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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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乱戦(八)


 五日目、AM12:24。


『はい。

 こちら生徒会ですが』

「あー、どうも。

 取り込み中すいません。

 トライデントの宙野です」

『取り込み中ですねえ、はい。

 それで、ご用件は?』

「たった今、うちの馬酔木がそちらの屋根を一部破損させてしまいまして。

 こちらについては、後ほどしかるべき対処をいたしますので」

『その件については、こちらでも当然把握しています。

 見あげれば空色が見えますので。

 でも、わざわざ今、このタイミングで連絡をくれたのは、そんな些事のためではないでしょう?』

「ああ、実はですねえ」

 彼方は横島会計に本題を切り出す。

「今、中央広場を丸ごと買い取ろうと思いまして」

『……は?』

「さっき、敵のデーモンって種族のうち一体を倒したところなんですが、まあそちらのジョブがガードといいまして。

 その成果というか報酬、だと思うのですけど、そいつを倒したことでアンロックされてぼくの転職先が増えまして」

『さらに転職、ですか?』

「はい。

 今の陣地守護者の上位互換、的な」

 彼方は淡々と説明をする。

「簡単にいうと、自分の領地内に居る味方の能力にバフをかけるスキルを持つジョブなわけです。

 そのバフの幅は、陣地守護者よりもかなり上。

 自分でもある程度は戦えますが、この状況下では、バフのが魅力的かなあ」

『その新しいジョブの名称は?』

「はい。

 領主ロードといいます」


 五日目、AM12:25。


「……という段取りで、お願いする」

『ラジャー』

『了解』

『わかりました』

『しかるべく』

 彼方が生徒会と連絡している横で、恭介は魔法少女隊の面々に指示を出していた。

「簡単なことだ。

 まずは、あの六角柱。

 それが壊れたら、中のモンスターたちを狙う。

 生徒会からも六角柱攻略に人を出しているから、同士討ちはしないように気をつけて」

 簡単にまとめれば、そんな内容になる。

 攻撃の内容やタイミングは特に指定せず、各自の判断に任せた。

 余り細かく指定しても恭介のキャパを超えそうだったし、なにより、恭介自身も攻撃に参加する身だ。

 なにより、状況の変化に合わせて、各自で動く方がなにかと融通が利く。

「生徒会から、中央広場周辺の土地も合わせて買ったから」

 背後から、彼方が恭介に告げる。

「あとは、存分にやって」

「わかった」

 恭介は返事をして、そのまま弓を上に向け、弦を引く。

「それじゃあぼくは、下で直接交戦に参加してくる」

 軽い口調でそういって、彼方は階下に降りていく。

 恭介は弦を放し、その後、何度も弓を引く。

 あの六角柱がどこまでの強度なのか不明であったから、ありったけの、今の恭介が込められる上限まで、魔力を込めた。


 五日目、AM12:26。


「えい」

 結城紬が手にした錫杖を振るう。

 六角柱の結界に激突し、とんでもない轟音が鳴り響く。

 レベル差。

 と、筑地副会長は思う。

 筑地副会長と結城ただしも手にした剣で相応の打撃を繰り返してはいるのだが、ここまでの轟音は発しない。

 レベルカンストの聖女とようやく五十を超えた勇者、同じく六十を超えた副会長とでは、パラメーターにそこまでの差があった。

 もっと根本的なことをいうのなら、この世界におけるジョブ副会長の立ち位置というのが、筑地副会長にはいまだにわかっていない。

 ただ、他の生徒会役員と比較して力や素早さが大きく、比較的戦闘向き、ではあるのだが。

「あら」

 ふと、結城紬が顔を上に向ける。

「また、これは馬酔木くんですね。

 それに、魔法少女隊の皆様も。

 この結界も、すぐに破れるかも知れません」

 あの人たちか。

 と、副会長も納得する。

 執務室で何度も聞いた、なんというか、「常になにかをしでかしている」プレイヤーたちだった。

 味方ではなるのだが、なにをやり出すのかまったく想像がつかない人々、でもある。

 全プレイヤーの中でも、一番特異でユニークな存在、と、いえるだろう。

 見れば、結界内の三体のうち、甲冑を着込んだ一体は、手にしていた盾を掲げ、頭上からの攻撃に備えている。

 どうやら、その個体にとっては、目前の三人よりも頭上からの攻撃の方が、脅威として警戒心を刺激させられるようだ。

 結城紬のいった通り、六角柱の結界はすぐに破壊された。

「いきます」

 静かにいって、結城ただしが入手したばかりの剣を手にし、横薙ぎに払おうとした。

 三人から見て右側に立っていた、大きな杖を持った個体、推測魔術師タイプに向かって。

 しかし、その剣は、途中で止まる。

 魔術師タイプは大きな杖を持ったまま、片手だけで結城ただしの刀身を掴んで止めていた。

 筑地副会長としては、驚きよりも、納得の方が先に来る。

 この三体と自分たちは、それほどの実力差があるのだ。

 唯一対抗出来そうなのは、カンスト聖女である結城紬一人、くらいか。

 しかし次の瞬間、筑地副会長は愕然とした。

 その推測魔術師タイプの首が、無造作に転がったのだ。

「は?」

 剣を素手で止められた結城ただしが、目を見開いて愕然とした声をあげる。

 首を失った魔術師タイプの胴体が、ゆっくりと前に倒れる。

「杖を奪って倉庫にでも入れて!」

 鋭い、女の声が、どこからか聞こえてきた。

 結城ただしが慌てて倒れた胴体から杖を奪い、自分の倉庫に収納する。

 うまい。

 と、筑地副会長はその声の指示を評価する。

 この先、結城紬が予測したとおりに、この魔術師タイプが復活することがあっても。

 杖がなければ、大幅な性能低下を強いられるはずだ。

「■■■■■!

