第61話 液体エーテルと移住者
万能素材エーテルさん
液体エーテルについてはなんとなくわかったものの、それが何にどう作用するのかについてはわからなかった。
もっと調べるべきだよね?
「液体エーテルって具体的に何がどうなるんですか?」
「水で薄めればそれだけで魔力回復ポーションにもなりますね。放っておくと精霊が自然発生するようにもなるので注意が必要です。あとは……。世界樹を育てるのにいい環境と言えますね」
ハーンさんの言葉を聞いてボクは驚いた。
まさか精霊も生まれるなんて。
「主様。液体エーテルは生命の海や天上の水とも言われています。私たちの世界にもあるので管理はお任せください」
頼れるミレさんがそんな提案をしてくれる。
さすがミレさんだ。
「じゃあ後程お願いします」
「わかりました」
ミレはそう言うとフェアリーノームたちに指示を出しに離れた。
「遥はこの世界、そしてあっちの世界をどうしたいのですか?」
唐突なハーンさんの問い。
あっちの世界はまだ周辺しか知らないんだよね……。
「できるなら、今拠点がある場所一帯を管理して、代理を置きたいです。それから移住希望者を探しに世界を巡ったり冒険もしたいです」
あっちの世界はまだまだ何も探索できていないのだ。
「なるほど。では……。大神殿に働きかけてあの一帯を保護地としてもらいましょう。そうなると、管理者は現聖女となるかと思いますが」
ボクたちが唯一使える伝手は大神殿だけだ。
どのくらいの影響力があるかはわからないけど。
「聖女様にはあったことはないですけど治められるならいいのではないでしょうか? どちらにしてもあの一帯とこの世界に住む人は選ばないといけませんから」
選ばれた人があの一帯に住み、その後この世界へ渡ってくるという構想を練っている。
特権階級という意味ではないけど、優秀でも居場所のない人とかを率先して集められればと思っている。
とはいえ、優しいだけの人や力を貰った途端に偉そうにする人や復讐に走る人は必要ない。
ほしいのはあくまでも、普通の人でもいいので悪徳に走らない人や優秀だけど不遇な人なのだ。
もちろんスラムの孤児や孤児院の孤児も歓迎するつもりだけど。
「神域に住む人は決めているんですか?」
「はい。精霊、妖種、神族、そしてボクの眷属を住まわせるつもりです」
ひどい話かもしれないけど、神域こそ本当の意味での特権階級なのかもしれない。
ここはとことん便利にするつもりだ。
簡単に言ってしまえば、神域は便利にしつつ、新世界のほかの都市はそれなりに便利にして発展を期待する。
もともといた異世界はこちらからある程度の物資は流すものの、独自の発展を期待したいといったところか。
「ふふ。あっちの世界はほどほどですか」
ハーンさんは少しおかしそうに笑う。
「あそこはお爺様の世界ですし、ほかの世界から人が来て無双したりしたいっていうならそれでもいいですけど、ボクが便利にさせる理由はちょっとないですね。だったらあっちもこっちも冒険して、その成果でボクの周りとこの世界を便利にするほうが断然いいです」
あっちの世界には申し訳ないけど、あっちは勝手に発展してください。
「そうですね。この世界が発展したら日本とは違う発展の仕方になるでしょう。機械類は同じようにできるでしょうけど」
ボクの目標が決まった瞬間だった。
この世界の強みはいろんな世界と繋がれることだ。
たとえばお母さんの世界とももうすぐ繋げる予定だしね。
日本からの移住者もそのうち募集したいけど、法律的にどうなのかわからないのでお母さんに丸投げしようかな。
「なんだか楽しみなってきました」
「液体エーテルの地底湖の件が片付いたら世界樹でも育ててみましょうか」
「それはあとで教えてください。ハーンさん」
今言われてもいっぱいいっぱいになりそうだったので、少し後回しにする。
「その代わり、神域に僕の研究室を用意していいですか?」
ハーンさんが研究室を持ちたいと言い出した。
気に入ったのかな?
「いいですけど、どうしてですか?」
「神が世界を作るとき、色々な面白さがあるので毎回確認しているんですが、ここは今までより断然面白そうでしたので」
「ふむふむ。もっと面白くなりそうなものを見つけてみますね」
「期待しています」
ハーンさんはそう言うと、柔和にほほ笑んだ。
この世界のデータを見ようと思えばみられるけど、実際に探検したほうが楽しいよね?
「そういえば、遥は知的生命体の発生を許可していますか?」
「いえ、今はしていないですね」
そういえば人類まだいらないと思って何もしていなかったっけ。
「龍族だけでも用意しておくといいですよ。あとで僕の世界から親子を移住させますよ」
「あ、ありがとうございます。ボクも探してみようかなぁ……」
ハーンさんの世界から龍族の移住者が貰えそうなので、ボクも個人で龍族を探してみようと思った。
「そうですね。それならあっちの世界にも龍族はいるので、龍族の子を捕まえるか従属させて移住させるといいでしょう。親も一緒ならなお完璧ですね。僕の世界の龍族は【魔法龍】なのでちょっと毛色が違うんですよ」
「へぇ~……。魔法龍、強そう」
ボクが龍族を作るなら何になるだろう? 狐龍とかはいないし、妖龍ってのも怪しそう。
混沌龍とかも怪しそうだし……。
う~ん、悩む。
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