表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/401

はじまりの終わり


 五日目、AM12:53。


 ユニークジョブ召喚術士、左内の召喚獣が巨大モンスターに取りつきはじめる。

 その多くは獣型で、その他に鳥型、虫型、二本足歩行型、と、種族もサイズも多種多様であり、なおかつ、その多くはプレイヤーたちにとって、見覚えがある姿だった。

 過去にオーバーフローによって対戦し、場合によっては倒した種類が、多く含まれていたからだ。

 そうした召喚獣が一斉に巨大モンスターに取りつき、それぞれの方法で攻撃する様子は壮観といえた。

 多種族混合の軍勢による攻撃、というか。

 これまで、左内は自分の召喚獣を大規模に使役したことがなかったというが、その理由は、

「仲間のプレイヤーと無用な衝突を起こしたくはないから」

 ということだった。

 仮に情報が周知されていたとしても、実際に生きて動いている召喚獣を見れば、たいていのプレイヤーは「モンスターである」と認識する。

 そのため、左内はこれまで召喚獣を少数でのみ、運用していた。

 今回は、ほぼすべての召喚獣を運用した、最初の事例となる。

 この召喚獣群の参加により、超大型モンスターの攻略は加速化した。


 五日目、AM12:55。


「ほらよ!」

 坂又は渾身の力を込めて、鉄パイプを巨大モンスターの体に突き刺す。

 健康な状態の体表に刺さることはなかったが、穴が空き、瘴気を吹き出す部分になら、鉄パイプも楽に刺すことが出来る。

「聖女様、お願いします」

「浄化!」

 こんなことをする目的は、巨大モンスターを体内から浄化するためだった。

 表面をちまちまと削るよりも、中身を消化していった方が効率よいのでは?

 という意見が出たので、試しにやっている次第である。

 巨大モンスターは悲鳴をあげて身をよじり、渾身の力を込めて坂又と結城紬を叩こうとあがく。

 しかし、その身はすでに結城紬のプロテクト結界によりがっしりと固定され、結城紬と坂又の周辺もプロテクト結界によって守られている。

 その結界をがんがんと殴られても、中の二人にダメージが通ることはなかった。


 五日目、AM12:56。


「こうなるとむしろ、哀れにみえるくらいだな」

 生徒会執務室の窓から眼下を望み、小名木川会長はそんな感想を口にする。

「一方的に、削られるだけじゃないか」

 巨大モンスターの反撃はほぼ封じられていた。

 攻略法が判明している以上、あとは時間の問題であり、プレイヤーが負ける目はほとんどない。

「他のプレイヤーたちも呼びますか?」

 小橋書記が確認する。

「こうなると、むしろ呼ばないままの方が不公正になるかと。

 なんでも、あのモンスター、一撃入れるだけで十万ポイント前後入るそうですから」

「こうなるともう、ボーナスタイムだな」

 小名木川会長は軽く息を吐いたあと、そう答える。

「アナウンスで、全員呼びつけてやれ。

 ボーナスタイムだ。

 あ、仲間のプレイヤーへの攻撃になりかねない行為はしないように。

 その点だけは、最初から注意しておいてくれ」


 五日目、AM12:58。


「ああ。

 これは、無理だわ」

 赤瀬が呟いた。

 目の前には、巨大モンスターにわらわらとプレイヤーたちが取りつく光景が展開している。

 召喚獣に関しては、

「死傷してもクールタイムをおけば再召喚可能」

 と左内がいっていたので、あまり気をつける必要がなかったのだが。

 この状況だと、魔法や銃撃など、遠距離からの攻撃は他のプレイヤーを傷つける可能性がある。

「ま、今まで、十分に稼いでいるけどね」

 今日だけで、魔法少女隊の面々はレベルを二十以上あげていた。

 トライデントの三人は、それ以上のポイントを稼いでいてもおかしくはない。

 この時点であせくせする必要もなく、むしろ、他のプレイヤーとの差が開きすぎるのもよくない。

 今日はもう、このままなにもしなくてもいいか。

 と、赤瀬は思う。

 あの大型で、今日のオーバーフローが終わるのなら、ということだが。


 五日目、AM13:00。


 奥村がようやく大型モンスターのところまで到着した時、そのモンスターはすでに虫の息で、いつ消失してもおかしくはない状況だった。

「くそ!」

 悪態をつきながら奥村は巨大モンスターに殺到し、かろうじて他のプレイヤーが群がっていない箇所、モンスターの尻尾に何度となく斬りつける。

 尻尾とはいえ、本体が巨大であるから太さが人の胴体ほどはあり、斬りつけるのに躊躇いは生じない。

 その箇所もまた、立派なモンスターの一部だ。

 と、奥村は内心でそう、自分自身を納得させようとした。

「いや、だから、吉良っちがふけた時、急いであとを追えばよかったんよ」

「ねー」

「ねー」

「ねー」

「お前らも必死になってステルスモンスター狩りやってただろ!」

 例によって好き勝手なことをいうSソードマンの女子組に対して、奥村はヤケクソ気味の反駁をした。


 この時の行動により奥村は他のプレイヤーより「尻尾斬り」の異名を奉られることになるのだが、それはまた後日の挿話になる。


 五日目、AM13:15。


『 CONGRATULATIONS!!


 オーバーフロー最後のモンスターの消失が確認されました。

 これにてチュートリアルの終了とさせていただきます。


 数日の調整期間のあと、次のミッションが開始されます。

 プレイヤーの皆様におかれましては、それまで、次のミッションに備え、十分な休養と取り準備を整えることを推奨します。』


 全プレイヤーの脳裏に、そんなメッセージが表示される。


「チュートリアル?

 ここまでが、チュートリアル?」

「なんだよ次のミッションって!

