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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(二十三)

 クァールと名付けられた黒豹型の召喚獣が、飛竜の肉を貪っている。

 肉というか肉塊、いや、肉で出来た壁のような物体だった。

 自分の体よりもよほど大きなそれに食らいついては鋭い牙でもぎ取り、咀嚼するのを繰り返すクァールを見ていると、

「この子も本来は野生の存在なんだな」

 などよいう感慨を持ってしまう。

 吉良明梨は、この時点で割と疲労を感じていた。

 かなり長く、飛竜を付与術で抑制し、弱体化していたから、である。

 吉良が使う付与術は、通常のスキルと同様に、使用者に極端な負担をかけることはない。

 しかし、そうした性質とスキルの連続使用による精神的疲労とは、また別勘定だった。

 今回は、飛竜という超弩級モンスターが相手である。

 さらにいえば、何十カ所と輪切りにされていてさえ、その存在感は微塵も揺るがず、気の抜けば今にお動き出しそうな雰囲気を醸し出しているような、正真正銘のモンスターが相手だった。

 そんな破格な相手を、長時間無効化しようと試みることがどれほど、精神的な疲弊を招くことか。

 こればかりは、他人には理解出来ないだろうな。

 と、吉良明梨は思う。

 大型召喚獣が再召喚可能となったおかげで、趨勢は完全に定まっている。

 このまま何事なければ、超大型召喚獣が再召喚可能になるのも、時間の問題なのだ。

 次々と現れた大型召喚獣たちは、競うようにして残っていた飛竜の肉を貪っている。

 これに超大型召喚獣が続けば、飛竜の肉が消費される速度も、さらに加速されていくはず、だった。

 ふと上を見あげると、ところどころ、白く光っている場所がある。

 光と前後して、鈍い轟音も聞こえてくる。

 放電現象、雷、だ。

 多分、人の手による、魔法の。

 通常の落雷と違うのは、その雷は天と地上を繋ぐものではなく、だいたい水平方向へと走っていることか。

 この距離でもああ見えるということは、間近で見ればかなりの規模になるのだろう。

 相変わらず、派手にやっているなあ。

 と、吉良明梨は思う。

 今、あそこで暴れているのは、馬酔木恭介たちと魔法少女隊のはずだった。

 かなり広い範囲から範囲のモンスター群が接近中で、しかし、空中から来る分は、ああして大部分を蹴散らしているらしい。

 陸続と終結してくるモンスターのすべてを少人数で全滅するのは物理的に無理なわけだが、それでもかなりの割合で始末をしているという。

 牽制にしてもやり過ぎ、いや、出来過ぎだろう。

 と、吉良明梨は思う。

 思い返してみれば、積極的に空を飛ぼうとしたプレイヤーは、他には居ない。

 というか、ほとんどのプレイヤーにしてみれば、積極的に空を飛ぼうとする、切実な理由などない。

 今上空で暴れている連中は、かなり例外的なモチベーションで動いている、物好きな連中ということになる。

 その例外的な連中が居たおかげで、百五十人のプレイヤーは何度も助けられているわけだが。

 なんなんだろうな、あの連中は。

 と、吉良明梨は思う。

 ソラノ村で間近につき合う機会を得て知ったことだが、あの連中は割合に気さくで、かつ親切だった。

 特にこれといった理由もなく、見知らぬ異世界人たちのために尽力している場面も、何度も目撃していた。

 少なくとも、利己的な目的のみで動くタイプのプレイヤーではない。

 無論、その行動の多くは、打算を含んだ目的を持っているのだろうが、それは大半の人間が、そうなのではないか。

 つまり、あの連中は、間近で見てみると、他のプレイヤー、人間と、さして変わらないように見えた。

 しかし実際には、集団で転移して来た時から一貫して、他のプレイヤーが為しえなかった実績を着々と積みあげている。

 今回も、この飛竜を飛行不能な状態にまでダメージを与え、地上に落としたのは、あの破壊だった。

 この飛竜がかなり特殊なモンスターだったから、この事態が長引いているわけだが、あれが普通のモンスターだったら、その時点で片がついているはずだった。

 あの破壊は、こと、攻撃力に関していえば、他のプレイヤーからかなり抜きん出た存在に成長しつつある。

 客観的な評価として、そう思う。

 単純に破壊力だけを抜き出してみれば、あの勇者様も及ばない領域に居るのではないか。

 いや、勇者結城ただしも、決して弱くはないのだが。

 他の、大多数のプレイヤーが手こずっていた飛竜の首を、瞬時に切断したくらいには、強い。

