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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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行動原理

 彼方は中央広場舗装の件で、一度そちらに戻るという。

 周辺住人への説明やら必要な労働力の手配など、なにかと用事が残っているのだという。

 それらはまた、生徒会とのやり取りとは別だしなあ。

 と、恭介も納得し、遥と二人で拠点に戻ることにした。


 二人してマウンテンバイクに跨がり、しばらくしてから、

「帰ったらなにする?」

 と、遥に問われた。

「勉強」

 恭介は即答した。

「は?」

 遥は、露骨に不機嫌な声を出す。

「なに、それ」

「だから、勉強。

 学校の。

 しばらくバタバタして、手つかずだったし」

「こんなところにまで来て、それはないんじゃない?」

「いつ帰れるようになるか、わからないし。

 それに、ずっとこっちに居ることになったとしても、基礎的な知識は必要だよ」

 恭介は、淡々と答えた。

「情報は必要な時に学べばそれでいいかも知れない。

 けど、その情報の正誤を判断するのにも基礎的な知識が要る。

 学校の教科書は、その基礎的な知識の宝庫だし」

「キョウちゃんって、そういうところあるよね」

 遥はため息混じりにそう返した。

「真面目、っていうのとはちょっと違くて。

 無駄に堅実っていうか、融通が利かないっていうか」

「無駄に堅実でいいよ、おれは」

 恭介はいった。

「先は長いし、おれはまだガキだし。

 なんといわれようとも、今は基礎を固める時期だよ」

「異世界転移物の主人公が、絶対いわないセリフだよね、それ」

 遥は、呆れている。

「せっかく異世界に来ているんだからさ。

 もっとこう、はっちゃけてもいいんじゃない?」

「考えようによっては、もうすでにかなりはっちゃけているような気もするけど」

 恭介は、そう答える。

「でもなあ。

 おれにしてみると、元の世界もこちらの世界も、不自由さという点ではそんなに変わらないっていうか。

 おれたちを縛るルールが違っているだけで、見かけよりも自由度はそんなにない、というか」

「ああ」

 遥はいった。

「それは、あるか。

 他のプレイヤーの動きが遅いのは、なんでも自分で調達する習慣がないから、か」

「おれたちとは違って、食事からなにから世話してくれる人が居たからな。

 他のプレイヤーたちには」

 恭介はそういって頷く。

「その点おれたちは、元の世界に居た時とノリはそんなに変わっていない、っていうか」

「確かに」

 遥も頷く。

「ポイントとかマーケットとか、こちらの世界独特のルールはあるけど、わたしら三人の行動原理自体はそんなに変わってないや」

「この世界は魔法も独自のルールはあるけど、別に物理法則が根本から変わっているわけではないからなあ」

 恭介はのんびりとした声でいう。

「理数系の知識は元の世界のものがそのまま使えるようだし。

 その他の科目についても、知っておいて損はないと思うよ」

「まあ、キョウちゃんがブレない男だということは、理解出来た」

 遥はそういって、その話題を打ち切った。


 拠点に戻ると魔法少女隊の四人は給水塔を建てたあとで、洗濯をしながら休憩を取っているところだった。

「おかえりー」

「師匠たちー」

 恭介たちの顔を見るなり、四人はそれぞれに声をかけてくる。

「今日はお風呂沸かしますからねー」

 市街地での作業が増えて、こちらのペースは確実に落ちているものの、生活環境は着実に整っていく。

 人数からしてまるで違う市街地と比較しても意味はないのだが、こっちはこっちで今後も少人数なりのフットワークを活かしていくべきだろう。

 恭介は四人に手を振って挨拶を返したあと、すぐに自分たちの住処に戻る。

 薪ストーブを点火して、そのまま土間の椅子に腰掛け、自分のマーケット画面を開いた。

 教科書、参考書、ノート、筆記用具。

 タブレットは、とりあえずまだ買わなくてもいいか。

 必要な物を購入し、テーブルの上に広げていく。

「わ」

 少し遅れて入って来た遥が、テーブルの上を見て驚いている。

「本気で勉強する気だ。

 この子」

「最初からそういってるじゃん」

「いやまあ、今さら止めないけどね」

 遥はそういって、テーブルの対面に座る。

「あ。

 お茶でもいれる?」

「お願いします」

「はいはーい」

 遥はそういって、カップなどの準備をはじめた。


「そういや、マーケット経由で接続料払うと、ネットにも繋がるみたいね」

「そうなの?」

「そうなの。

 でも、制約はあって、わたしらが転移してきた時点までにネット上にあった情報にしか、アクセスは出来ないみたい」

「おれたちがこっちに来てから向こうでなにがあったのか、知ることは出来ない、と」

「そうそう」

 遥が頷く。

「スマホゲーとかアニメとか特定の配信目当てで接続料支払った子たちは、詐欺だ金返せって騒いでいたみたい」

「そっちには、別に興味はないけど」

 恭介はいった。

「おれたちの集団失踪が、元の世界でどういう扱いになっているのかは、少し気になるかな。

 その後のニュースとかにアクセス出来たら、それも確認出来たんだけど」

「ラノベとかフィクションでは、こういう時、どういう扱いになるの?」

「古典的なのは、異世界にいった主人公が、たとえば魔王を倒すとかのメインイベントを達成すると、元の世界の転移した時点に自動的に送還される、ってパターンがあるね。

 ただこれは、最近は少なくなっていて、今はどうなんだだろう。

 確か、異世界にいった人間なんか最初から存在しなかった、という風に、元の世界自体が書き換わる作品は、あったな。

 そのまま素直に行方不明扱いとかが、多いのかな」

 恭介自身もラノベにはあまり詳しくはないのだが、本自体を余り読まない遥よりは、そちらの方面に詳しい。

「興味あるんなら、帰ってから彼方に訊いてみるといいよ。

 あいつ、おれよりはラノベとかにも詳しいから」

「いや、そこまで強い興味があるわけでもないんで、別にいいけど」

 遥はそういって、手をぱたぱた振る。

「それで、キョウちゃんはどう思っているの。

 この世界に来て、よかった?」

「どうなんだろうな」

 恭介は考え込んだ。

「元の世界に居た時も、いいとか悪いとか、そういうことあまり考えたことなかったし。

 その場で必要なことをピックアップして、淡々とこなしていくだけ、っていうか。

 さっきもいったけど、周りのルールが変わっても、おれ自身の行動指針はあんまり変わっていないっていうか。

 元の世界でもこっちでも、苦労の種類が違うだけで、苦労そのものが減ったり変わったりするわけでもないし」

「なんか、キョウちゃんらしいお答えだ」

 遥はそういって、笑った。

「どこへいっても変わらない、っていうか」

「そうかな」

 恭介は、首を傾げる。

「そうかもな」


『ちょっと、生徒会と酔狂連の人たちと相談したんだけど、いっそのこと今日中に済ませちゃわないか、っていわれてさ』

 さらに時間が経って、そろそろ夕食の支度をするかな、という頃に、彼方から通信が入った。

『例の、魔法実験の件。

 どっちの人も早く見たいっていっているし、こっちにしても後回しにしておく理由はないし。

 今日これから、連れていってもいいかな?』

「まあ、いいけど」

 結構な人数になるな、とか思いつつ、恭介は答える。

「それで、具体的には総勢で何名になるんだ?

 なんだったら、全員分の夕食用意しておくけど」

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