 ふざけるな!」

「いつになったら帰れるんだよ!」


 プレイヤーの反応は様々であったが、正確を期するなら、怨嗟ないしは罵倒的な内容が大半を占めた。

 元の世界への帰還を望む者が大半であり、その状態は、ある意味では正常であるともいえた。

 ほとんどのプレイヤーは、この望まない非日常生活を歓迎してはいなかった。

 仕方がなく、順応しようとする者は、いたにしても。


 五日目、AM13:17。


 彼方は中央広場の片隅に、倉庫から丸テーブルと椅子を出す。

 初日のオーバーフローあとと、同じように。

 姉の遥と恭介も、すぐに集まって来た。

 三人でカセットコンロなどを出し、お茶の準備をする。

「ええと、十時から三時間以上、やってたのか」

 恭介がいった。

「今日のは、長かったな」

「最後だからねー」

 遥が軽い口調で返す。

「次はなにやらされるんだろ?」

「さあね。

 個人的な希望としては、楽にクリア出来るミッションがいいかな。

 あとハルねー。

 上着、ちゃんと着て」

「ああ、はいはい。

 薄着でかなり汗かいちゃったからね」

「なんだったら、どこかでシャワーでも借りて汗流してくれば」

 彼方は提案する。

「生徒会の人たちに頼めば、断られることはないと思うけど」

「そら、断ることはないよ。

 この三人は、揃って今回の功労者だ」

 いつも間にか、テーブルのそばに小名木川会長が立っていた。

「こっちにしてみればお前らは問題児だが、それ以上に役に立つからなあ。

 こっちとしては、結構複雑な感情を抱いている」

「正直にいってくれますね」

 恭介は、頷いた。

「それで会長。

 今回は、なに用で?」

 これまでのつき合いで、多忙な生徒会がわざわざ声をかけてくるのには、相応の理由があると恭介は理解していた。

「まあ、用件は結構あるんだがな」

 恭介が倉庫から出した椅子に座りながら、小名木川会長はいった。

「真っ先に確認しておきたいことが、まず一件。

 宙野弟。

 お前さん、買った地所を、これからどうするつもりだ?」

「ああ、それですか」

 彼方は、そう応じる。

「生徒会で買い戻して、とかは?」

「出来ないわけじゃないが、あまり意味ないだろう」

 小名木川会長は、そういう。

「こっちとしては、所有権はそのままにして、そっちでなにか事業でも興して人を使ってくれると都合がいいだが」

「事業、ですか?」

 彼方は、怪訝な表情になる。

「この状況で、そんなものが必要ですか?」

「あのなあ。

 大半のプレイヤーは、お前らみたいに勝手に判断して動けないの」

 小名木川会長は、ため息混じりに説明してくれる。

「仕事を与えて賃金を支払い、この市街地内で完結するような経済圏の構築でもしなけりゃ、いつまで経っても分業が進まないし、プレイヤーの生活が安定しないの。

 もちろん生徒会でも、その手の頃身はやっているんだが、それだけでは到底足りないし。

 次のミッションまでどれくらいの間が空くのか、わからないしな」

「経済圏、ですか」

 彼方は視線を逸らした。

「そういうのぼく、全然向いていないかなあ、って」

「それでは」

 いつの間にかテーブルのそばまで来ていた結城紬が、彼方に提案して来る。

「せめてあの聖堂は、こちらに売ってくださいませんか?」

「売るのは全然構いませんが」

 彼方は即答した。

「あれ、今回のオーバーフローで、かなり壊れていますよ。

 あんなものを買って、なにに使うつもりですか?」

「改装して、本格的な銭湯にしようかと」

「売った!」

 彼方は即決した。

 相手は四回目のオーバーフローでモンスターを殲滅した聖女様である。

 当然、それくらいのポイントは余裕で持っている。


 恭介がふと視線を外すと、広場の中心部でうぃを先頭に、魔法少女隊とその他の女子も混ざって奇妙な踊りをしながら練り歩いている。

 次第にそこに合流する人数が増え、いつしか円陣を組んで盆踊りをしているような態になっていた。

 オーバーフローが終わり、ここでの生活が一段落したことで、気が緩んでいるプレイヤーも多いのだろうな。

 と、恭介は思う。

 たとえそれが、次のミッションがはじまるまでの、つかの間の休息であるにせよ。


「やあ」

 今度は、酔狂連の三和が声をかけてきた。

「すぐそこで、うちのメンバー総出で、素材の買取とアイテム販売の屋台を出しているんだ。

 時間がある時にでも寄ってくれると嬉しい。

 その時に、うちのメンバーを紹介するよ」

「ああ、あとで寄るよ。

 買い取りして貰いたい素材も溜まっているし」

「今日一日、日が暮れるまではやっているから。

 来た時、うちのメンバーを紹介するよ」


 休んで、次のミッションに備える。

 今の過ごし方としては、それが正しいんだろうな。

 と、恭介は思う。

「モルタルかなんかで埋めてもいいんですけど、いい機会だから、大きな甲羅を乗せて雨避けにしません?」

「だから、うちの建物で遊ぶなって」

 彼方は、いつの間にか小名木川会長と屋根の修理について、相談している。


『 告知:


 次のミッションは、ダンジョン攻略になります。


 市内十二カ所に出現するダンジョンを、全プレイヤーで攻略してください。

 最初にダンジョンを攻略したパーティには、豪華特典を用意しています。

 すべてのダンジョンを攻略したパーティには、システムになんらかの望みをかなえさせる特権を授与します。


 ダンジョンの設置が終わり次第、全プレイヤーにその旨を告知します。

 それまでの間、しばらくお待ちください。』


 恭介は目を見開いて、周辺に居た人々と目を合わせる。



〔チュートリアル篇、了〕

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