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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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変化

 五日目。AM10:18。


「……うーん」

 赤瀬は土埃で視界が悪い中央広場を、目をすがめて見通そうとする。

「なんかあの巨人、まだ動いているっぽいなあ。

 旬ちゃんがどっこどっこ倒しているけど、消えてない」

「あれ、二日目の最後に出て来たのに似てますよ」

「そうなん?」

 そばに居た者にそういわれて、赤瀬は首を傾げる。

「二日目のラスボスクラスが、もう出ているのかあ」

 大丈夫かな、これ。

 と、赤瀬は内心で不安に思う。

「二日目の時はどう倒したの?」

「彼方エリアに誘導して、穴の中に入れてその上から重量物をどっさり。

 身動きできなくなったところに何度も攻撃を入れて、やっと、ですね」

「うわ。

 面倒」

 赤瀬は天を仰いでそういった。

「そんなんが、もう何体も……」

「今、八体目、ですね。

 片っ端から向こうの人が胴体や手足をぶった切っていますが」

「あ、やば」

 あることに気づいた赤瀬は、慌てて生徒会に伝える。

「もしもし生徒会の人たち、誰か出てくれませんかぁー。

 あれ、今、倒しきっていない巨人の体に隠れながら、細かいモンスターが続々と移動してます。

 ええと、こっちとか聖堂とかに向かうのではなくて、広場から脱出するように動いているみたいなんすけど……」

『報告ありがとうございます。

 その件については、少し前からドローンにて確認し、各所に警告を呼びかけています』

「あ、はい。

 把握しているのなら、それでいいです。

 こっちは、新たな指示とかありますか?」

『もうしばらく、待機して……いえ。

 もし、あの巨人を完全に倒す方法をご存じでしたら……』

「んー。

 すぐには思いつかないかなあ。

 あ、なにかいい方法思いついたら、即実行に移していいっすか?」

『その時はお願いします。

 その際、こちらに指示を仰ぐ必要はありません』

「ういっす」


「暇」

「晴ちゃん、しっかり警戒しててください」

 上空百五十メートルの高度を維持しつつ、中央広場周辺を周回していた箒の上で、緑川と仙崎はそんなやり取りをしていた。

 これまでのところ、この航空戦力に出番はない。

「あ」

 真面目に地上の様子を監視していた仙崎が、なにかを見つける。

「なんか小さいのが、巨人の体を盾にしてぼちぼち逃げはじめていますね。

 その中に、妙に素早いのが」

「少し近寄ってみる」

 緑川そういうのと同時に箒の機種を巡らし、上空から中央広場から出て来た素早い影を追う。

「オオカミっぽいのに乗った、ゴブリン、ですかね?

 数はそんなに居ないけど、速度は出ています」

「千尋、生徒会に連絡。

 対応は、地上の待機組に任せる」

 そういって緑川は箒は再び中央広場方面に進路を変える。

 その素早さゆえ、多少は手こずるかも知れないが、オオカミっぽいのに似たゴブリンなら、道沿いに待機している連中でも対応可能なはずだった。

 それよりも、今の時点で唯一の航空戦力である二人は、この二人にしか対処出来ない相手を警戒するべきだろう。

 と、緑川はそう判断した。

「出た」

 生徒会に報告している仙崎に、緑川が告げた。

「敵の、航空戦力」

 緑川の目前で、中央広場で出現してそのまま垂直に飛翔した物体。

 ワイバーンにしか見えない物体が、箒の前方をかすめてまっすぐ上空に飛んでいった。

「追走、開始」

「ちょっと晴ちゃん!」

 慌てて箒にしがみついた仙崎が、抗議の声をあげる。

「進路変えるときはもっと前に教えてって!

 これ、体、露出しているんだから!」

 二人とも、通常の航空機のようにキャノピー内部に体が収まっているわけではない。

「千尋は、それよりも攻撃。

 ガンナーは、千尋」

「はいはい!」

 仙崎はヤケクソ気味の大声を出す。

「って!

 ワイバーン、多すぎない!

 ええい、もう!

 ホーミング攻撃、いっけぇー!」

 今朝、三和から渡された多属性対応杖を振りかざし、火、水、風、雷の属性攻撃を同時多発にぶっ放す。

 仙崎の杖から放たれた魔法光がけむりの尾を引いてちりぢりに逃げ惑うワイバーンのあとを追尾していく。

「おお」

 箒の操縦に専念している緑川は目を見開いて、素直に驚いていた。

「千尋、凄い」

「凄いのは、この杖なんですけね!」

 次々と魔法攻撃を連射しながら仙崎は返す。

「この杖、出力も反応速度も、前のとは段違いなんですけど!」

 試す機会もなかったので、ぶっつけ本番だった。

 想定以上の杖の性能に、仙崎は舌を巻いている。

「に、しても、次から次へと空に昇ってくるなあ!

