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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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乱戦(九)


 五日目、AM12:31。


「達成率、八十四パーセント」

 筑地副会長は自分のシステム画面を確認し、静かな声を発する。

「まだ、終わっていないのか」

「ちーっす」

 どこからともなく、全身汗まみれ、長身の少女が姿を現す。

「まだ終わりじゃないんすか?

 じゃあ、さっき倒したやつの大きな杖、ちょっと貸して貰えませんかねえ。

 無理にとはいいませんけど、知り合いの魔術師に使わせる方が有効に活用出来ると思うんで」

「あ、はい」

 結城ただしは自分の倉庫から鹵獲品の杖を取り出し、遥に手渡す。

 結城ただしにとってこの遥は旧知の人物であり、過度に警戒する必要も感じなかった。

「さんくす。

 あとでご入り用でした、連絡ください。

 ことが終わったら、生徒会の人に渡しておきますんで」

 そういい残すと、遥はまた姿を消した。

「あのー、もしもし」

 黒い獣に乗ってきた少女が、獣に乗ったまま近寄って来た。

「無視されると、地味に傷つくんですけどー」

「あ、いや。

 そうですね。

 ご忠告、感謝します」

 筑地副会長がはっとした表情をしてから、その少女に言葉をかける。

「失礼ですが、お名前を頂いてもよろしいでしょうか?」

「吉良明梨、ユニークジョブ付与術士の」

 吉良は、拗ねたような表情になる。

「あんた、生徒会の人でしょ?

 レアなユニークジョブ持ちも把握していないわけ?」

「いや、面目ない」

 筑地副会長は、素直に頭をさげる。

「ご無礼の段は、平にご容赦のほどを。

 それで、吉良さん。

 わざわざここに来たということは、ご協力頂けると考えてもよろしいのでしょうか?」

「ヤバそうな予感がしたから、急いで駆けつけてきたんだけど」

 吉良は周囲を見回して、「納得いかない」という表情になる。

「ってか、すでにこの付近一帯、誰かがバフかけてない?

 全員の性能、二割以上増してるみたいだけど」

「あ、それ、ぼくです」

 聖堂の方から駆けて来た少年が、話に割り込む。

「新しいジョブの、効用のようで」

「新しい?

 上位職ってこと?」

「そうなりますね」

 彼方はあっさりと頷く。

「あ、この盾、使ってもいいですか?

 結構な特効がかかっているみたいだし」

 剣士=戦士タイプの個体が持っていた盾を見て、彼方はそんなことをいい出した。

「あ、ああ」

 筑地副会長は頷く。

「問題はない。

 と、思うが」

「あの、吉良さん、でしたっけ?」

 結城ただしが、吉良に声をかける。

「吉良さんは、付与術士っていってましたよね?

 テイマーではなくて」

「うん、そう」

 吉良は、あっさり頷く。

「この、動物は?

 暴れたりしないですか?」

「そこいらの人間よりよっぽど信用出来るよ。

 今は、左内くんの召喚獣だし」

「召喚獣?」

「左内くん、召喚術士だから。

 で、この子は、今日、召喚獣になったばかりのクァール」

「クァール?」

「くぁーって欠伸をする様子が可愛いから、クァール。

 たった今、わたしが名づけた」

「あ、はい」

 なぜだか、結城ただしは恐縮した様子で頷いた。

「それでこの子は、いっしょに戦ってくれるのですか?」

 結城紬が、吉良に問いかける。

「うん。

 多分、大丈夫なはず」

 吉良は、頷いた。

「左内くんも、おっつけ来るはずだし」

 ここで軽いエンジン音を響かせて、一台のスクーターが近づいて来る。

「間に合ったか」

 スクータから降り、そのままエンジンを止めてそのスクーターを倉庫の中に収納しながら、坂又満が挨拶する。

「妙な胸騒ぎがしてな。

 なんでもないんなら、それに越したことはないんだが」

「そこの吉良って子がいうには、これからなにかが起こるそうですよ。

 十中八九、新手の敵が出現する、ってところだと思いますけど」

 彼方が答える。

「坂又さん、この剣、使いますか?

 さっき倒した敵の遺物になりますが」

「一応、お借りしよう」

 坂又は彼方の手から直剣を受け取る。

「ロングソード、っていったところかな。

 剣士ほどにうまくは使えないと思うが、無手よりはましだろう」

「軽く鑑定してみたところ、バリバリに特殊効果ついてますから、きっとお役に立ちますよ」

 彼方は請け合った。

「あとは、この錫杖が残っているかな」

「あ。

 誰も使わないんだったら、それ、わたしに貸してくれない」

 吉良が、片手をあげる。

「一応、付与術士もその手のアイテムの効果があるようだし」

「そうなんですか?

