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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
チュートリアル篇

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DIY

「あっちはあっちで、頑張っているようだね」

 というのが、生徒会集会の中継を聞いていた彼方の感想になる。

「ま、他人事だけど」

 彼方も、恭介たちと同じように、平行して作業しながら、中継の音声を聞いていた。

 彼方たちとトライデントは市街地への依存する部分がほとんどなく、正直、あちらがどうなろうが、あまり関心がない。

 むろん、大きくしくじるよりは何事もなく推移してくれる方が安心出来るわけだが、だからといって過剰な期待もしていない。

 今回の発表についていえば、

「生徒会の人たち、思ったよりも頑張ったな」

 という結論になる。

 まだまだ先が見えないので、予断は許されないわけだが。

「師匠、こんなんでいいっすかぁ?」

「うん。

 そこで、端の方固定してて」

 彼方たちは朝から墨出しと呼ばれる作業をおこなっていた。

 浄水槽を設置する場所、各種配管の位置、それと洗濯機を置いておく小屋の位置を地面にマーキングする作業になる。

 ぴっ、と、彼方が端を固定していた紐を上に引っ張って離すと、赤瀬が固定していた端との間を結ぶ直線上に、チョークの粉みたいな物体が付着する。

 昔は文字通り「墨」が使われていたそうだが、今ではほとんどこうした、もっと扱いやすい方法に変わっているそうだ。

「墨出しは、以上かな」

 周囲をざっと確認して、彼方はいった。

「で、今囲った、この四角の中の地面を、これから均します」

「はい、師匠」

 この四角で囲った場所には、洗濯機を置くプレハブを置く予定だった。

 外置きの洗濯場が欲しいという要望が魔法少女隊からあったので、ついでに設置することになった。

 どのみち、排水は同じ浄水槽に流し込むので、設置作業も今のうちにやってしまった方がいい。

 そう、判断したのだった。

 小石など、邪魔なものを手で取り除き、トンボで丁寧に地面を均す。

 水平器で確認してから、赤瀬はマーケットで購入したプレハブをそこに置いた。

「おお」

 赤瀬が感嘆の声をあげる。

「豪快ですな」

 瞬時に大きな物体が出現したわけで、事情を知らない人がこの光景を見れば、結構驚くのではないか。

 プレハブの中に入り、彼方は床に水平器を置いて確認する。

「師匠、随分と慎重っすね」

「そこまで厳密に確認する必要もないんだけど、まあ、性分だね」

 結果に満足したのか、彼方は立ちあがった。

「で、洗濯機と乾燥機はどこに?」

「ここと、ここの隅、ですね」

「サイズとかは確認した?」

「大丈夫。

 十分に入る、はずです」

 赤瀬はいって、まずは洗濯機を購入して、その場に出した。

「あ、梱包したまま、出て来た。

 そりゃそうか」

 開梱し、不要となった段ボールや梱包材、取扱説明書などを片っ端から倉庫に放り込む。

「ちゃんと設置する前に、排水用の穴、あけちゃおうか」

「ええと。

 ホースがここにあるから、ここいらかなあ」

「少し大きめにあけておくね」

 彼方はホースの経に合わせて大きめの円形を壁に描いてマーキングし、まず先の尖った工具で小さめの穴をあけてから金鋏の刃をこじ入れ、どうにか切り取って円形の穴にする。

 これは結構、力尽くの作業になった。

 穴に排水用のホースを通しながら、二人がかりで洗濯機を持ちあげ、予定の位置においた。

 かなり大きな洗濯機だったが、二人ともレベルアップの恩恵に浴していたので、特に苦労することはない。

 同じような要領で乾燥機も設置したあと、購入した発電機を窓のすぐ外に置き、延長コードの電源プラグを窓から垂らす。

 外に出て電源プラグを発電機に繋ぎ、洗濯機と乾燥機の電源を延長コードに繋ぐ。

「一応、アースもつけておくか」

 アース用のコードをプレハブの外に出して、杭を地面に刺す。

「いっそのこと、仮設のシャワーもこっちの方に持って来ません?」

「いいけど。

 それだと、もう一個プレハブが要るかな」

「買いまーす」

 今使っているシャワーは、比較的状態のいい小屋の中に設置していた。

 排水は、土間に捨てて地面に染みるままにしている。

 そのシャワーを倉庫の中に入れ、赤瀬はすぐに戻ってきた。

 洗濯用のプレハブと同じように、シャワー室用のプレハブも設置した。

 ただ、シャワー室用のプレハブは、水を流すためにほんの少し斜傾をさせていたが。

「で、低くなった部分に穴を開けて、ホース通して。

 ホースの周りを防水ボンドかなにかでしっかり固定して」

「はい、やっときまーす!」

 赤瀬は元気よく宣言する。

「じゃ、任せる」

 そういって彼方はシャワー室のプレハブから出て、魔法の杖を倉庫から取り出す。

 ここからは、土魔法の出番だった。


「まず、合弁浄水槽用の穴からいくか」

 合弁浄水槽は、自家用車くらいの大きさになる。

 それを埋める穴だから、相応な大きさになるのだが、彼方が土魔法を使うと一瞬にしてその穴が出現した。