 下の人たち、なにやってんの!」


「ちょっ!」

 青山は焦っていた。

「こっちは三割くらいは落としていると思うけど、残りは空に逃げてます!」

「あの巨体でカバーしてきたか」

 彼方は、どこか諦めの入った口調でいった。

「あれは、こっちでは対処出来ないね。

 こっちはこっちで、出来ることだけを着実にやっていこう」

 先ほどから、巨大なワイバーンが大きな翼を広げてわざとこちらの攻撃を受け、その内側に出現するモンスターを防御している。

 当然、こちらの攻撃をまともに受けたワイバーンはほどなくして消えるわけだが、攻撃を受けている期間中、守られ無事に出現して安全な場所まで逃げるモンスターも出て来る。

 つまり敵方は、多少の犠牲を覚悟することで、その他を活かす戦法を、意識的に採用していた。

 少なくとも、単なる野生動物は、こんな真似をすることはない。

 本当に、指揮系統みたいなのが存在するっぽいな。

 と、彼方は思う。

「地面を歩くモンスターは?」

「魔法と火器で出来るだけ減らそうとはしているんですが、なにぶん、死角になる場所が多くて」

 倉石が、彼方の問いかけに即答する。

「結果として、相当数が広場の外に出ています」

「この状況なら、仕方がないかな」

 彼方は、そう結論した。

「犠牲覚悟のワイバーンだけではなく、巨人の体も全部は消えていないし」

 こちらも、決して手を抜いているわけではない。

 聖堂と生徒会側から、以前にも増した苛烈な攻撃が続いていた。

 広場を出ることが出来たモンスターは、多く見積もっても全体の半数にも満たないはずだ。

 もっといってしまえば、それ以前、完封に近い状態を二十分前後維持出来ていたことの方が、どちらかというと僥倖、なのだろう。

 広場から出たモンスターについては、他のプレイヤーたちに任せるしかない。

 いや。

 これまで出番もなく市街地の各所で待ち構えていたプレイヤーたちは、かえってこの状況を歓迎するのではないか。


「来ました。

 イヌ科の動物に乗ったゴブリンっぽいの、リザードマンっぽいの、ミノタウロスっぽいの、などなど。

 ファンタジー系モンスターの見本市です。

 遠距離攻撃が可能なプレイヤーは、自分の射程距離内に入って来た敵を片っ端から撃ってください。

 杖を持ったやつや装備が豪華そうなやつとかがいたら、優先的にお願いします。

 遠距離攻撃をおこなう敵や指揮官の役割を果たす敵が混ざっている可能性があります。

 これらは、はやめに始末してくれると、こちら全員が助かります……」

 風紀委員の連絡係が、全員に注意事項を繰り返し通達している。

 パーティ風紀委員は、この道の警戒を主導していた。

 風紀委員をはじめとして、総勢で三十名ほどがこの道周辺に配置されている。

 ここに待機して、この道を通ろうとするモンスターを可能な限り減らす。

 出来ることなら、全滅させる。

 のが、この場に居るプレイヤーたちの役割、ということになる。

 先ほどから、散発的な銃声が鳴り響いていた。

 こちらに来るモンスターたちも、隊列を組んで威風堂々と行進してくるくるわけではなく、かなり汚れた格好をして、ぽつぽつと距離を取りながら、三々五々といった態でこちらに来ている。

 負傷した様子のモンスターも、決して少なくはない。

 ここまで来られたのは、中央広場から、どうにか逃げ延びて来た連中、でしかなく、いわば、あの場での敗残兵だ。

 そして、自分たちの仕事は、その敗残兵を狩ることだ。

 遠距離攻撃を担当するプレイヤーたちは、全員が高レベルで手練れ、というわけでもなかったが、敵の密度が薄いので、一体、また一体とモンスターの数を着実に減らしている。

 モンスター側は、遠距離攻撃が可能な個体はあまり残ってないようなので、しばらく、こちらにとって一方的な展開が続く。

 もの、と、予想された。

「新城さん、あれ!」

 風紀委員の一人が、まだ遠くに居るモンスターを指さした。

「これまでの報告になかったタイプです。

 全長四メートル級の、二本足歩行タイプ」

「全身灰色で、とぼけた顔をしているな」

 風紀委員長、新城志摩は素直な感想を述べた。

「カバみたいな。

 ええと、以後、あのタイプをトロール型と呼ぼう」

 とぼけた外観だが、実際にあれと戦うとなると、苦労しそうだな。

 と、新城は他人事のように考える。

 それでも、あの巨大ダンゴムシと戦うのよりは、遥かにマシなのだが。

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