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episode1-2 絶体絶命

「……ワイバーン?」


ワイバーンって、ゲームとかファンタジーの世界に出てくるあのワイバーンのことか…?


思わず笑いが込み上げてくる。

「ふっ…、ふはっ!ワイバーンって!そんなもん実在する訳ないのに?避難もしくは討伐準備をだって?これは面白案件だなぁ…。友達に話したらその年で厨二病かよって、引かれるかもしれないなぁ。」


口元を押さえ笑いを堪えていると、少しだけ風が強まるのを感じた。

何だか天気も悪くなってきたし、もしかしたら雨が降ってくるかもしれないと思った俺は、休憩を終え、再び歩き始めた。


歩いている間、再びバーッバーッバーッとスマホが鳴る。

スマホを起動させるものの、表示されるのは同じ内容の通知だけだ。


「なんだってこんな内容の通知がくるんだ?ゲームアプリの通知ならまだしも…。これはマップだ……ぞ?」

マップを開いた俺は、マップ上に先程まで無かった赤い丸印がウロウロと動いている事に気付いた。


「なんだ。この丸印は…。どんどんこっちに近付いてきてるじゃないか…。」


どんどんと、その赤い印が俺の現在地へと近付いて来て、あと少しで印が重なると思った時、一際強い風が吹いたと同時に、頭上からグギャグァ"ア"ア"ア"ア"ア"と、耳をつんざく爆音が響いた。


あまりにも強い風圧に地面の砂が舞い上がり目に入ってくる。

目の痛さに涙目になりながらも恐る恐る上空へと視線を向けると、そこには、ここにいるはずもない、まるでゲームの世界からそのまま飛び出てきたのではないのかというほどの、大きくそして気高く美しいワイバーンの姿があった。


深紅の鱗に覆われた身体、鋭く尖り湾曲した漆黒の爪。

空を覆うように広い翼を力強く羽ばたかせる姿に思わず息を飲む程目を奪われた。


今すぐ逃げなければいけないのに、まるで金縛りにあったかのように足がピクリとも動かない。


早く逃げようともがいている間に、そのワイバーンは助走をつけるように一旦更に上空へ飛行していくと、そのままの勢いで俺の方へと降下して来た。


やっとのことで一歩足を踏み出せたかと思ったら、地面から飛び出していた石に躓き、思い切り転倒してしまった。


死にたくない。


こんなよく分からない所でなんて死にたくない。

こんなところで死ぬならもっと自分のやりたいことをやっておけばよかった。


頭の中で走馬灯のように今までの記憶がザアザアと流れていく。

最近仕事が忙しくてなかなか実家に帰れなかったけれど、父さん母さん元気かなぁ…。


親より先に死ぬなんて親不孝だって怒られそうだな…。

俺が死んだら部屋も引き取って貰わないとな…。

…そういえば自室のパソコンって電源消したっけ?

電源消えてたとしても意味がないんだった。

パスワードを長く設定したせいで覚えきれずにメモした紙をモニターに張りっぱなしだった…。

え?じゃあ今、誰でも俺のパソコン開けるってこと?

え…?死んじゃ駄目なやつだ…。


そうだ…。俺は…。俺は、こんなところで死んじゃだめだ。

俺は!

「パソコンに保存してある秘蔵ファイルを消すまで死ねないんだぁ"ぁ"あ"あ"あ"あ"!!!」


目をぎゅっと閉じ、両腕で頭を守るようにうずくまる。

こんなことしてもあのワイバーンから身を守れるとは思えないが、今の俺には、ワイバーンに対抗できるほどのものを持ち合わせてはいなかった。


頭上のワイバーンがグギャァ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"と咆哮し、死を覚悟した瞬間、ダッダッダと、勢いよく地を蹴る音が聞こえた。


そっと目を開けるとそこに銀色の鎧を全身に纏った男が一人、大きな剣を構えワイバーンと対陣していた。


ワイバーンとその男は、相手の出方を探るように睨み合う。

ピリピリとした緊張感が俺にまで伝わってきて、思わずゴクリと唾を飲み込んだ。


男がジャリッと足を踏み込んだ瞬間一気にワイバーンとの間合いを詰め斬りかかる。鉄同士がぶつかり合うような音が響き、その衝撃でワイバーンの鱗がパラパラと剥がれ落ちていくのが見えた。


たとえ鱗が剥がれ落ちようとも、全く怯む様子のないワイバーンは、からだの鱗より鋭く刺々とした鱗で覆われた尻尾をブンブンと勢いよく振り回し攻撃している。


男はそれを軽々と躱していき、その立ち回りからは余裕すら感じさせる。


「すごい…。」男の華麗な剣捌きに思わず感嘆する。


先程から尻尾を振り回し続けていたワイバーンは、徐々に疲れてきたのか動きが鈍くなってきている。


ゴォ"ァ"ア"ア"ア"ア"ゴォ"ァ"ア"ア"ア"ア"と、口から灰色の煙を吐きながら男に噛みつこうとしたワイバーンの下に潜り込むようにスライディングした男は、ワイバーンの鱗が剥がれ落ちて柔らかい肉質をめがけ剣を突き刺した。


グギャ"ァ"ア"ア"ア"ア"ア"ア"と、咆哮したワイバーンは、翼を広げすぐさま上空へと飛び立つと、逃げるようにしてその場を去っていった。


逃げていったワイバーンを確認した男は、剣を背中に背負った鞘に収めると、俺の方へと近付いてきた。


「ハハッ!大丈夫か?ぼうず。」と兜越しに渋いハスキーボイスが聞こえてきた。その男は、腰を抜かしている俺に手を差し伸べ、ぐいっと勢いよく引っ張り起こしてくれた。



次話、本日18時投稿予定です。


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