 まあ、いいや」

 彼方は軽い口調でそういって、吉良に回復役らしい個体の錫杖を渡す。

「はい……重っ!」

 手渡された吉良は、その錫杖を一度取り落としそうになり、それから持ち直して、自分の肩に乗せる。

「皆さん、来ますよ!」

 結城紬が、珍しく切迫した声をあげる。

「思ったよりも大きいです!

 さがって!」

 全員がその声に従い、広場の中心部から距離を取った。


 五日目、AM12:37。


「大きい。

 それで……」

「悪魔だ」

「悪魔ね」

「悪魔にしか見えない」

 それぞれが、出現したモンスターについて似たような感想を漏らす。

「うん。

 座高が五メートルってところかなあ」

 盾を構えながら、彼方がそう評した。

「立ちあがったら、十メートルくらいはありそう」

「あぐらかいているしなあ」

 坂又も、意見を述べた。

「かなり太っているように見えるけど、あの肉のつき方、半分以上は筋肉と見た。

 ほどよく衝撃を吸収し、動けば機敏。

 肉弾戦にも強い体つきだな」

「毛皮に覆われていない部分は、びっしりと硬そうな鱗に覆われている。

 で、コウモリみたいな巨大な翼まで背中に生えていて」

「それに……」

「臭い!」

「臭い!」

「臭い!」

「臭い!」

「臭い!」

 全員の声が重なった。

 結城紬など、先ほどから涙目にながら、

「浄化!

 浄化!」

 と、繰り返している。

「なんというか、汚物溜めの臭いを凝縮して、硫黄の臭いをふりかけたような」

 とは、彼方のコメントになる。

「汚物は消毒です!」

 半泣きの結城紬が、珍しく語気を荒くする。

「早急に倒しましょう!」

「あ、皆さんにはバフかけておいたんで。

 わたしは、お邪魔だろうし向こうにいってますね」

 吉良は片手をあげて、そそくさと去ろうとする。

「あ、クアールくん。

 君はここに残って皆さんのお手伝いをしなさい」

 そういわれた黒い巨獣が、なんとも情けなさそうな表情になったのは気のせいか。

「このモンスターを倒さなければ終わらないのであれば、是非もありませんか」

 筑地副会長は、表情も変えずにそういった。

「幸いなことに、今のところモンスターは積極的に攻撃してきませんし」

「プロテクト!」

 結城紬は宣言した。

「防御はこちらに任せ、皆さんは攻撃に専念してください!」

 よほど早急に、このモンスターを倒したいようだ。

「攻撃、勝手にはじめてもいいのか?」

 坂又が、他の全員に確認する。

「号令とか、欲しいですか?」

 筑地副会長が、真面目な表情のまま返す。

「軍隊ではありませんし、なにより、敵モンスターの出方がわからないので、一斉攻撃して全滅するのは避けたいのですが」

「それはまた、正直なことで」

 坂又は気にした様子もなく、自分の倉庫から鉄パイプを取り出す。

「あんまり近寄りたくないからなあ。

 初撃は、こいつで」

 坂又はそのまま鉄パイプを両手で握り、巨大モンスターに突っ込んでいく。

 助走の勢いもそのままに突きいれたが、あっけなく弾かれた。

「うん。

 表面が、思ったよりも硬い」

 巨大モンスターはその攻撃に対して、大きくあくびすることで応えた。

 周囲にさらに巨大モンスターの口臭が漂い、悪臭に加わる。

「浄化!

 浄化!」

 結城紬が、また涙目になっている。

「これ、悪臭だけではなく、歴とした瘴気ですよ!

 多分、健康に影響すると思いますので、出来るだけ吸わないようにしてください!」

「人間にとっての害悪な存在、として具現化しているのかな?」

 彼方は、巨大モンスターの方に盾を掲げながら、そういった。

「それでは、次は誰が攻撃します?」

「あ」

 結城ただしが、顔を上に向けていった。

「上から攻撃が。

 みんな、伏せた方がいいかも」

 これまで中央広場で交戦したいた全員が、その場に伏せた。

 合流したばかりの坂又は、

「ん?

 みんな、どうした?」

 と、首を捻っている。

 次の瞬間、巨大モンスターの上空から、大量の土砂が降ってきた。

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― 新着の感想 ―
クァールで最初に思ったのがビーグル号とダーティーペア。 ちょっとググってみたらFFにも出てるんですね。 さて、キャラも増えてきて動かすのが大変かと思いますが、頑張って下さい。 楽しく読ませてもらってい…
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