 ただその強さは、どうやら質が違うらしい。

 勇者様が、どうやら単独の相手に特化した強さであるとすれば、破壊の恭介は、どうも広範囲無差別な攻撃を得意とするらしい。

 あの威力を見ていると。

 空の光を目で追いながら、吉良明梨はそんなことを思った。

 あれはもはや、意思を持った自然災害、みたいなものではないか。

 というか、個人が、それだけ大きな力を持ち得ているこの場の状況が、冷静に考えてみるとかなり怖い。

 どう考えても、他のプレイヤーとは違う、突出した存在に育ちつつある。

 いや、能力と影響力の大きさでいったら、吉良明梨自身の相棒である左内左記の能力だって、似たようなものなのだが。

 とにかく、特定個人にこれほど大きな能力を付与されるこの状況というのは、実はかなり危険なのではないか。

 この時点では、そうした巨大すぎるる能力を悪用しようとするプレイヤーは、結果として出て来ていないわけだが。

 転移先で、ほとんどなにもない社会で、能力を悪用しようとしても、むなしいだけ、というか。

 仮に、転移せずに、元の世界でこの能力だけを与えられていたら、悪用する者があとを絶たず、それこそ収拾がつかなかっただろう。

 環境的に、悪用のしようもない場所におかれ、なおかつ、当面の目的として、モンスターを倒すように仕向けられているので、仲間うちでの諍いは、少なくとも表面的には起きていないように思える。

 そう考えると、絶妙なバランスだよな。

 わたしらが置かれている、この状況は。

 現に、そうした絶大な能力の持ち主が何人も集まっても、用意倒せてない飛竜という存在が、こうして出現しているわけだし。

 本当、なんなんだろうねえ、この状況は。

 改めて、吉良明梨は思う。

 異世界人との交流もなし崩し的に本格化して、ますます先が、将来への展望が読みにくくなっている。

 多分、このチュートリアル自体は、もうすぐ終わる。

 仮に、今回で駄目だったとしても、次かさらにその次あたりで、決着がつく。

 はずだ。

 異世界人たちとの連携も、次回以降はもっと円滑になるはずだから。

 ただ、その先になにがあるのか、あるいは、来るのか。

 どういう事態になるのか、吉良明梨には、まるで予測がつかなかった。

 などと、考え事をしていると。

「お?」

 クァールが、飛竜の肉を貪るのを止め、大きく身震いをする。

 すると、クァールの前肢、人間でいえば肩に相当する部分から、太くて長い、突起のような物体が伸びはじめる。

「おお?」

 するすると伸びていく突起は、最終的には鞭状の物体になった。

 黒い体毛に覆われた鞭状の突起は、どうやらクァール自身の意志によって制御されているらしく、先ほどからその先でクァール自身の背中を掻いていたりする。

 ええ、と。

 飛竜の肉を食えば、なんか、パワーアップする可能性もある、って聞いていたけどさ。

 これはちょっと、想定外だなあ。

 クァールが、召喚獣だから、こういう変化になっているのか。

 それとも、他の要因があるのか。

 人間が食べても、こんな変化が起こるとか?

 とか思いかけて、すぐに、

「いや、それはないか」

 と自分で打ち消す。

 そういう情報は、すぐに広まるものだし、今のところ、そうした噂は耳に入っていないし。

 ただ、飛竜の肉を人間が食べた場合、ステータスの数値がアップすることもある、とは聞いている。

 クァールに起きた変化と同様のものが、他の召喚獣にも起きるとすると。

 左内の能力的は、かなり底あげされる形になるのではないか。

 まあ、強くなる分には、いいか。

 と、吉良明梨としては、軽く考えている。


 同じ頃、吉良明梨の相棒である左内左記は、飛竜の肉を料理していた。

 特に硬い肉質、ということで、調理方法を工夫する必要があった。

 煮込む、などの基本的な対策と並行して、左内は、召喚獣のうち、小鬼型の者たちに業務用の包丁を持たせて、大量に挽肉を作らせてそれを調理した。

 刻んだ他の具材や調味料と合わせて混ぜ合わせれば、つみれやハンバーグの種となる。

 あとは、焼いても煮てもいい。

 飛竜の肉を食べたがるプレイヤーは多かったから、とにかく大量に調理する必要があった。

 ヒト型に近い体型の召喚獣たちに調理や給仕を手伝わせながら、左内は先ほどから忙しく働いている。

 モンスターを相手に召喚獣を使役しているよりも、こうした作業をしている方が、左内自身の性に合っていた。

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