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Prologue.正と逆

お待たせいたしました。

第三章:覚醒編 前半

幕開けです。


 辺り一帯に生い茂る新緑の森。

 天から優しく降り注ぐ陽の光は、葉の隙間から零れ、地上を暖かに照らす。


 鏡のように透き通る湖畔の水面は煌めき、水の中では小魚たちが優雅に泳ぐ。


 小鳥のさえずり。

 谷川のせせらぎ。

 草木のざわめき。


 大自然が織り成す、様々な憩いの音色たち。


 その中に。


「……今日も、静かだ」


 ザッ、ザッ、と。

 土と雑草を踏む足音が混ざり込む。


 長く尖った両耳を持つ男が、森の中をゆっくりと歩く。

 

 男が向かう先。

 そこには、広大な森林の中でも一際大きな樹があった。


 樹齢何百年も経つその大木は、地中にしっかりと根を這わすと、男の前で堂々と(そび)え立ち、その姿は神々しく、見た者に畏怖の念を感じさせるほど。


 男は大樹を見上げ、静かに微笑む。



 ”生命の樹”


 異世界「アレット」に生息する生き物全てが、生きていく上で欠かせないマナを唯一生成する存在。

 

 男が大樹に向かい、手を合わせる。


「今日もこの世界をお守りくださり、ありがとうございます」


 深く、丁寧に。


 頭を下げ、感謝の意を伝える。


「……よし。集落へ戻ろう」


 黙祷を終えた男は顔を上げ、来た道へ戻ろうと大樹に背を向けた。


 その時だった。


「っ!」


 突如、生命の樹から眩い光が溢れ出す。


「な、なんだっ!?」


 男は驚愕の声を上げたと同時、あまりの眩しさに両腕で顔を覆い、目を瞑る。

 大樹から放たれる輝きは止まることなく強まると、辺り一帯を白色の世界に染めていく。 そして。


「…………」


 暫しの間。

 

 ようやく大樹の輝きが収まり、男が顔を上げる。

 目の前で起きたことに、男は先ほどまでの穏やかな表情を失っていた。


「い、今のは……」


 男の頭の中に過ぎるはただ一つ。


「生命の樹の転生……」


 男は血相を変え、駆け足でその場から離れる。


「はぁ……はぁ……! 早く、このことをリフィータ様に伝えなければ……!」


* * *


 魔族領内 魔族城


「シュクルが……負けただと?」

「は、はい……」


 光一つ無き暗闇の中、一人の男の前に跪くゲーデュ。


 目の前の者に対し、酷く顔を強張らせるゲーデュは、決して顔を上げることなく、ただひたすらに大理石の床を見続ける。


「……まぁよい。奴が生きてようと死んでいようと、我々の計画に支障はない。だが」


 男は踵を返し、ステンドガラスで出来た窓から顔を覘かせ、外の景色を見る。


「先ほど貴様が話していた、”白金に輝くエレマ体”。その使役者は始末したほうがいいだろうな」

「か、畏まりました……」


 男がゲーデュを一瞥する。

 対してゲーデュは相も変わらずに、全身から汗を流し、下を向いたまま声を震わせ返事をする。


 その時。


「ワタシが行こうかしら?」


 妖艶な声が暗闇の奥底から現れ、建物中に響き渡る。


「オーキュノスか」


 男が声のした方向を見る。


 雲が晴れ、月明りが窓から侵入する。

 そして、月光に照らされるは一人の女。


「お前には別にやってもらうことがある。だが」


 不敵に笑う女に対し、男は淡々と話を続ける。


「最中、仮にその者と相見えた時は……殺せ」


 男が命を下す。


「”生命の樹”を、滅せよ」



ここまで読んでいただきありがとうございます。

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