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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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タイマン

 五日目。AM10:26。


 中央広場から出て来たモンスターが次々と射殺されていく。

 迎撃する側も、そもそも射撃という行為自体に慣れているわけではない。

 しかし、残弾数を気にする必要がないので、「数撃ちゃ当たる」式に派手に銃弾をばら撒くことでどうにか成果を引き出している。

 本来なら、近接戦闘でなら数名から数十名の人間とでも互角以上に渡り合える屈強なモンスターたちが、連続して銃弾を受け、盛大に出血しながら姿を消していく。

 例外として、大型犬のようなモンスターに騎乗したゴブリンぽいのは動きが早すぎてなかなか命中せず、それと、巨大な体躯を持つ、新城が「トロール型」と名付けたモンスターは、何発かの銃弾を受けてもあまりダメージがないようだった。

 そのうち、犬っぽいのに乗ったゴブリンっぽいのは、魔法による広範囲攻撃の中に誘い込むことで、どうにか仕留めはじめている。

 トロール型は、灰色の肌をした半裸のモンスターで、胸部と腕に黒光りのする、素材不明の装甲を括りつけ、新城自身の身長ほどはある、巨大な棍棒を持っていた。

 体質なのか、それとも、そうした効果を持つアイテムを持っているのか、このトロール型には、魔法の効果もかなり軽減するようで、あまり目立った効果がなかった。

 このトロール型も、犬乗りゴブリンを狙った範囲魔法攻撃に晒されているのだが、今に至るまで平然と健在だった。

 あれだけの巨体で魔法にも強い、って、バランス調整に失敗しているでしょ。

 などと、新城志摩は思う。

 新城は別にゲーマーというわけではないが、ネットとか友人経由でその手の情報にも自然と触れていて、「聞きかじり」程度の知識は持っていた。

「ゆかりちゃん」

 新城は傍らに待機している北畠に声をかける。

「あのモンスターも、知性とかあるんだとよね」

「あるでしょうね」

 北畠は頷く。

「道具も使っていますし。

 ただ、われわれ人間と同じような思考をするのかどうかまでは、断言出来ないけど」

「一部の陸生哺乳類は幼児程度の知性があるっていうし、イルカやタコも頭はいいって聞いたことがあるし」

 新城も、頷く。

「知性の高さと、会話が成り立ち、お互いに共感できるかどうかは別問題みたいだしね。

 ただ、ふと思ったんだ。

 周りで仲間がどんどん倒れていく中、こちらに向かってまっすぐに歩いて来るあの巨人は、今、なにを考えているのかな、って」

「でも、倒すんでしょ?」

「うん。

 倒す」

 新城は、新たに借りた改良版HEATハンマーを倉庫から取り出し、掲げる。

「あちらの事情はわからないけど、こちらにはあれを倒す理由があるし」

 ポイントのため。

 極めて利己的な動機ではある。

 だが、そうではない営為というのが、人間の世界にあるのだろうか?

