの準備もギリギリだったから、逆に時間がもらえて良かったよ。それよりも、デートは楽しかった?」

 そう言って、愛さんは興味津々で俺に聞いてきた。

「いや、デートじゃないですよ! ただ佳織が行きたがっていたとこに、行ってきただけですから!」

「佳織、ね……? ふふ、それをデートだって言うんじゃないかな? まぁ、楓には内緒にしておくから安心して」

 愛さんはニコニコで、そう言ってくる。

「だから、違いますって……。もうそんな話はいいですから、早く行きましょう!」

「はいはい、じゃあ、車はあっちに停めてあるから、行こうか」

 愛さんは車のキーを指でクルクル回しながら、歩き始めた。

 この人はお嬢様なのに、自分で運転をしたがる。

 本当、変わった人だ。

 俺はそう思いながら、彼女の後についていく。

 すると――


「待って!」

 

 俺達はその声に振り返る。

「……佳織?」

 俺達を呼び留めたのは、家に帰ったはずの佳織だった。

「嘘つき……今日は予定がないって言ってたのに……」

 佳織は頬を膨らませ、俺の事を見ていた。

「あぁ……すまない……」

 しまったな……これでは、先程築いた信頼関係にヒビが入ってしまう……。

 佳織は俺に近寄ってくると――

「まだやる事があるんでしょ? 私も手伝うよ」

 そう言って、俺の方に微笑んでくれた。

「怒ってないのか……?」

 俺の言葉に、佳織は首を横に振る。

「私がわがままを言ったのに、私に気を遣わせないためにそう言ってくれたんでしょ? そんなの怒れるわけないじゃん。それに、ごめんね? 予定を邪魔しちゃって……」

 そう言って、申し訳なさそうに俺の方を上目づかいで見てきた。

「いや……俺は問題ないと判断したから、そうしただけだ。予定に狂いはないから、気にしなくていい」

 俺がそう言うと――

「えへへ……ありがとう」 

 と、佳織ははにかんだ。

 なんだか、随分と素直になったな……。


「わぁ~……アツアツだね~」

 俺達の会話を見ていた愛さんが、こちらを見ながらニヤニヤしていた。

 愛さんの言葉に、佳織は恥ずかしそうな様子を見せる。

 きっと、からかわれて恥ずかしいんだろう。

 

 ――しかし、愛さんはさっきからなんなんだ……。

「あのですね……なんでもかんでもそう結び付けないでくれませんか?」

「ハハ、君はいつか女の子に刺されそうだね?」

「え……?」

 俺が苦言を申そうとしたら、愛さんは突然そんな事を言って、苦笑いしていた。

 俺が女の子に刺される?

 どういうことだ?

 

 俺は訳がわからず、佳織の方を見る。

 すると、佳織はなぜだか、ウンウンっと頷いていた。

 ……俺が理解していないだけなのか……?


 そんなやり取りをした後、俺達は愛さんの会社に行ったわけだが――

「な、なに、これ……?」

 驚愕の光景に、佳織は涙目で俺の方を見てくる。

 これから何をするのか、理解しているからだろう……。

 まぁ、その気持ちはわかる……。

「こ、ここまでとは……流石に俺も気が滅入りそうです……」

 俺達の目の前に広がったのは、部屋いっぱいに積み重なっている紙束だった。

 俺が愛さんに用意してもらったのは、紫之宮財閥系列の会社に関する、経費や取引企業、物資の仕入れ値などが記載されたものだ。

 ただ、まさかこれほどの量になろうとは……。

「まぁ、気持ちはわかるけど……これだけ準備するのも苦労したんだから、無駄にしないでね?」

 そう言って、愛さんはニコっとした。

 もう彼女の役目は終わりだから、気楽なのだろう……。

「はい……ありがとうございます……。さぁ、佳織……やろっか……?」

「な、何を……?」

 佳織は震えた声で、俺に聞き返してきた。

 自分が予想している答えとは、別の答えが返ってくるように願っている感じだった。

 残念ながら、その期待は裏切る事になるのだが……。


「今から、仕入れ値などが相場通りに行われているかどうか、調べるぞ……それも、約束の日までの四日以内に……」 


「嘘でしょぉおおおおおおおおおおおお!?」

 

 佳織の断末魔が、深夜に響きわたるのだった――。





 ――噂を止めてくれ。

 お兄ちゃんからそう頼まれた私達は、それぞれ行動に移ってた。

 とは言っても、私の役目は今日からだけど……。

 お姉ちゃんが噂を流している相手を見つけるまで、私は待機するしかなかった。

 だけど、流石お姉ちゃんだと思う。

 たった一日で、噂を流している20人に目星をつけちゃった。

 これからは私の役目。

 お兄ちゃんの噂を流している事の、言質をとってくる――。 

 それが、私がお兄ちゃんに任されたこと。

 お兄ちゃんに何かを任されると言うのは、初めてだった。

 でもそれは、嬉しいと同時に、心が痛かった……。

 だって、この噂を流し始めたのも、私だもん……。

 今お兄ちゃんが大変な目に合っているのは、全て私のせいだった。

 本当なら、今頃お兄ちゃんは手術を受けれてたはずなのに、私がそれを邪魔してしまった……。

 なのに、お兄ちゃんは犯罪に手を染めた私の事を、許してくれた。

 本当にお兄ちゃんは、私に甘いと思う。

 でも、そんなお兄ちゃんの事が大好きだった。

 だから、お兄ちゃんの期待にこたえたい。

 それは償いでもあるのだから……。

 

 だけど、ふと思うの……。

 お兄ちゃんは、この噂について私に何も聞かなかったけど、私が元凶だと言う事に気づいていないのかな……?

 ううん……きっと気づいてる……。

 多分、最近お兄ちゃんの隣に居るあの人が、お兄ちゃんに教えているから……。

 だけどお兄ちゃんは、私に何も聞いて来ないし、怒りもしない。

 ただ優しく、『気にするな』と言ってくれる。

 それはお兄ちゃんの優しさだった。

 でも……お兄ちゃん気づいてないのかな……?

 私……またほっとかれてるよ……?

 一緒に暮らしてくれるんじゃなかったの……?

 いつになったら、私と暮らしてくれるの……?

 ねぇ……なんで、また違う女が隣に居るの……?

 

 

 ……まぁ、今はいいかな……。

 今はお兄ちゃんの命が優先だし……。

 

 ――私は、目的の相手に歩み寄る。

 そして、自分の髪を指でクルクル弄りながら――

「杉山君……ちょっと……いいかな?」

 と、上目遣いで話しかけるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『新作です……!』
↓のタイトル名をクリックしてください

数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました

『数々の告白を振ってきた学校のマドンナに外堀を埋められました』5月23日1巻発売!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
数々1巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』8巻発売決定です!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊び6巻表紙絵
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  


『迷子になっていた幼女を助けたら、お隣に住む美少女留学生が家に遊びに来るようになった件について』コミック2巻発売中!!
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★ 
お隣遊びコミック2巻表紙
  ★画像をクリックすると、集英社様のこの作品のページに飛びます★  

― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