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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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ソラノ村

 翌朝、トライデント三人組は早朝から市街地の中央広場に居た。

「はい。

 作業要員として来た人は、こっちに集まってください」

 彼方が、人を集めて点呼を取っている。

「これから名前を呼びますから、自分の名前呼ばれた返事をしてくださいね」

 集められたのは、ほぼフリーランサーズに所属している人たちで、あと別に少し、女子寮チーム(仮)の人たちも混ざっている。

 このうち女子寮チーム(仮)は、パーティとしての求心力がなく、本拠地である聖堂も失っているので、存続の危機に立たされている、ということだった。

 このままでいくと、構成員がそのままフリーランサーズに吸収され、自然消滅に至るだろう、と予測されている。

 ただ、この時点ではそこまで壊滅的なことにはなっておらず、残った人員もこうして日々の雑作業で細かくポイントを稼いでいた。

 この女子寮チーム(仮)は、オーバーフロー最終日に彼方の指揮下にあった関係もあって、ほとんどの人員が今回の仕事に志願している。

 どうやら彼女たちにとって、彼方はかなり評判のいい上官、であったらしい。

 まあ、ルックスも普通にいいいしな。

 と、恭介は思う。

 遥と彼方は、外見でいえばかなり整っている姉弟だった。

 恭介自身は地味な、特に特徴がない、いわゆるモブ顔であることもあって、三人で連れ立って歩いていると、一人だけ浮いている気分になる。

 とにかく、他の二人とは違って、自分が他人の視線を集める、というおぼえがなかった。

 特にコンプレックスとはなかったが、この姉弟と自分が、世間的な違った評価をされている、ということは、日頃から認識している。


「それじゃあ、ぼくは穴埋めにいってくるから」

 点呼を終えた彼方は、恭介と遥にそういって、去って行く。

「あとは、打ち合わせした通りに、お願いするね」

「おう」

 恭介は、片手をあげて答えた。

「任せて」

 遥も、片手をあげてそう応じる。

 二人とも、昨夜から今朝にかけて、彼方から箇条書きの手順書を受け取って、みっちり工程について説明を受けている。

 今朝は、拠点の内部でロードローラーの運転も、少し練習していた。

 ゆっくりと確認しながらおこなえば、まず失敗しない。

 と、思う。

 恭介と遥は、集まった人たちに指示をして、工事現場の周囲に「立ち入り禁止」のバリケードを築く。

 出来合いの立て看板などを並べただけの、簡単なものだった。

 それから、恭介は魔法の杖を取りだし、施行する場所の地面を大きくえぐった。

 倉庫の中に、その場所にあった土などを収納するのと同時に、一定の高さになるよう、魔法でざっくりと整えたのだ。

「はい、これから、ここの砕石を入れまーす!」

 遥が大きな声でそういって、倉庫の中から細かく砕けた石をざーとその穴に注ぐ。

 足りない時は、マーケットから購入して、注いだ。

 一定の高さまで埋まったら、倉庫からランマーをいくつか取り出し、交替で砕石を圧縮する。

 何回かこれを繰り返したあと、今度は熱いアスファルトをその上に置き、スコップやトンボで平らに均してからランマーで叩き、最後にロードローラーで何度もその上を往復した。

