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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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乱戦(一)

 五日目、AM10:49。


 赤瀬は重機のアームを目一杯高く伸ばし、建物正面から少し離れたバリヤーに沿ってみっしり張りついているガーゴイルの群れに突っ込ませる。

 そのままアームを下へ、地面に着くまで、一気に押しさげた。

 ガーゴイルたちは、あまり力はないのか、さしたる抵抗もせずあっさりとされるがままになっている。

 その途中、あっけなく翼や手足が砕けている者も、少なくはなかった。

 さらに、アームを最後まで押しさげると、バキバキと音を立ててバケットの下のガーゴイルたちが砕けていく。

「わぁ」

 運転席のフレームにしがみついていた結城紬が、感心した声をあげる。

「やってみると、あっけない。

 いけますね、これは」

「いけます、いけます!」

 いって、赤瀬は重機を操作する。

「わ。

 もう張りついているし」

 見れば、縦一列にガーゴイルが駆除された部分に、新たなガーゴイルが張りついていた。

 どれだけ出現しているんだよ。

 と、赤瀬は心の中で突っ込む。

「とはいえ、このままやり続けるしかないよなあ」

 と、赤瀬は呟く。

 これ以上に効率のいいガーゴイルの駆除法を、赤瀬は思いつかなかった。

「では、赤瀬さんはこのままこれを続行していただいて」

 突然、結城紬がそんなことをいい出す。

「わたしは、ここで別行動させていただきますね」

「え!」

 赤瀬は、戸惑った。

「あの、その。

 それ、大丈夫なの?」

「こちらの機械は、ちゃんとプロテクトで包んでおきますので、問題はないかと」

「いや、こっちではなくてそっち!

 結城さん一人で……」

「こちらに関しては、心配するまでもなく」

 結城紬は、そういって微笑む。

「これでもわたし、カンスト聖女だそうですから」

 結城紬はそういって、そのままひょいと軽い足取りで重機から飛び降り、バリヤーの向こう側、すなわち、ガーゴイルが密集する地域へと躊躇する様子もなく侵入していく。


 当然のことながら、結城紬も無策というわけではなく、自分の周囲にプロテクトのスキルを使って結界を張っていた。

 このプロテクトは、結界術のバリヤーと同じような機能をしている。

「外側からの攻撃を遮断し、内側からの攻撃を通過させる」

 という非対称性はバリヤーと同じであったが、バリヤーと違う点もあり、それは、バリヤーが遮断するのが物理攻撃のみであるのに対し、このプロテクトはそれに加えて魔法攻撃にも耐性がある。

 今のところ、積極的に魔法攻撃を仕掛けてくるモンスターは確認されていないので、その性能を十全に活かす機会には恵まれていないのだが、いずれにせよ、結城紬の防御は万全といえた。