 ともあれ、新城には、あの巨人と戦うことに迷いはない。

「ん?」

 その巨人の方を眺めていた北畠が、なにかに気がつく。

「よく見ると、あの巨人がつけている胸当てや手甲、あのダンゴムシの殻っぽくありません?」

「それ、ありそうだな」

 新城は頷く。

「あれを倒す動機が、もう一つ増えた」

 あの巨大ダンゴムシは、特にその外殻に魔法の威力を大幅に軽減させる効果がと、確認されていた。

 それを加工して歩兵用の装備を作るのは、十分にあり得るのだ。

 なお、新城が忌避感を持つのはあくまで「虫」という存在でしかなく、それを素材とした装備類には、なにも感じない。

 その巨人はといえば、頭部を狙った銃弾を手甲で逸らしつつ、悠然とした足取りでこちらに近づいて来る。

 あちこち負傷をしているらしく、体表のそこここに血がこびりついているのだが、本体の方はあまりダメージを受けた様子がない。

 巨人との距離は、すでに百メートルほどに迫っていた。

「いってくる」

 新城は改良版HEATハンマーに魔力を通し、前に進む。

「ご武運を」

 北畠も、自然と時代がかった言葉を吐いていた。

 今の新城のレベルは三十五を超えている。

 確認されている戦士職の中では最高レベルであり、当然、この近辺にいるプレイヤーの中で、その新城に追随できる者はいなかった。

 その新城があの生き残りの巨人と正面から渡り合うのなら、もう余人が介入する余地はない。

 下手に手助けをしようと試みても、かえって邪魔になるだけだ。

 たった一人で自分に近づいて来る新城を見て、巨人は、口の形を奇妙に歪めた。

 新城の行為が、無謀で滑稽なものにでも思えたのか。

 それとも、ようやくまともに相手をする者が現れて、安堵したのか。

 モンスターの感情はわからなかったが、なんらかの意識の変化があったらしい。

 彼我の距離が十メートルほどまで近づいた時、巨人は棍棒を振りかざし、一気に距離を詰めてくる。

 棍棒が振りおろされ、新城の直前、顔に風圧を感じた。

 これほどの巨体ともなれば、歩幅も大きいわけか。

 と、新城は他人事のように考える。

 無論、目測でその攻撃が当たらないことはわかっていた。

 だが、あれほどの高度から一気に振りおろされる打撃を目の当たりにすると、当然のことながら肝が冷える。

 巨人は、新城の方を見ながら顔を歪め、棍棒を持ちあげる。

 相変わらず、その表情から感情を伺うことは出来ない。

 が、新城に対して、なにか思うところがあることは、想像するまでもなく、わかる。

 新城は、改めてハンマーを構えた。

 相手の棍棒は、新城自身の体よりも大きい。

 重量を考えると、おそらくは新城自身よりもよほど重い、だろう。

 そんな重量物を軽々と振り回す相手に、盾を持っても意味はなかった。

 盾を持っていようがいまいが、攻撃が一回でも当たればそれで終わり。

 体ごと吹き飛ばされて、おそらくは衝撃で死亡する。

 だから、というわけでもないのだが、新城はこのハンマーを両手持ちで使っていた。

 柄の長さだけで二メートル近くあり、ヘッドの重量も相応なこと大ハンマーも、レベル三十を超える今の新城であれば問題なく扱える。

 巨人が扱う棍棒とは、そもそも重量がかなり違うから、あれを受け止めたりすることは出来ない。

 相手の攻撃はとにかく避けて、こちらの攻撃をひたすら当てていく。

 そうしないと勝てない、いいや、確実に負けるゲームだった。

 ぶん、と、風切り音を残して棍棒がかすめていくる。

 別に新城が紙一重を狙っているわけではなく、相手の動きが素早くて、余裕を持って避けることが、出来ていないだけだ。

 いいなあ。

 と、唐突に、新城はそんなことを思う。

 この、緊張感。

 恐怖も、感じてはいるのだろう。

 だがこの時点では、そんな感情よりも、一度でもしくじれば終わる、という緊迫感の方を、強く感じる。

 このようなヒリつく状況に身を置くことは、新城は、決して嫌いではない。

 一見して大ぶりなように見えて、巨人の挙動にはあまり隙がなかった。

 少なくとも、新城の目にすぐそれとわかるような、隙は。

 振りおろし、すぐに持ちあげる。

 一見単調なようで、そのどこにも打ち込む隙が見いだせない。

 そもそも、新城は武芸の有段者というわけでもなかった。

 おそらくは、何度も死線をかいくぐってきたのであろう、目前の巨人に対して、抗する術を持たなかった。

 多少、レベルがあがったからといって、それがなんなんだ。

 と、新城は思う。

 目の間にいる本物と比較して、自分は、レベアップの恩恵によって少しは動きがよくなった、程度の、小娘に過ぎない。

 とも、思う。

 単純な身体能力と、経験に裏打ちされた身のこなしとでは、全然別物だと、はじめて実感が出来た。

