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episode1-5 初めてのポーション

ライナスさんから手渡されたポーションをまじまじと見つめる。

三角フラスコのような瓶に透明感のある黄緑色の液体が入っている。

見た目はメロンソーダだと思えば飲めそうだが、問題は臭いと味だろう。


「あの…、俺、ポーションを初めて飲むんですけど、どんな味ですか?」と、ライナスさんの顔色を伺うように聞いてみると、彼はクスクスと微笑し、「そこまで苦くないですよ?小さな子供でも飲めるように色々改良しているので…。まぁでも、結局は薬ですので。あんまり美味しいものでは無いかもです。美味しすぎて飲みすぎても身体に良くないですから。」と言う。


再びポーションへと視線を戻し、ゴクリと唾を飲み込む。

思いきって瓶のコルクを抜き取り臭いを嗅いでみると微かにリンゴのような匂いがした。

この匂いなら飲めると思い、意を決してポーションをイッキ飲みする。


(あ、甘い!!!果物の爽やかな甘さでも、スイーツの甘さでもない!これは、なんとも人工的な甘さだ…。甘さの後に口に残る苦味…。苦いというより、渋柿でも食べた後のような後味だ。)


ゴクゴクと喉を通っていくポーションはまるで、とろろのような少し粘りけのある喉ごしだ。


おそらく300ml程入っているであろうポーションを最後まで飲みきり口元を手の甲で拭う。すると、すぅーっと身体の痛みや気持ち悪さが引いていき、長年の社畜人生で溜まりにたまった疲労すら消えていくようだ。


「はい、シゲさんお疲れ様です。最後まで飲みきれましたね。お体の調子はどうですか?」


「いや…。驚くほど効いているみたいです。腹の痛みも気持ち悪さも全くありません…。」


「それなら良かったです。また調子が悪くなったら店まで来てくださいね?」


「あの…、薬代って…。」本当にライナスさんには申し訳ないのだが、俺は今、日本円しか手持ちにはなく、"メリー"と言う通貨は持ち合わせていない。このままでは無銭飲薬だ。


「お代は結構ですよ。初めて来店して下さったお客様には、僕の薬を信用してもらえるようにお金は頂いていないんです。その代わり、僕の薬を気に入ってもらえたらまた来て欲しいですけどね。あ、だからと言って調子悪くなって欲しいと言うわけではないですよ!健康なのが一番ですから!」と、微笑む彼は薬師の鑑のようだと思った。


初めて会った時、子供だからと言って正直信用していなかった自分が恥ずかしくなった。


「それでは、シゲさんお大事に~。」

「あ、はい。ライナスさん、今日は、本当にありがとうございました。」




薬屋を後にした俺は、ガストさんが「シゲ!俺の家で夜飯でも食って行かねぇーか?」と提案してくれたため、有り難く夕食を御馳走になることにした。



「あそこが俺の家だ。」とガストさんが指差した方へと視線を向けると、レンガ造りで平屋の可愛らしい雰囲気の家が見えた。


庭には、畑や様々な草花が咲いており、全く知識の無い俺でも、手入れが行き届いているのが分かる。


まさかガストさんがこんなに可愛らしい家に住んでいるなんて思わなかったですよ…という気持ちでガストさんの方へ視線を戻すと、彼は少し気恥ずかしそうに「…まぁ、言いたいことは何となく分かるんだが、嫁さんの趣味でな…。」と言った。


あのガストさんが言葉にせずとも俺の言いたいことが分かると言うことは、おそらく色んな人に俺が考えていたような事を言われているに違いない。


家の中央に立派に構える大きな木製の扉を開けると、パタパタと足音が聞こえ、ブロンドの髪を後ろで結った、スタイルの良い綺麗な女の人が出迎えてくれた。


「お帰りなさい!お父さん。えっと、……隣の人は?」


「ただいまフローラ。こいつはシゲって名前だ。外の国から来たらしくてな、あまりこの国について詳しく知らねぇーようだから、色々と教えてやってくれるか?」


「ええ!もちろんよ!!よろしくね?シゲさん!」


「こ、こちらこそよろしくお願いします…フローラさん。」眩しいくらいの笑顔を向けられた俺は、思わずたじろいでしまった。


こんなことを言うと会社の同僚にボロクソ言われてしまいそうだが、こんなにも綺麗な女性を見るのは生まれて初めてだった。


「そういえばティーナは何処にいるんだ?」と、キョロキョロ部屋を見渡すガストさんはまるで、飼い主を探す犬のようだ。


「お母さんなら、買い忘れたものがあるって言って急いで出ていったけど?」と言うと、ガストさんは焦ったように「な、何だと!?一人で行ったのか!?……俺も少し出掛けてくる。フローラは、シゲをもてなしてやっていてくれ。」と言い残し、どこかへ出掛けていってしまった。


フローラさんといきなり二人きりにさせられた俺はと言うと、緊張で彼女と目を合わせることが出来ず、ただただ目を泳がせていることしか出来ずにいた。


「ごめんなさいね、シゲさん…。お父さん、お母さんのこと好きすぎてちょっと過保護なの。まぁ、そのうち一緒に帰って来るからシゲさんも家の中に入って?」


「は、はい。お邪魔します…。」



次話、明日12時投稿予定です。

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