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episode2-2 覚めない夢

「……ぃ。…お~い!」


誰かが呼んでいる声がする。

目を開き周囲を確認すると、そこは、俺が、異世界に迷い込んだ時にいた、あの草原だった。


遠くから誰かが走ってくる。あれは…。


「フローラ…さん?」


パタパタと小走りでこちらに駆け寄る姿は、何て可憐なのだろう。


「おーい!シゲさ~ん!」ブンブンと、大きく手を振り俺の名を呼ぶ彼女の方へと俺も駆け寄る。


「シ~ゲ~さんっ!」と、元気よく俺に抱きついて来るフローラさんをしっかりと受け止める。


「どうしたんですか、フローラさん…。こんなところまで来て…。」一旦身体を離し、彼女の顔を伺う。


「もうっ!シゲさん!今日は、私と一緒にお部屋の掃除をしようねっ!って言ったじゃない!忘れるなんてひどい!」といい、ぽこぽこと俺の胸を可愛らしく叩いてくる姿が可愛らしい。


「すみません、なぜか、いつの間にかここにいたというか…。忘れていた訳ではないんです。許してください…フローラさん。」と、彼女の手を取り懇願するように見つめると、彼女はぷくっと頬を膨らませた後、ニヤリと、不適な笑みを浮かべた。


ぞぞぞぞと、背筋に悪寒が走る。


何故だかとてつもなく嫌な予感がし、後ろに後ずさる。


「ねぇ…シゲさん…。なんで、逃げるの?」と、ニコニコしながら距離を詰めるフローラさんの目は笑っていなかった。


「い、いや~。べ、べべべつに逃げていませんよ~!あっはは、はは…う"っ…。」ジリジリと、後退りしていると、後ろに何もなかった筈が、何かに背中がぶつかり、これ以上後ろに下がることが出来ない。


恐る恐る後ろを振り返ると、「ガ、ガストさん…!?いつの間に背後に!?」全く気配がなく気が付かなかったのだが、俺の後ろには仁王立ちしたガストさんがいた。


「おう!シゲ!おめぇーさん…こんなとこで何してんだ?まさか!!フローラと逢い引きでもしてたんじゃねぇーだろうなぁ!?」


ワナワナと、怒りで震えているガストさんに「そ、そんな訳無いじゃないですか!!」と、焦りすぐさま否定する。


「ひ、ひどい!シゲさん!!私とは、遊びだったのね…!」と、涙ぐむフローラさん。


(な、なんだこのカオスな状況は!?何もしていないのに状況がどんどん悪化していく!!)


「てめぇ!!シゲ!フローラを泣かせやがって!覚悟は出来てるんだろうなぁ!!歯ぁ食いしばれ!!」と言うとガストさんは、俺を軽々と持ち上げ、物凄い勢いで俺を砲丸投げのようにブンッと遠くに投げ飛ばした。


「う"ぇ"っ!!!ちょちょちょっ!!!やべっ!!」俺は、美しく弧を描くように飛んでいく。


天高く飛んだのも束の間、徐々に俺は、地面へと吸い込まれるように高度を落としていく。


(死ぬ死ぬ死ぬ!!!)


落下まで残り数メートル

死を覚悟した俺は歯を食い縛る


あ……死ぬわ…。


ズシャア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"

「う"ぁ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"!!!!」


バッと勢い良く起き上がる。はぁ…はぁ…と、息が乱れ、額から冷や汗が伝い落ちる。


辺りを見渡すと、俺が独り暮らしで借りていたアパートの自室ではなく、ガストさんの家の空き部屋だった。


「くそ…。夢なら覚めてくれ…。」


俺のか細く弱りきった声は、静かな部屋に溶け込むように消えていく。

夢から覚めても、まだ夢の中に居るような。これが現実だと認めたくない自分がいる。


コンコンッと、部屋の扉をノックする音が聞こえ、そちらへと目を向け「はい…。」と、返事をする。


「あの…。シゲさん…?今、大きな声が聞こえたけれど、大丈夫?」と、心配した声音のフローラさんの声が聞こえた。


「あ…煩くしてしまい、すみません…。俺は、大丈夫です。」


「ならよかった!あの…シゲさん用の着替えを持って来たんだけど、今、部屋に入っても大丈夫?」こちらの様子を伺うように、遠慮がちにそう言うフローラさん。俺は、ぱっぱと服の乱れを整えると、「あ…はい。大丈夫です。」と、答えた。


ゆっくりと開けられた扉から、エプロンを着けたフローラさんが、綺麗に畳まれた服を両手に抱え入ってきた。


「シゲさん…。本当に大丈夫?物凄く顔色が悪いですよ?」と、フローラさんは、心底心配した表情で俺の顔を覗き込むと、そっと俺の額に手を当て、自分の体温と比べている。


「…っ。あ…えっと、変な夢を見ただけなんです…。体調が悪い訳じゃないので大丈夫です。急に環境が変わったので、もしかしたら疲れていたのかもしれないです。」


「うーん…。」と、顎に手を当て考える素振りを見せたフローラさんは、何か閃いたように「あ!」と言うと、「シゲさん!今日は、外で一緒に朝ごはんを食べませんか?」と、俺に微笑みかけた。



次話、明日12時投稿予定です。

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