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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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来訪者たち

 日が暮れる前に、彼方は生徒会と酔狂連の人たちを伴って拠点に帰ってきた。

 生徒会からは、小名木川会長と横島会計、常陸庶務の三人。

 酔狂連からは、リーダーの三谷と武器職人の岸見、鍛冶師の八尾、それに、あと二人、今回はじめて見る顔が混ざっている。

 初見の二人は、まだ紹介されていない分析者と研究者って人かな。

 と、恭介は当たりをつけた。


「ここまで歩いてきたんですか?」

 恭介が訊ねると、

「それしかないだろう」

 小名木川会長が、代表して答える。

「それにしても、ここまで来るまで、道が悪かった。

 今後のために、チャリか原付きくらいは揃えておくべきかな」

「足はあった方がいいと思います」

 恭介は、無難な返答をしておく。

「市内を巡回するだけでも、結構時間がかかるはずですから」

 生徒会も酔狂連も、これまで相応にレベルアップしているはずで、これくらいの距離を歩くくらいではさして負担でもないはずだ。

 ただ、必要な時間は、徒歩とそれ以外とでは、大幅に違ってくる。

「それにしても」

 周囲を見渡して、横島会計が感想を述べた。

「随分と立派な囲いですね。

 難攻不落っぽい、っていうか」

「初日に、彼方のやつが土魔法で作りました」

 恭介は答えた。

「まだ門も作っていないし、中にはなんにもないですよ」

 未だに、空堀に細長い板を渡してその上を通っている有様だった。

 全員が渡って中に入ったのを確認して、恭介は細長い板を倉庫にしまった。

「本当だ。

 なんにもねえや」

 常陸庶務がぽつりと呟いて、そのあと恭介と目が合って、慌てて視線を逸らす。

「いや、失礼」

「なにぶん、こっちに住み始めてからまだ日数が経っていませんものので」

 恭介の方は、そんなことは気にしていない。

「実際、なんにもありませんからね。

 おれたちが寝泊まりしている小屋は、こっちになります」

 しばらく先導して、歩いて行く。

「え?」

 しばらく歩いたところで、横島会計が目を見開いた。

「なに、あれ」

「給水塔ですね。

 今日、魔法少女隊の人たちが設置したばかりです」

「そんな物を作る必要、ある?」

 今回が初対面の、酔狂連の女子が恭介に確認した。

「水なら、魔法でいくらでも出せるでしょ」

「魔法で出した水をあそこに溜めて、ですね」

 恭介は説明した。

「洗濯機を回します。

 そのためのものです」

「はぁ!」

「はぁ!」

「はぁ!」

「はぁ!」

 来訪者の、女子の声が重なった。

「洗濯機、あるの?」

 酔狂連のもう一人の初対面女子が、恭介の袖を引いて訊ねて来る。

「ありますねえ。

 使えるようにしたところです」

 恭介は答えた。

「設置したのは魔法少女隊ですから、使いたければそちらにご相談ください」

 恭介の立場としては、そう答えるしかない。

「あちらのテントは、お風呂場ですね。

 女子寮チーム(仮)がオークションに流した物を、最終的にこちらが買い取ったとは聞いています」

 横島会計が、指さし確認をしつつ、恭介に訊ねて来る。

「あちらの鉄筋は?」

「建築中の、おれたちの住居ですね」

 恭介は答えた。

「もっと早く作業を進めたいところなんですけど、なにかと用事が入って中断することが多いです」

 その他、貯水池や地下に埋めた浄水槽などについても、問われるまま丁寧に説明する。

「お前ら、快適な環境を作るためには、手間暇を惜しまないタイプだったんだな」

 一通りの説明を聞いたあと、小名木川会長は感想を述べる。

「市街地から離れた場所に、拠点を作りたがるわけだ」

「市街地内部よりも、生活環境、よいですよ。

 ここのが。

 下手すると、何段階も」

 横島会計も、小声でぶつぶつと呟いている。

「わたしたちの努力って、なんなの?」

「百名以上を相手にしている生徒会の人たちと、身内十名以内のことだけを考えていればいいおれたちとでは、根本的な部分から条件が違うと思いますが」

 恭介は、そう諭しておく。

「なんといっても、マンパワーでならそちらが優位なんですから、一度弾みがつけばこっちよりもずっと快適な環境を構築することが出来ますよ」

 この辺は、わりと恭介の本音でもある。


 酔狂連の人たちが強く要望したので、魔法実験を先にすることになった。

「ちょっと歩きますが」

 恭介は先導して、昨日実験した、奥の場所へと移動する。

 遥や彼方、魔法少女隊の四人も、当然のようにぞろぞろとついてきた。

「ここが、あの大きな音の」

 直径百メートルほどの焼け焦げた場所が見えるところまで案内すると、訪問者たちは目を見開いて驚いていた。

「ここまで大きいとは、思わなかった」

 酔狂連の五人は、輪になって仲間うちでなにやら忙しく意見を交わしはじめた。

「あの、ちょっといいっすか?」

 生徒会の常陸庶務が、恭介に確認してくる。

「この実験、後学のために記録しておきたいんですけど」

「ドローンで撮影、ってことですか?」

「そういうことになります」

 恭介はちらりと彼方に目線をやり、彼方が頷いたので、

「どうぞ、ご自由に」

 と返答した。

「あ、こっちも!」

 酔狂連の女子が、恭介に確認してくる。

「センサーとかいくつか、設置したいんだけど」

「どうぞ、ご自由に」

 恭介は同じ返答をする。

「ただ、他の属性魔法でも、効果が出る範囲が同じになるとは限らないので。

 その焼け焦げた円から、少し遠目に設置した方が、センサーが無駄に壊れないと思います」


 生徒会と酔狂連の準備が整うのを待って、実験開始になる。

「ええと、昨日は雷属性だったから」

 昨日と同じ杖を倉庫から出しながら、恭介は呟く。

「次は、火属性でいいかな。

 それでは、いきますからね。

 はい、ファイア」

 周囲を確認してから、恭介は軽い口調で唱える。

 呪文、というより、もはや魔法起動のためのキーワードだった。

 これ、別に言葉にしなくてもいいんじゃね?

 とか、恭介は思っている。

 ともかく、恭介がその言葉をいい終わると同時に、唐突に巨大な火柱が出現した。

「大きさは昨日の雷と同程度、だね」

 彼方が、冷静な声で指摘をする。

「恭介、もう十分だから、それ、消して」

「あ、ああ」

 恭介が、「消えろ」と念じると、それだけで巨大な火柱が消失する。

 なんの前触れもなく、唐突に。

「いや、なんというか」

 小名木川会長が、頭をゆっくり振りながら、感想を述べた。

「実際に目の当たりにすると、クルものがあるな」

「杖ひとつでこれが出来るとなると」

 横島会計は、難しい顔をしてそんなことをいい出す。

「この人一人だけで、市街の全員を相手に出来るのでは?」

「味方が強いのなら、それに越したことはないでしょ」

 常陸庶務が、脳天気ないい方をする。

「幸いなことに、トライデントの人たちは悪い人ではない。

 なにより、今の炎、最高の撮れ高ですよ!」

「それで、恭介」

 彼方が静かな声で確認してくる。

「ジョブは、増えてる?」

「増えているな」

 恭介は、自分のステータス画面を確認しながら答えた。

「予想通りというか、昨日と同じように。

 今度は、炎撃士、だって」

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