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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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事前の準備

「レベル?」

 森の中、通信を受けた遥が答えている。

「まあまあ、かな。

 もうすぐ二十に届く、はず。

 察知スキルと、それに、うぃくんのサポートにかなり助けられてる感じ」

 オーバーフロー時とは違い、森の中では獲物を探さなければならない。

 察知スキルがなければ、そもそも野生動物がどこに居るのかすらわからない。

 その分、同じサイズの獲物であれば、オーバーフロー時のモンスターよりも森の中に棲息する野生動物の方が、ポイント的にはおいしいようだが。

 現在の遥は斥候のジョブであり、移動速度は基本戦闘職の中でも最速。

 それを幸いに、居場所に当たりをつけた動物を片っ端から狩っている。

 狩るための時間よりも移動時間の方が長いくらいだったが、地道に時間をかけるとどうにかレベルアップは可能なようだ。

 ただ。

 と、遥は思う。

 上位職への転職条件がレベル二十以上であった場合、詰むかもな。

 と。

 レベル十八を超えたあたりから、レベルアップのペースが、がくんと落ちた気がする。

 レベルアップに必要となるポイントが、増えたのだろう。

 対して、森の中に棲息する動物を倒して得られるポイントは、多少の上下はあるにせよ、だいたい決まっている。

 レベル二十を超えてこの森の中でレベルアップをするためには、相当大量の動物を始末する必要があり、つまりは、それだけ時間がかかる。

 半日か、一日か。

 これまでの感触から推測すると、レベル二十以上になると、それぐらいのペースになってくるはずだ。

 上位職への転職条件がレベル三十とかそれ以上だった場合、しばらく転職は出来ないことになる。


「なんでそんなことを?

 え、ああ。

 市街地でそんなことが。

 わかった。

 出来るだけ今日中にレベルアップ出来るように、頑張ってみる」

 通信を終えた後、遥は小さく呟く。

「オーバーフローの難易度が変わる、か」

 正確には、

「その可能性がある」

 程度の推測に過ぎないわけだが、今日のオーバーフローで統率の取れた軍隊が出現しているのは事実なのである。

 明日は、それ以上の「何者か」が出現するかも知れない。

 そう予測し、警戒しておくのは、それなりに正常な判断だといえる。

 杞憂に終わるのならそれでもいいが、下手に楽観してリスクを過小評価するよりは、遥かにマシだ。


「うぃくん」

 遥が声に出すと、なにもない空中に野生の精霊(?)が出現して、そのまま地面に着地する。

 遥は、実際のところ「これ」の正体がなんなのか、まるで理解出来ない。

 が、こうして自在に出たり消えたりするのを見ると、目で見えるこの体は本体ではなく、霊体とかに近い存在なのかな、と、思う。

「ちょっとペースをあげたい。

 おいしい獲物見つけるの、手伝ってくれるかな?」

「うぃ!」

 野生の精霊(?)は片手をあげ、元気な声で返事をする。


「さて、おれはどうするかな」

 恭介は周囲を見渡して考える。

 緑川を除く魔法少女隊の三人と彼方が、現場の片付けをしているところだった。

 重機と、この前設置した柱を結ぶ、横向きに設置されたH形鋼が見える。

 一本目を固定し終えていて、二本目を固定している最中だった、らしい。

 重機のアームにチェーンをつけ、それでも横向きのH形鋼をぶら下げ、柱のH形鋼と結合する。

 その最中で、作業を中断した。

 ということらしかった。

 すでに一本目の作業は終わっているらしいので、まったく不慣れな作業の割には、捗っている。

 の、だろうな。

 と、恭介は予想する。

 っていうか、本当に重機を買ったのか。

 緑川が、相変わらず通信越しに酔狂連の三和と質疑応答を続けている。

 とりあえず、恭介は、この場で手助けすることはないようだ。

「さっきの続きをやっておくか」

 一人呟いて、恭介は歩きだす。

 まだ、検証したいことは残っていたし、それに、ぶつけ本番になるよりは、今のうちに、狙撃手の戦い方に慣れておいた方がいい。


「なにか要るものとか、あるかな?」

 現場の片付けを終えた後、彼方は魔法少女隊の面々に訊ねた。

「魔石、そっちに渡しておこうか?