 一度穴の中に入り、底の何カ所かに水平器をあてて、妙な斜傾がないか確認する。

 問題なく、底面はきれいに水平面だった。

 穴から出た彼方は、購入していた合弁浄水器を穴の中に設置した。

「次に、これと、洗濯機やシャワー室を結ぶパイプ用の穴を」

 これも、事前に墨出しを済ませていたため、問題なく完了する。

 細長い塩ビのパイプを、浄水器から洗濯室、シャワー室まで続く細長い穴の横に仮置きした。

 距離があるし、曲がっている場所もあるので、塩ビ管同士を専用のボンドで接合したり、バーナーで熱して曲げたりする作業が必要となる。

 面倒だが、これは手作業で片していくしかない。

 すぐに赤瀬がシャワー室から出て来て、二人で作業することになった。


 仕上がった塩ビ管を浄水槽まで繋ぎ、一度水を流して漏れている場所がないか確認してから、地面に埋める。

 それから、洗濯機用とシャワー用の排水ホースを、塩ビ管の入口に固定した。

「次は、浄水槽の方を仕上げますか」

 彼方は、浄水槽の片側、排水側にまわり、そこからかなり長く溝を掘った。

 十メートル以上、か。

「こんなもんかなあ」

 いいながら、今度はかなり巨大な、半球状の穴を土魔法であける。

 直径、三十メートルくらいか。

「なんですか、この穴」

「浄水槽できれいにした水を、貯めておくための池」

 彼方は答えた。

「スペック的には、出て来た水をそのまま飲んでもいいそうだけど。

 気分的に、直接飲みたいとは思わないでしょ?」

「まあ、そうですよね」

 基本、下水を処理したばかりの水だ。

「だからここに溜めておいて、飲料以外の、農業用とか生活用水として使おうかと」

「なるほど。

 でも、ここから溢れるようになったら、どうするんですか?」

「よほどの長雨でも続かないと、そこまでにはならないと思うけど。

 そうだね。

 溢れそうだったら、防壁の外にある空堀にでも流れ込むように、溝を作るよ」

 使える土地が広く余裕がある分、その辺はアバウトだった。


 浄水槽から貯水池まで伸びる穴に、太めのビニール管を設置する。

 直径が太いだけではなく、水圧に耐えるためか、管自体の厚みもそれなりだった。

 通常であればかなり重たいはずだったが、レベルアップしていたかなり手軽に扱っていた。

 物が頑丈である分、管同士を接合する時の作業が少し異なるくらいで、基本的な要領は先ほどの塩ビ管と同じ感じだった。

 そうして浄水槽から貯水池までの導線を仕上げて、太いビニール管に土を被せて埋める。


「もう、洗濯機使えるんですか?」

「そのはず。

 発電機回せば」

「それじゃあ、発電機に燃料入れて回してきます」

 赤瀬が走り去ると、彼方は木の杭を買って、貯水池の周囲に刺していく。

 ロープでも張って、誰かが間違って落ちないためのマーキングにするつもりだった。

 すぐ戻ってきた赤瀬も、その作業を手伝った。


「いい時間だし、休憩しようか」

「そうですねー」

 貯水池の周囲にロープを張り終えてから彼方が提案すると、赤瀬は即答した。

 いつの間にか、正午近くになっていた。

 赤瀬が連絡を入れると、少し離れた場所でなにやら実験をしていた、仙崎と緑川が合流してきた。

「そっちの調子はどう?」

「まずまず」

「何度も落下しました」

 彼方が確認すると、緑川と仙崎の意見は割れた。

「実験に失敗はつきもの」

「回復術がなかったら、二人ともこうして動けませんよ」

「まあ、気をつけてね」

 彼方としては、そういうしかない。

 天気がよかったので、彼方はテーブルと椅子を四脚、その場に出した。

 昼食については、調理の手間を省くため、各自ですぐに食べられるものを購入して食べる習慣になっている。

 椅子に座り、サンドイッチとかスナック菓子とかおにぎりとか、各自の嗜好に沿った食料を購入して、食べはじめる。


「そういえば、中継、聞きました?」

「生徒総会の方?」

「いえ、そのあとの、恒例のオーバーフローの方です」

「なにか変わったことでもあった?」

「なんか、出て来るモンスターがわかったみたい。

 巨大なダンゴムシ、とか」

「なんでも、全長一メートル以上のダンゴムシで、かなりの魔法耐性があるとか」

「最終的に、質量攻撃とか、あとは肉弾戦になってた」

「へー」

 オーバーフローも、いろいろ手を変えてくるんだなあ。

 と、彼方は感心する。

「一時はかなり苦戦したそうですが、最後の方には持ち直した、とかいってました」

 そういう結果になろうと、オーバーフローは一定時間経過すれば、そこで止まる。

 迎撃するプレイヤー側が失敗しても、その分、多くのモンスターが市街地の外まで逃げるだけだ。

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― 新着の感想 ―
面白いです。 少しずつ明らかになる世界設定について、考察したり、空想したりして、楽しんでいます。 150人の人類(ホモサピエンス)を惑星上に置いて、餌も取得出来るようにして、どうなるかな?って観察さ…
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