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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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実験

 続いて、風魔法、土魔法、水魔法と実験を続けていく。

 風魔法は一瞬で出現して消えた巨大竜巻に全員が絶句し、土魔法ではやはり地面が突然五十メートルくらい隆起しては同じくらいの深度で陥没した様子に全員が絶句し、水魔法では突如出現した直径百メートルクラスの巨大なつららが瞬時水に解凍されて消えた様子に全員が絶句した。

「いや、なんというか」

 絶句した全員を代表して、最後に小名木川会長が感想を述べる。

「いくらなんでもやり過ぎだろ、これは。

 まともなコメントが出来なくなる、っていうか」

「それで、ジョブは?」

 彼方が冷静な声で確認してくる。

「順調、というか、予定通りに増えたね」

 恭介は平然と答えた。

「それぞれ、風撃士、土撃士、水撃士、だって。

 このネーミング、少し安易じゃないか?

 で、最後に、エレメンタルシューターってジョブが出て来た。

 ええと、すべての属性魔法攻撃を極めた者のためのジョブで、属性魔法を適宜切り替えて攻撃することが可能です、だって」

 酔狂連の人たちは、例によって車座になって「とんでもないエネルギー量が」とか、「魔法の定義を再考せねば」とか、恭介にはよく理解出来ないことをごちゃごちゃ話し合っている。