 うちの連中はあまり使わないみたいだし」

「こちらもストックがありますし、それに、モンスターを倒せば自動的に補充されるものですから」

 仙崎が即答する。

「それよりも、これまでに集まった素材なんか、少し分けて貰えませんか?

 新しい装備が作れるかも知れませんし」

「ああ、いいよ」

 彼方は頷く。

 どの道現状では、倉庫のこやしになっているだけなのだ。

「でも、そっちが持っていなくて、こっちが持っている素材なんてあるかなあ」

 しばらくその場に居る全員で、所持品の確認をおこなう。

 結果、魔法少女隊が持っていないアイテムなど、彼方たちトライデントは持っていなかった。

「それじゃあ後は、手持ちの素材をこねくり回して使い勝手がいいアイテムが作れるか、いろいろ試してみるしかないですね」

 仙崎は、そう結論する。

「レベルは、明日になればいくらでもあげる機会があるでしょうし」

 魔術師の攻撃は、広域に範囲が出る。

 かえって、狭い場所に効果を集中させるのは、かえって不得手のようだ。

 つまり、オーバーフローの現場に赴けば、いくらでもポイントを稼ぐ機会はある。

「あと、服も、ですね」

 青山が指摘をする。

「いつまでも制服とジャージの二択ではないでしょ。

 浮遊魔法を使う機会も増えるでしょうし」

 確かに、スカート姿で浮遊魔法は使いたくないだろうな、と、彼方は思う。

「今回は、マーケットで適当なのを見繕いましょう」

 仙崎はいった。

「今来ている作業着も、機能面からいえば決して悪くはないのですけど。

 選べるのなら、もう少し可愛いのがいいです」


 夕方になり、遥が帰ってくる。

「無事に忍者になれたよー」

 との、ことだった。

「あと、この子、うぃくん。

 凄いねえ。

 出たり消えたりするんだよ」

 などいうことも、いった。

「まあ、精霊っぽいなにか、だもんな」

 恭介は適当に流しておく。

 わからないことに時間を費やして考えるのは、無駄だ。

「うぃ!」

 当のうぃが、恭介のところにまで近寄ってきて、片手をあげて自己主張する。

「よしよし」

 恭介はかがんでうぃの頭に手を置き、撫でる。

「お前はいいやつだ。

 これからも、ハルねーをサポートしてやってくれ」

「うぃうぃ!」

 うぃは、興奮した様子で叫んだ。

「そっちはどうだった?」

「今日一日、狙撃手の機能を確認してたんだけど、思ったよりも凄いのな。

 なんか、正確で効率的なフォームとか、自動で修正してくれる」

「ああ、命中率補補正、って、そういう」

 遥はそういって椅子に腰掛け、そばに居たうぃを抱きあげて自分の膝に乗せて抱える。

「これなんだけどな」

 そういって、恭介は分厚い紙たばを倉庫の中から出した。

「銃とか弓とか、パチンコとか手投げとか、いろいろ試してみたんだけど。

 結果、これだ」

「……ほとんど、中心に命中しているんですけど。

 これ、距離はどれくらい」

「今日試したのは、千歩、あけた。

 ただ、感触としては、もっと遠くなっても命中率、そんなに変わらない気がする」

「はぁ。

 遠距離でなら、無双出来るね」

「ただ、集中する時に、一秒か二秒くらい時間がかかるんだよな。

 その時間を、実戦の時も稼げるかどうか。

 あと、不確定要素が多くなにが起こるのかわからな場所で、今日のように安定した実績が残せるかどうか。

 これは、実際にやってみないと、わからない」

 これまでは基本、出たとこまかせな部分は、多かった。

 今日のように、新しいジョブなりスキルなりの使い勝手を、事前に試せる方が珍しい。

「明日のオーバーフロー」

 恭介は、呟く。

「実際には、どんなものになるんだろうな」

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