 いや、防御性能のみで比較するのなら、全プレイヤーで一番安全な場所に居る、とさえ、いえるのかも知れない。

「えい」

 その安全なプロテクト結界の中から、無邪気なかけ声があがって錫杖が振るわれる。

 白っぽい弧を描いて錫杖が流れ、そのあとにはガーゴイルの破片が散らばる。

 軽々と振るわれる割に、その威力はシャレにならなかった。

 銀色に輝き、先端にあしらった飾りには宝石なども埋め込まれた、華美な錫杖だった。

 一見しただけでは実用品というより、豪奢な装飾品に見えるのだが、その錫杖もまた聖女専用装備の一種。

 きっちり、実用品、というより、実戦用品になる。

 その外見に似合わず、武器としての性能も高かった。

「えい。

 えい」

 ぶんぶんと無造作に振るわれる度に、錫杖に寄って砕かれたガーゴイルの破片が散らばる。

 カンスト聖女の力は伊達ではなく、石で出来たガーゴイルの体もあっさりと砕いた。

 これが、無邪気にして凶悪、強固な防御力と最高の攻撃力を兼ね備えた聖女様の、実質的な実戦デビューだった。


「いや、だからね」

 少し離れた場所で、あるプレイヤーがそんな目撃談を語っている。

「おれ、本当に見たんだって。

 はぐれモンスターの首が、勝手に飛ぶところ」

「はぐれモンスターって、閉鎖地区に出るってやつだろ?」

「大半はステルス性能持ちで、おれたちは存在を感知できないって聞いているが」

「だから、姿が見えたのはほんの一瞬、首を落とされた時だけ、なんだって。

 死に瞬間は、スキルだって無効になるだろ」

「いや、理屈はわかるよ。

 殺されたモンスターは、即、誰かの倉庫に入る。

 つまり、すぐに姿を消す。

 仮に見れたとすれば、ほんの一瞬だけのはずだ」

「だけど、実際問題として、だな。

 そんなステルス性能持ちのモンスターを、瞬殺可能なやつって、存在するのか?」

「そのモンスターを倒したやつも、見てないんだろ?

 だったら、そいつもステルス性能持ちってことになる」

「ステルス性能持ちのモンスターを瞬殺する、ステルス性能持ちのプレイヤーか。

 そんなのが居るとすれば、噂くらいは聞いているはずなんだが」

「基本職でいえば、斥候になるのか。

 斥候で高レベルな手練れって、聞いたことないんだよな」

「あるいは、もう上位職に転職しているのか」

「上位職かあ。

 あの条件、厳しいからな。

 成功したってはなし、まず聞いたことがないし」

「どっかのカップルがスキルの教授に失敗して、即別れたって噂は聞いたな」

「ああ。

 どっちも、そこまで好感度が高くなかった、ってことで」

「まあ、即別れられる時点で、そんなもん、だったんだろう」

 とりとめのない噂話に興じながら歩く彼らは、生徒会の指示により中央広場に向かって移動している最中だ。

 直前まで、生徒会の指示より中央広場から離れた道で、中央広場から出て来たモンスターを叩く仕事に就いていた。

 今は、その生徒会から、今度は中央広場の戦力が不足しているから、そちらに移動して協力するようにと新たな指示を与えられて、中央広場に向かっている次第になる。

 彼らがこれまで待機していた場所まで来たモンスターは、想定していたよりも少なかった。

 これまでに見たことがない種類がほとんどであり、その意味では苦戦もしたのだが、当初想像していたよりは楽な仕事だった。

 端的にいって、個体数が少なかったのである。

 これでは、ポイント取得的な観点からいって、あまりおいしくない。

 今の中央広場に無数のモンスターがひしめいているというのなら、彼らにしても望むところだった。

 そんな彼らが中央広場に到着した時、見た光景は。

「なんだこりゃ」

 ふたつの大きな建物、聖堂と生徒会執務室が入っている建物を挟んで、その間の空間に、みっしりとなにかがひしめいている。

 遠目からは羽虫にように見えたそれは、近寄ってみると人間と等身大の石で出来た石像、翼が生えた悪魔像で。

 それで、聖堂からは絶え間なく銃声が轟いて、その石像を倒している。

 倒しているのだが、石像が増える速度の方が速いらしく、全体として見ると石像が減ったようには見えない。

 生徒会方面はどうかというと、まず、重機がでんと建物前に陣取っていて、そのアームで絶え間なく石像の群れを叩き潰している。

 それ以外に、建物から銃撃を続ける物音がするのは、聖堂の方と同じだった。

 その建物の間、無数の石像がひしめている空間で、キラキラ燐光を放ちながら回転して石像を粉砕し続ける存在があって、あれは多分、中心に鈍器を振り回している人物が居て、際限なく湧き続ける石像が粉砕され続けている、と、そういう図なのだろう。

 石像は、羽虫が光源に群がるように、どうやらヒトという存在に群がる性質があるようだ。

「情報量が、多い」

 そうした光景を目の当たりにした一人が、感想を呟く。

 誰も、その感想に異論を唱えなかった。

 そのおかげで、今のところはふたつの建物から離れる様子はないのだが。

「あ」

 一番近くに居た石像が、顔をこちらに向けた。

 どうやら、ここまで歩いてきた彼らの存在を、認めたようだ。

「やべ!」

「応戦を!」

 慌ててそれぞれの武器を構え、迎撃の準備を整える。

 その、瞬間。

 彼らに襲いかかってきた石像の、首が飛んだ。


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