 ■■■!」

 罵声、なのだろう。

 うまく聞き取れない言語でなにやら怒鳴りながら、戦士=剣士タイプが腰の剣を抜いて三人に斬りかかった。

 素早い斬撃であったが、筑地副会長はどうにか、手にした盾でそれを受け止める。

 力が強く、受け止めた盾ごと、筑地副会長の体は三メートルほど横滑りに移動した。

 怒りの感情は、あるのか。

 周囲を観察しつつ、筑地副会長は敵の分析をしている。

 その筑地副会長を狙って、回復役らしい個体が錫杖を振り下ろすが、結城紬の錫杖によって阻まれる。

 戦士=剣士タイプが急に移動し、回復役らしい個体の背後に回った。

 そこで三人に背を向け、盾を構える。

 その盾に、なにかがあたって弾ける音が、立て続けに響いた。

 回復役らしい個体はその場で錫杖を上に掲げ、二個体の頭上に半球状の結界が生じる。

 その結界を上から押し込むように、これまた連続で打撃音が響く。

 回復役らしい個体は錫杖を振り下ろし、斬りかかっていた筑地副会長と結城ただしの二人を、体ごと軽々と弾き飛ばした。

 手数で押してはいるが、地力が根本的に違うので、軽々といなされている。

 そんな、感触があった。

 三人以外の援護射撃は、ダメージはさして与えてはいないものの、牽制としては十分な役割を果たしているというのに。

「■■■!」

 戦士=剣士タイプが、筑地副会長の目にはなにも見えない空間を剣で払って、罵声を発している。

 彼女、なのだろう。

 魔術師タイプの首を落とした、不可視の戦力。

 ことによると、この敵に相対している直接的な攻撃隊の中で、一番効果の高い攻撃手段の持ち主。

 それでも。

 足りない、のか。

 筑地副会長は、内心で忸怩たる思いを噛みしめる。

 今は一見、均衡しているようだが。

 なにか、ほんの少しだけでもきっかけがあれば、プレイヤー側は総崩れになるだろう。

 逆にいえば、なにか、別の要因が、こちらに味方をする要素があれば、天秤はこちらに傾くのだが。

「うぃちゃん!」

 例の、見えない女の声が聞こえる。

「やっちゃえ!」

 敵二体の足元に、忽然と異物が生じる。

 あるいは、目に見えないだけですでにそこに居て、いきなり見える状態に転じたのかも知れないが。

 ともかく、その青い異物は姿を現すと同時に、猛然と動き出す。

 鋭く長い爪を剥き出しにしたまま横に回転し、二体の脛を切り裂いた。

 それだけでは止まらず、二体の体をよじ登りながら、爪や牙で各所を切り裂き続ける。

 当然、二体は体勢を崩した。

 それまで盾や結界で防がれていた援護攻撃が、次々と二体の体に刺さっていく。

 筑地副会長と結城ただしも、二体に斬りつけてはじめて手傷を負わせることに成功した。

 筑地副会長は回復役らしい個体の胴体に刃をめり込ませ、結城ただしは戦士=剣士タイプの片手を切り飛ばす。

「えい」

 身をよじった回復役らしい個体の首元に、結城紬の錫杖による渾身の打撃が入り、その首があらぬ方向に曲がる。

 手にした剣ごと片腕を失った戦士=剣士タイプは、蹲った回復役らしい個体の上を自分の体で覆い、無数のさらに魔法攻撃を浴びた。

 結果、原形を留めぬ状態になって、力を失い倒れる。

「お。

 お」

 最後に残った回復役らしい個体も、もはやなにかをなせるような気力体力が残っていないらしく、その場に倒れたまま、喉を鳴らしている。

「結城ただしくん。

 とどめを」

 副会長は、そう声をかけた。

 結城ただしはユニークジョブ勇者。

 その意味は、いまだに判然としていないが、生徒会としては是非にでもレベルアップを図りたい人材になる。

 この場でポイントを稼ぐべきなのは、明らかに結城ただしだった。

 結城ただしは頷いて、自分の剣を持ち直し、倒れた回復役らしい個体の首を両断する。

 終わった、のか。

 と、筑地副会長は思う。


「ああ」

 涼やかな声が、聞こえた。

「どうやら、間に合ったようだね。

 早く準備をして。

 次の敵が来るよ」

 声のする方を向くと、巨大な黒い獣の背に乗った少女が、こちらを見ていた。

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