 さて、どうするかな。

 相次ぐ巨人の猛攻をどうにか避け続けながら、新城は考える。

 いや、考えても仕方がないのか。

 今の自分には、この巨人に対抗出来るほどの何物かを、ほとんど持っていない。

 だったら。

 と、新城は思う。

 愚直にいくしかない。

 巨人がまた、棍棒を振りおろした。

 それを持ちあげる前に、新城は、はじめて自分から攻撃をかける。

 巨人の太い、丸太のような腕に向けて、ハンマーのヘッドを振りおろした。

 しかし巨人は、そのヘッドをあっけなく片手で鷲づかみにする。

 やはり、な。

 と、新城は思う。

 反応速度が、まるで違う。

 新城は手にしていたハンマーの柄を手放し、すぐに倉庫から新しいハンマーを取り出す。

 そしてそのまま、巨人へと振りおろした。

 巨人の反応が、わずかに遅れる。

 ハンマーの一撃は命中しなかったものの、巨人はその場から後ずさり、棍棒はその場に落ちた。

 そうか。

 と、新城は悟る。

 倉庫を使うのを見るのは、はじめてか。

 このモンスターたちは、このような機能を使用出来ないのだろう。

 だから、新しいハンマーを取り出した新城の動きに、反応するのが遅れた。

 わずかに一秒も満たない時間、しか、稼げなかったが。

 それでも、巨人から棍棒を手放させることに成功した。

 新城は巨人に目を据えながら、片手で棍棒に触れて倉庫に格納する。

 いくらか差は埋まったが、それでも彼我の実力差は大きい。

 まるで、安心なぞ出来ない。

 ふぁ、ふぁ。

 巨人は、大きな口を開いて、そんな声を漏らす。

 笑っている、のか?

 楽しい、とかいう感情を、この巨人は持っているのだろうか。

 疑問に思いつつ、新城はハンマーの柄を自分の肩に置き、油断なく巨人に近寄っていく。

 たとえ棍棒がなかったとしても、手足の長さを考えれば、相手のリーチの方が長い。

 なにしろ、二倍近い身長差があるのだ。

 油断など、出来るわけがなかった。

 だから。

 新城はそのまま、無造作にハンマーを振りおろす。

 近寄る時は、攻撃をかます時。

 巨人の胸元を狙った打撃は、巨人の手甲によって遮られた。

 コンクリートでも殴ったかのような、微動だにしない感触。

 しかしここで、このハンマーの特性、HEAT機能が発動する。

 鉄をも焼き切る灼熱の疾風がヘッドの接触面から発生して、手甲を貫き巨人の腕を焦がした。

 新城はそのままハンマーを振り切り、巨人は機敏な動作で新城から距離を取る。

 見ると、巨人の左腕は肘の先から焼失している。

 また、一手。

 と、新城は考える。

 だが、この程度で詰むほど、簡単な相手でもない。

 とも、思った。

 巨人は、焼失した腕を右手で抱え、

「あお、あお、あお」

 と聞こえる声をあげる。

 痛みか、怒りか。

 その両方か。

 今度は巨人の方から、新城に突進してくる。

 無手でも、片手でも、あれほどの巨体となればその質量だけで十分な武器になる。

 しかし新城は、自分でも意外に思えるほど、冷静に対処した。

 これほどの巨体が正面から突っ込んでくれば、それこそダンプがそのまま突っ込んでくるのと同じくらいのプレッシャーがあるのだが。

 新城は横に身を躱し、すれ違いざま、足元にハンマーの一撃をお見舞いした。

 巨人の左脛が、左腕と同じように焼き取られ、巨人はそのまま前につんのめって転がり出す。

 突進した分の運動エネルギーを、とっさに制御出来なかったようだ。

 新城は転がる巨人を追いかけて追撃する。

 振り下ろしたハンマーのヘッドは、背中から巨人の左肩に命中する。

 腕自体は焼き切れなかったものの、肩の部分が大きく焼けただれ、左腕は根元から使用不可能になったようだ。

 次の頭部を狙った一撃を、巨人は残った右手の掌で受け止める。

 理屈も経験もない、とっさにとった、防御的な反応だったのだろう。

 これにより、巨人の右手は、手首から先が吹き飛んだ。

 個人は四つん這いになり、

「ぽぉあ、ぽぉあ、ぽぉあ」

 と鳴きながら、新城から遠ざかろうとした。

 完全に、戦意を喪失している。

 そう、見えた。

 新城はその背中に一撃を見舞い、動きが止まった巨人の後頭部に、ハンマーヘッドを打ちつけた。

 そして、巨人の姿全体が消失する。


『レベル差十以上のモンスターを単独で撃破しました。

 呼称: ジャイアントキリング

 を獲得』


 そんなメッセージが視界の正面に表示されたが、新城の中には、なんの感慨も沸かない。

 終わったのか。

 ただ、そう思っただけだった。

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