第28話 “別視点”
※この回は間章となり、主人公とは別視点での話になります。
「ただいまーー……って、誰もいないか」
期末テストが近いため、最近はテスト作りに忙しく、家に帰る時間も遅くなっていた。
手洗いを済ませ、カバンを置くために私は自分の部屋のドアを開けた。
「あれっ……?」
十二月の夜となると、日が暮れるのは早くなり、外はすでに真っ暗だ。
そのため、電気がない部屋は当然暗くなるはずなのに……
ひとつの点が、暗闇の中で光を放っている。
「──私、パソコン点けっぱなしで出ちゃったっけ?」
どうやら光の正体は、部屋にあるパソコンの電源ボタンだったようだ。
暗闇からでも電源が入っているのを知らせるよう、ボタン部分だけが光る設計となっている。
部屋の灯りを点けて中へと入り、よく確認してみると、ノートパソコンは開いた状態で机の上に置かれていた。
「昨日の夜に使ったけど……確か、朝は電源は消えていたはず……」
おかしい……電源の消し忘れだけならまだしも、ノートパソコンを折り畳んですらいないのだ。
誰かが……私のパソコンをいじった!?
「もしかして、泥棒!?」
やだ……空き巣にでも入られた? どうしよう……
まだ空き巣と決まったわけではないが、寝室なり、押し入れなり、何者かが潜んでいる可能性もある。
私は恐怖のあまり震えていた。せのせいで、うまく体を動かすことができず、少しバランスを崩した。滑った足が、軽く机にぶつかる。
「──あっ……この画面って……」
今の振動により、省電力モードに入っていたパソコンが反応し、暗かった画面が明るくなる。
画面には、私の書いた小説が開かれていた。
私は画面に映っている文章を、どことなく眺めた。
「何これ!? どうなってるの!?」
思わず私は、自分の目を疑う。
なぜなら、私が書いた覚えのない文章が、そこには書かれていたからだ。
「──誰……? 誰がこんなイタズラを? やっぱり空き巣が……」
とりあえず、私は書かれていた文章を読んだ。
その文章は、私が途中まで書いていたところから、先の部分が追加される形で書かれている。
「えっ……何、この内容……作田さんが……私とデートしてる? しかも、私の家で……」
何なの、これ……イタズラにしては、話の流れが綺麗すぎる。
私の書いた小説の内容、世界観をよく把握している……不自然なところが、一切存在しない……
私は追加されたと思われる箇所から、今書いてある文章の最後まで読み続けた。
最後の文には、こう書かれている。
『今も見てるんだろ? 監視してるんだろ? 犯人は、あんたなんだろ? 外の世界にいる、相澤美幸さん!』
犯人……? 外のって……これって、もしかして私のこと? 私に向けたメッセージなの?
小説の中にいる、相澤美幸ではなくて……この世界にいる、相澤美幸!?
「何……? 何なのこれ! 小説の中で、話が勝手に進んでいると言うの!? キャラクターが、作田さんが……作者の手を離れて、自由に動いているとでも言うの!?」
“キャラクターは生きている”
私がそう考えた瞬間、パソコンから強い光が放たれた。
そして、私の意識は、徐々に薄れていった。
※次回は、前回の第27話の続きからになります。




