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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
ダンジョン篇

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朝の情景

 翌朝、割と早めに目をさました彼方はのそのそと起き出し、薪ストーブの火をおこしてから、顔を洗う。

 それから、自分用にインスタントコーヒーをいれ、それを啜りながらマーケット経由で入手した土木、建築関係のマニュアルに目を通す。

 とりあえず必要なのは、屋根の修理と舗装に必要なノウハウなわけだが、彼方としても元からそんな知識があるわけではない。

 ない知識ならば、自分で能動的に学ぶしかないのだ。

 ときおりメモなどを取りながらそうした文献を読み込んでいると、姉の遥が起きて来た。

 珍しいな。

 と、彼方は思う。

「おはよー!」

「はい、おはよう」

「ちょっとシャワー浴びてくるねー!」

 遥は、妙に機嫌がいい。

 そして、恭介の前に起き出してくるのも、極めて珍しい。

「ああ」

 諸々の条件を考えた上で、彼方は、ある結論に達する。

「ついに」

 やったかあ。


 宙野遥と馬酔木恭介との関係を説明するのは、難しい。

 恋情、という要素は皆無ではないものの、そこだけに注視すると、他の重要な要素を取りこぼす。

 彼方がはじめて恭介に出会ったのは、何年前だったか。

 かろうじて物心がついたような、そんな幼少期になる。

 その時の恭介は表情のない子で、遥に手を引かれていた。

 いや、今だって決して表情豊かというわけではないのだが、当時は目にも光がなかった。

「誰、この子」

「ともだち」

 幼少時の彼方に、遙はそういって、屈託のない笑みを浮かべる。

 そのため、当時の彼方は、ひどく驚いたことをおぼえている。

 当時の遥は、今とは全然性格が違い、扱いの難しい子どもだった。

 気分屋で、頻繁にかんしゃくを起こし、そうでない時は、妙に冷めた目で周囲を見て、静かにしている。

 両親をはじめとした周りの大人たちも、そんな遥のことを扱いかね、距離を取っていたように思う。

 遥が今の遥になったのは、明らかに恭介とつき合いだしてからだった。

 どうしてか、恭介という子どもは、彼方自身と同じ年齢ながら、扱いが難しいはずの遥のことを、とてもよく理解出来たらしい。

 遥の方も、そんな恭介に全幅の信頼を寄せているようだった。


 遥が中学生になる頃から、二人の関係は少し変化した。

 いや、以前と変わらない部分も多かったのだが、それに加えて、男女の要素が濃厚になった。

 まず遥の方が、恭介から離れようとしない。

 その頃には、彼方の方も恭介の人格その他について理解が進んでいたので、そうなることも十分に理解出来たのだが。

 遥と彼方の両親は、この頃には別居しており、子どものことはだいたい放置していた。

 遥と彼方、それに恭介は、この時期から今に至るまで、三人で協力して、どうにかまともな学生としての生活を保っていたようなところがある。

 子どもに関心がなくなった両親は、金だけはこちらのいうままに払ってくれたが、それ以外はなにもしてくれなかった。

 両親はともに、家の外にそれぞれのパートナーを作っており、自宅に戻る頻度もめっきり減っていた。

 日々の食事や衣服の調達、学校との連絡など、だいたいは三人で知恵を出し合って、どうにか切り抜けた。

 この三人は、大人の社会に適応するための戦友である。

 そういっても、決して過言ではない。

 そんな環境だから、遥と恭介は、かなり前からほぼ毎晩のように同衾していた。

 ただし、恭介が頑固だったから、直接的な性交渉はなかった、の、だろう。

 と、彼方は推測している。

 恭介は、ある意味では遥と彼方以上に崩壊した家庭に生まれており、

「自分のような不幸な子どもは、これ以上増やさない」

 と、堅く決意をしている風だった。

 だから、子どもが出来るようなことはしてない。

 それ以外のことは、結構やっているのかも知れないが。

 その一線だけは、恭介は決して譲らないだろう。

 つまり、昨夜までは、ということだが。


「恭介」

 彼方は、二人の寝室をノックしてから、中に入る。

「はいるぞ」

 恭介は、ベッドの上、真新しいシーツの上で、膝を抱えて寝転んでいた。

 壁の方に、顔を向けて。

「あー」

 彼方は、珍しく、かけるべき言葉に迷う。

「ついに、やったか」

「やった」

 恭介は、短く答えた。

「昨日は、珍しく耐えられなかったんだ」

「ああ」

 彼方は、ため息混じりにいった。

「ねーちゃんが望んだことだから、それは。

 あまり気にするな」

 多分。

 と、彼方は推測する。

 遥は、くノ一に転職した上で、恭介を誘惑したのだろう。

「気にするよ」

 恭介は、そう答える。

「こんな場所で、子どもなんか育てられるわけがないだろう。

 まともな医者もいないんだぞ」

 どこか、ふて腐れたような口調だった。

「一度や二度、やったくらいじゃあ、子どもなんて出来ねーよ」

 彼方は突っ込みを入れる。

「ねーちゃんは、あれだ。

 恭介がどんどん先にいって、このままだと置いていかれるような気分になっていたんだよ。

 きっと」

 そうでないと。

 と、彼方は思う。

 恭介の機嫌を損ねてまで、このタイミングで、遥がこんな強硬策に出たのか。

 まるで、わからなくなる。

「おれが、ハルねーを置いていくわけないだろ」

 こちらに背中を向けながら、恭介はそんなことをいう。

「だから、さあ」

 彼方は、そんな恭介に言葉をかける。

「そういうことは、本人にいってやれって。

 いわなけりゃ、わからないんだから」

 まったく、この共依存バカップルは。

 肝心のところで、お互いのことを理解しようとしていない。

 間に挟まるこっちが、いい迷惑だ。

運営さんに怒られたら、この項、消します。

直接的な描写がないから、大丈夫だとは思うけど。

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― 新着の感想 ―
トカゲが大丈夫だったんだから大丈夫さ
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