 箇条書きにすると簡単な作業であったが、実際にやるとなると重労働だった。

 しかし、今、この場に居る人員は、男女問わず相応にレベルアップしているので、この程度の肉体労働では、あまり苦にならないようだった。

 恭介は遥も小まめに休憩を取り、作業員たちの負担が大きくならないように努めた。

 通行の妨げにならないように、広場を四分割して順番に作業を進めていたのだが、想像していたよりも順調に進む。

 全員が、レベルアップの恩恵で、フィジカルな能力がかなり底あげされている影響か。

 と、恭介は思う。

 体力的に余裕があれば、疲労も溜まりにくくなる。

 そうなると、心理的にもかなり楽になる。

 実際、工事に協力してくれた人たちは、あまり疲れた様子を見せず、気軽に割り振られた役割をこなしている。

 一度、生徒会執務室のある建物から結城紬が出て来て、全員に冷たい飲み物と簡単なおやつを差し入れてくれた。

 フリーランサーズの人員が多数参加していることと、それに、目の前で工事しているわけで、なにもしないわけにはいかなかったのだろう。

 昼前にすべての作業が終わりそうになり、終わりが見えてきた頃に、彼方が帰ってくる。

「一応、全部通れるようになっている。

 と、思う」

 帰ってくるなり、彼方は恭介たちにそういって、目の前の建物に入っていく。

「ちょっと、生徒会の人たちに確認して貰いにいってくる」

 彼方が入ってからいくらも経たないうちに、同じ建物から小名木川会長が出て来て、少し周辺を歩いて中央広場の状況を確認。

 そのあと、

「ここまでしてくれれば、十分だ。

 このまま、解散していいぞ」

 といってくれた。

 恭介たちは工事に参加してくれた人たちを集めて、一人一人に約束の報酬を支払う。

 ランマーやロードローラー、その他の機材は、生徒会が別件で使うというので、当面はそちらに貸し出すことに決まっている。

 多分、そのまま生徒会で買い取ることになるだろうと、彼方はいっていた。

 中央広場と同時進行で、この中央広場から各ダンジョンまで通る道を整備している最中なのだ。

 今日は、進路上にある瓦礫や建物を撤去する作業に重点を置くそうだが、明日以降、場合によっては整地する必要がある場所も、出て来るかも知れない。

 と、そう予測されていた。

 そうした工事用の備品は、拠点に持ち帰ったとしても、現状、あまり使い道がない。

 この市街地で活かせるのであれば、それに越したことはなかった。


 三人が中央広場に集まり、

「さて、用事は終わった。

 帰ろう」

 とした、その時。

「ちょっと待ってください!」

 電動アシスト自転車に乗った女子が、三人の前に姿を現した。

「ここに居ましたか。

 あやうく、取り逃がすところでした」

 酔狂連のマネージャー、桃木薫だった。

 取り逃がす、って。

 と、恭介は内心で思う。

 別にこっちは、逃げるつもりも理由も、ないのだが。

「連絡くれればいいのに」

 彼方も、桃木にそういう。

「いえ、今日は、こちらで工事をしておいでだと、そう聞いていたので」

 桃木は、荒い息をつきながら、そういう。

 どうやらここまで、かなり急いできたようだ。

「まさかわずか半日で、工事を終えてしまうとは」

「単純に、舗装するだけの工事だったからね」

 彼方が答える。

「地面の下の配管を取り替えるとか、そうした作業もあると、もっと時間がかかると思うけど。

 それで、今日のご用件は」

「あ、はい。

 昨日、うちの者からお聞きと思いますが、このたび、そちらの拠点内にうちの工房を置かせていただくことになったようで」

「それも、まだ正式に決まったわけではなくて。

 あくまで、そういう話も出ている、というレベル」

「ああ、はい。

 こちらも、そう聞いています」

 桃木は、こくこくと頷く。

「それで、ですね。

 正式に契約を結ぶ前に、詳しい条件などを詰めるため、一度、そちらの拠点の方に同道してもよろしいでしょうか?」

「どうする?」

 彼方が、恭介に意見を求める。

「別に、断る理由はないよなあ」

 恭介は、いった。

「マネージャーさんがうちの拠点を見て、考え直してくれるかも知れないし」

 詳しいことは、拠点まで移動をしてから、ということになった。


「ここが、トライデントの拠点ですか」

 拠点に着いた桃木は、拠点内を一通り案内されたあと、そう感想を述べる。

「確かになんにもないけど、土地だけは余っていますね」

「魔法少女隊も、別棟に住んでいるけど」

 恭介はそう答える。

「まあ、うちの拠点ですね。

 あっちのパーティは、なにかというとこっちの判断を頼ってくるんで」

「自分で考えるよりもあなた方に任せる方が確実と、そう考えているのだと思います」

 桃木は、そういう。

「信頼関係の一種、だと思いますが。

 というか、たいていの他のパーティも、あなた方ほど的確な判断は出来ないでしょう。

 なにせ、生徒会会長の相談役だし」

「なに、それ」

 恭介は反射的にそういっていた。

「相談役とか、聞いていないんだけど」

「最後のオーバーフロー終了後、長々と会長と今後のことを語り合っていたと、そういう評判になっていますけど」

 桃木は、そういって首を傾げる。

「それ、事実無根の噂話、でしたか?」

「事実無根、ではないかな。

 うん」

 しぶしぶ、恭介は認めた。

「すくなくとも、そういう噂が立つ原因となる出来事は、確かにあった。

 認めたくはないけど」

 しかし、どこまで尾ひれがつくものか。

 とは、恭介も思う。

「まあ、それはともかく」

 桃木は、話題を変える。

「これほど見事になにもなく、だだっ広いのは、好都合です。

 どこからどこまでをお貸しいただけるのか、詳細な条件を詰めていきましょう」

「あ、そう来ちゃうんだ」

 と、彼方が呟く。

「詳細を詰める前に確認しておきたいのですが、こちらの拠点、ですか。

 地名、固有名詞は、どう表記しましょう?

 固有名詞がないと、契約書なども起こしにくいのですが」

「地名」

「固有名詞」

 トライデントの三人は、顔を見合わせた。

「そんなこと、考えたことなかったな」

「今まで、必要なかったからねー」

「トライデント村、とか?」

「ええ。

 それ、ダサいし」

「そうかなあ。

 じゃあ、ソラノ村でいいんじゃね?」

 恭介が提案すると、宙野姉弟は、

「え?」

「え?」

 と、驚いて硬直する。

「それとも、カナタ村にしておくか?

 彼方、お前、ここの領主様ってことになっているわけだろ」

「カナタ村、賛成」

 さっと、遥が片手をあげる。

「ねーちゃん!」

 彼方は慌てて訂正した。

「ああ、もう!

 それじゃあ、ソラノ村でいいです!」

「了解しました。

 こちらの拠点代表者は、宙野彼方様。

 それで、間違いはございませんね?」

「間違いありません」

 恭介は、厳かな口調で頷く。

「パーティの代表はおれだけど、こちらの拠点の代表者は宙野彼方です」

 それくらいの分業はして貰わないと、恭介としても納得がいかない。


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君主だしなぁ
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