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episode2-3 美味しい朝ごはん

フローラさんに渡された、胸元が大胆に開いた開襟シャツのような形で、開いた胸元を調整する紐が、靴紐のように交差している黒い服と、帆布位丈夫そうな少しざらっとしたような生地の茶色のチノパンのようなパンツを身に纏い、外へ向かう。


玄関扉を開けると、机と椅子の準備をしているフローラさんとティーナさんがいた。


「おはようございます。」


「おはようシゲさん!その服似合ってるわねぇ!フローラの手作りじゃない!」と、言うティーナさんに「ちょっと!お母さん!」と、恥ずかしそうにティーナさんの肩をパシパシ叩くフローラさん。


「あら、別に言っても良いじゃない。上手く出来てるわよ?」と、彼女は微笑ましそうに笑う。


「これ…フローラさんの手作りなんですか!?売り物かと思いました!すごいですね!サイズも丁度良いですし…。」


「実は、シゲさんの着ていた服を参考に作ってみたんですけど、時間があまりなかったので、所々雑になっちゃって…。」と、恥ずかしそうに俯く。


「ありがとうございます。大切に着させてもらいますね…!」と、お礼を言うと、彼女はとても嬉しそうに微笑んだ。


机と椅子の準備を手伝うと、「朝ごはんの準備は、私達がやるから。シゲさんは、ガストを呼んできてくれる?多分裏庭に居ると思うから、宜しくね!」と、ティーナさんに頼まれたので、裏庭へと向かった。



裏庭へ行くと、ブゥンッブゥンッと、剣を構え勢い良く素振りをするガストさんがいた。


「ガストさん!そろそろ朝食が出来ますよ!」と、少し大きめの声で呼び掛けると、「おう!呼びに来てくれてありがとなぁ!シゲ!あと、500回素振りしたら食べに行くから、先に行っててくれていいぞ!」と、視線だけこちらに向け言う。


何時から素振りをしているのか分からないが、あと、500回という数字に驚愕する。俺なら10回素振りするのもやっとだろう。ガストさんが手に持っている大きな剣がどれ程の重さなのかは分からないが、自分の身長と同じくらいの長さがあり、その幅は30cm程あるだろう。それを、あんなにも軽々と…。ガストさんは絶対に敵に回したら駄目な人だと、改めて思った。


真剣に素振りをするガストさんの邪魔は出来ないと思いその場を後にした。


キッチンで調理をしているティーナさんに「ティーナさん。ガストさんは、あと、素振りを500回してから来るそうです。」と、報告すると「あらあら…。そんなに張り切っても一角獣は、逃げないのにねぇ…?」と、少し困ったように笑った。


「え!?一角獣が出たの!?やった!本当??」と、何故か大喜びするフローラさん。


モンスターが出現して、こんなにも喜べる女性は中々いないだろう。流石ガストさんの娘と言ったところか…。


「あの…。ちなみに一角獣って、どんなモンスターなんですか?」と、恐る恐る聞いてみると、「美味しい!!」と、キラキラ瞳を輝かせ言うフローラさん。


あまりにも予想外な返答に思わずブファッ!!と、吹き出してしまった。


「ちょっと!笑わないでよシゲさん!!もうっ!」と、ぷくっと頬を膨らませ、ふて腐れる彼女。


「すみません…くっ……ふはっ…。ん"ん"…。いや~、まさか、どんなモンスターか質問した回答の第一声が味についてだったので、あまりにも予想外というか可愛らしいというか……。」


「絶対面白がってますね?シゲさん…。」と、ジト目を向けられ思わず目線を反らす。


「はいはい。二人とも、じゃれてないで料理を外に持っていってくれる?」と言うと、俺に寸胴鍋を手渡す。


ティーナさんから受け取った寸胴鍋を、庭に設置した大きなテーブルの中心へと置く。


俺の後を続くようにして、フローラさんが食器類、ティーナさんが主食のモンロックと、ルゴラのお茶が入ったガラスのティーポットをテーブルに置いていく。


朝食のセッティングが終わる頃、ガストさんが素振りを終わらせ戻ってきた。

昨夜と同じように、全員が席に着くと、手を繋ぎ目を閉じる。ガストさんの祈りの言葉が終わると、グラスを掲げ、朝のお祈りが終わる。


そしたら、お待ちかねの朝食の時間だ。


ガストさんが、寸胴鍋の蓋をパカッと開けた瞬間、スッと、トマトに似た酸味のある爽やかな香りを追うように華やかなスパイスの香りが鼻を抜ける。

その食欲をそそられる匂いに堪えきれず、俺の腹が音を立てた。


寸胴鍋に入った料理を、ガストさんが一人一人の皿へと順番によそう。


受け取った皿には、透明感のあるオレンジ色の色鮮やかなスープに、細かく刻んだ野菜と、丸いソーセージのような物が浮かんでいる。


「わぁ!凄く美味しそうだ!ティーナさん、これは、何と言う料理ですか?」


「これは、"ボラゾック"と言って、野菜を細かく刻んで"ルゾーイ"の実と一緒に煮込んだ料理よ。いつもは、お肉は入れないのだけれど、昨日のワイバーン肉が余っていたから、それで"ワームド"を作ったのよ。」


知らない言葉が多く困惑した俺に、ティーナさんが詳しく説明してくれた。


ボラゾックと言う料理に入れる"ルゾーイの実"は、トマトのように酸味があり、リンゴ程の大きさの鬼灯のような形の実で、季節関係無く沢山の実を付ける果樹から取れるらしい。


ワームドは、ソーセージのような食べ物で、肉を腸詰めした時の見た目がモンスターのワームにそっくりだった事から"ワームド"と、名付けられたらしい。


ワームと聞いた時、真っ先に浮かんだのはウネウネとした虫だったのだが、どうやらそのモンスターは、とてつもなく長い蛇のような形で、およそ住宅5軒分の長さにもなるらしい。しかもそれは、まだ幼体らしく、成体にもなると、一山越える程の長さに至るそうだ。


その話を聞き、出来ることならワームに遭遇したくはないと切に願う俺だった。


ボラゾックを木のスプーンで掬うと、陽の光でスープがキラキラと輝いて見える。それを、ゆっくりと味わうように口へと運び入れると、爽やかな酸味が鼻を抜け、ルゾーイの実の酸味を優しく包み込むように、ワームドから出た肉の深いコクが舌を魅了する。


(ああ…。うまいなあ…。昨日食べたワイバーンのポルネージュも濃厚で美味しかったけれど、こっちはさっぱりとしている中に、食材本来の旨味を感じる。)


スープに浮かぶ、一口で食べきれるサイズのワームドを、スッとスプーンで掬い、口の中へ運ぶ。そのツルリとした表面を歯でプチっと食んだ瞬間、パァンッ!と、口の中で弾けるように肉汁が口全体に広がった。


(なんだこれは…!新食感だ…。まるで…これは、肉汁爆弾だ…。)


口内に広がる濃厚な肉の旨味を追うようにして、ハーブ系のさっぱりとした爽やかな香りがフワッと香る。


ひと口ふた口とスープを掬う手が止まらない。

あっという間に皿の底までたどり着き、少し口寂しくなる。


すると、「シゲさん、おかわりはいかが?」と、ティーナさんが嬉しそうに微笑んだ。



次話、本日18時投稿予定です。

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