「そのエレメンタルシューターってジョブに、転職するの?」

「もうちょっと、検証してみないとなあ。

 おれとしては、狙撃手よりも射撃性能やステルス性能がさがったりしてたら、かえって使いにくいわけで」

「ちょっといいですか、馬酔木くん」

 彼方と恭介がそんな会話を続けていると、武器職人の岸見が話しかけてきた。

「ご所望の武器の、試作品が出来ているんですけど。

 いい機会だから、この場で試射して貰えるかな?」

「いいですが」

 恭介は即答した。

「随分と仕事が速いですね」

「技術的には、魔法の杖の発展形。

 っていうか、応用だからね」

 岸見はそういって頷いた。

「それよりもむしろ、こちらがあまり銃器に詳しくないんで、外観とかデザインの調整に苦労したくらいかな」

 そんなものなのか、と、恭介は思う。

 恭介に、技術的な素養はない。

 それが魔法という「わけのわからない」代物絡みだと、なおさら詳細が想像出来なかった。


 恭介は岸見から手渡された銃っぽい外観の武器を、しげしげと眺めた。

「プラモデルに見えますね」

 素直に、そう感想を述べる。

「玩具っぽいといってくれてもいいよ」

 岸見はそう答える。

「作った自分でも、そう思うし。

 でも仕方がないだろう。

 こっちは、本物の銃なんて見たことがないんだから」

 なんなら、お貸ししましょうか、といいかけて、恭介はその言葉を呑み込む。

 必要だと考えたら、当の岸見自身が、マーケット経由で参考するために購入していたはずだ。

 第一、重要なのは、外観ではなく、性能である。

「ここにあるのがセーフティで、このグリップの上部にあるのが、出力調整用のレバーになる。

 これは、右に捻れば出力が大きくなり、左に捻れば出力が少なくなる」

 そうした細々とした注意事項を伝えたあと、岸見は小走りに駆けていき、何本かの木製の的を置いた。

「四属性プラス無属性で、合計五本の的を用意した」

 すぐ恭介のそばに戻ってきた岸見は、そう説明してくれる。

「最初は、的の中心を狙ってくれ」

「精密射撃ですね」

 恭介は頷いて出力調整のレバーを一番左に捻る。

 そして、銃を構えて、

「これ、自動追尾性能、つけているでしょ。

 あの弓と同じく」

 と、呟く。

「わかるかね?」

「まあ、狙撃手って、そういうものですから」

 答えたあと恭介は、自分のステータス画面を開いて自分のジョブを「エレメンタルシューター」に変える。

 再び銃を構えてから、

「感触としては、狙撃手と同じかあ」

 と、呟いた。

 つまり、命中補正スキルはそのまま継承している、ということだった。

「もう撃ってもいいですか?」

 恭介が確認する。

「撮影、準備オーケー」

「センサーも、オーケー」

 生徒会と酔狂連から、それぞれにGOサインが返ってくる。

 恭介はそのまま、立て続けに引き金を引く。

 横に並んだ的の中心部に、次々と穴が穿たれていった。

「はい、いったん止めて」

 六つの標的すべての中心部に穴が空いたところで、岸見がそう合図をする。

「カメラとセンサー班、標的に近寄って、どんな状態になっているのかしっかり確認して」

「凄え。

 みんな、ど真ん中」

「火とか風でも、こんなにきれいに打ち抜けるもんですね。

 土や水は、実質質量弾になるから、まだ理解出来るんですけど」

 少しして、標的の方からそんな声が聞こえてきた。

「銃の調子は?」

「ええと、大丈夫、だと思います」

 岸見に問われて、そういいかけた恭介は、手元を確認してから、慌てて訂正した。

「あ。

 銃身というか本体部分が、少し熱くなっている気がするんですけど。

 これは、正常な状態ですか?」

「ちょっと見せてみて」

 岸見は恭介から銃を奪い、

「確かに熱くなっているねえ、うん」

 と頷く。

 そのあと、

「これは、出力調整の影響で、正常といえば正常な反応、かな。

 ただ、こちらが君の魔法をちょっと見くびっていたから、その分、余計な負荷がかかっている状態。

 これ、あとで調整し直すよ」

 と、説明してくれた。

「もう少し、つき合って貰うよ。

 今度は、あの的をすべて吹き飛ばす感じで撃って貰えるかな?」

「的自体を吹き飛ばす感じに、ですか」

 恭介は、加減について少し考えた。

 最大出力で撃ったら、オーバーキルになりそうだな。

 考えた末、恭介は出力レバーを少し右に捻ってから、銃を構える。

「用意はいいですか?」

「こっちはいつでも」

「やっちゃってください」

 恭介は立て続けに標的五つをきれいに吹き飛ばした。

 少し、標的の下の地面に凹みが出来た以外は、おおよそ予想通りの威力だった。

「これ、自分が狙われたら、骨も残らないな」

 直後にぽつりと呟かれた常陸庶務の言葉が、妙に恭介の耳に残った。

 とりあえず、今回の実験はこれで終わった。


 銃の調整するという岸見に、恭介は銃を返す。

「ちなみにこの銃、他の人にも使えるんですか?」

「もちろん、使えるよ」

 何の気なしに口にした恭介の疑問に、岸見は即答する。

「ただ、君ほど巧みに、この威力で使える人はいないと思う。

 現段階では、思いつかないっていうか。

 あの魔力弓と同じく、別の人が使っても威力とかはずっと劣るはず」

 そんなもんか。

 と、恭介は思う。

 魔法関連のことは、本当にわからない。

 少し、属人性が強すぎるのではないか。

 見ると、酔狂連から来た新顔の二人は、いつの間にかテーブルと椅子を出して、テーブルの上にノートパソコン二台を置いている。

 そこで、画面を覗き込みながら、なにやら専門用語を交えて口論していた。

「馬酔木君、っていったっけ?

 ちょっと来て貰える」

 そのうちの一人、背の高い方から手招きをされたので、そのテーブルに近寄る。

あたいちゃんから聞いていたけど、君、とんでもない魔力持ちねえ」

「そういわれても」

 恭介は、正直な心境を伝えた。

「実感が、まるでないんですよ。

 そもそもおれ、魔法とか魔力とのこと、まったく理解していないし」

「ああ、それは、わたしらもまったく同じ」

 その女子生徒はそういって、大きく頷いた。

「わたしらの世界にはない概念でありエネルギー、だからねえ。

 まだまだ体系的に理解するのには、根本的な部分からデータが足りないっていうか。

 ただ、これまでの感触でいうと、この世界も基本的にはわたしらの世界の同じで、その表面にぺらっと、魔法関連のなにがしが覆い被さっているのかなあ、とは、感じる。

 うまく表現出来ないけど、存在としてのレイヤーが違う、っていうの?

 でないと、突然、こんな大きなエネエルギーがどこからともなく出て来るの?

 ってのが、説明できないのよ」

「魔法関連は別レイヤー、ですか?」

「そうそう。

 いや、そう考えた方が、こちらの精神衛生上よろしい、ってくらいのニュアンスなんだけど。

 魔法関連以外を除くと、この世界でもだいたい、わたしらの世界と同じような物理法則で動いているっぽいんだよね。

 熱力学の第二法則をはじめとして。

 魔法とかが関わってくると、その途端に例外が多くなり過ぎて、こっちの常識では理解出来なくなるっていうか」

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