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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(二十一)

「念のために確認しておくが」

 小名木川会長がシュミセ・セッデスに訊ねた。

「今こちらに集まってきているモンスターは、達成率とは無関係になるんだよな?」

「達成率に変動はないな」

 シュミセ・セッデスは自分のシステム画面を確認しつつ、答える。

「完全に別勘定なのではないか」

「で、あれば」

 小名木川会長は、誰にともなくそういう。

「外からこちらにやってくるモンスターは、別に律儀に全滅させる必要もない。

 まあ、その程度はあいつも察して動いてはいるんだろうが」

「飛竜を無力化出来たことが、かえって裏目というか事態を複雑にしている感じですね」

 横島会計が意見を述べる。

「普通のモンスターなら、とっくに倒れているところなんですが。

 ってか、全身輪切りにされてもまだ死亡判定が出てこないって、どうなんっているでしょうね、あれ」

「通常の生物ではない、ということなんだと思います」

 築地副会長がいった。

「特定の手順に従って処理しないと倒すことが出来ない、とか」

「伝承だと、逆鱗とかがあるはずなんだけどな。

 わざとらしくわかりやすい弱点が」

 小名木川会長が、そんなことをいう。

「それらしい部位は見つかっていない。

 という以前に、輪切りになっても死なない存在に今さら逆鱗もクソもないだろうし」

「伝承、とは?」

 シュミセ・セッデスが訊き返す。

「あの長虫のような存在が、そちらにも伝えられているのか?」

「完全に空想上の存在ですけどね」

 築地副会長が律儀に答える。

「あの姿で空を飛んでいる時点で、通常の道理は通用しない相手だと判断するべきなんでしょうけど」

「むしろ、特殊な能力を持つプレイヤーたちの組み合わせで、ほとんどリスクらしいリスクも負わずにあれを無力化している現状の方が、異常なのでは?」

 アイレスがいった。

「この上は、あの飛竜めに一刻も早く引導を渡すのが上策であるかと」

「結局、それになるのか」

 シュミセ・セッデスは頷いた。

「これは確認になるが、完全に死亡扱いにはならないものの、本体から分離した部位などは普通に採取しているのだな?」

「報告によると、普通に各プレイヤーの倉庫内に格納されているそうです」

 横島会計が事実を伝えた。

「でも、輪切りになった胴体部分はまだ倉庫内に格納されていません。

 倉庫内に格納された部位とその他の部位、両者の違いというか設定上の条件が、今ひとつはっきりしていませんね」

「単純に、サイズの問題じゃないっすか?」

 常陸庶務が意見を述べる。

「生物意外なら、かなり大きな物も入るんですけどねえ、倉庫」

 小橋書記が思案顔でいう。

「重機とか戦車なんかも、丸ごと入りますし」

「そういえば、マーケットでも生物とかペットは売買出来ない仕様のようですね」

 筑地副会長がいった。

「ぎりぎり、植物の種子とかは問題ないようですが」

「そこまでマーケットに入っていなかったら、食糧事情も変わってくるしな」

 小名木川会長は、そう応じる。

「果物なんて、果実を食べるものがほとんどだろ」

「よくよく考えてみると、なまものって生物の一部分ですよねえ」

 小橋書記が、そんなことをいい出す。

「活きがいい、って表現があるように、細胞単位で見ると死んでいない方がいい、って風潮がありますし。

 食べ物っていえば、あの飛竜の肉、実際に食べているプレイヤーが居るそうです」

「はぁ?」

 シュミセ・セッデスは思わず訊き返す。

「あの長虫をか?」

「あれ、虫、なんでしょうかね?」

 築地副会長が小さく首を傾げた。

「強いていえば、鱗があるし、爬虫類か魚類に近い存在だとは思いますが」

「あんな例外的存在を、無理に普通の分類学に当てはめるのもなあ。

 アレは丸ごとアレ、でいいだろ」

 小名木川会長は、そう応じる。

「ただ、竜の伝承を知らない文化圏の人があれを見て、食べたくない、と感じるのも、まあわかる」

「爬虫類、トカゲやヘビの仲間というのはまだしも、あれが魚になるのか?」

 今度はシュミセ・セッデスが首を傾げる。

「竜の伝承には、ある種の淡水魚が一定の条件を満たすと、天に昇って竜になる、というものがあります」

 築地副会長は、真面目な表情を崩さずにそういった。

「魚の延長にあれが存在していたとしても、別に不合理とは思えませんね」

「いずれにせよ、好んで食べたくはないな」

 シュミセ・セッデスは感想を述べる。

「それで、実際に食べたやつらから味とかは伝えられているのか?」

「味はたんぱくで、うまくもまずくもないそうです」

 小橋書記は答える。

「ただ、味以外に、ちょっと例外的な特性がありまして」

「まさか、不老不死に鳴るとかじゃないだろうな」

 小名木川会長は、うろんな目つきになる。

「人魚の肉ではあるまいし」

「仮に不老不死になったとしても、今すぐにそうとはわかりませんね」

 小橋書記は淡々と答える。

「ただ、各種パラメータが、軒並みあがるんだそうです。

 おそらくは、一時的な効果、だとは思うんですが。

 そういう情報が広まっているのも、当地に移動してくるプレイヤーが増えている原因になります」

「ブースター機能食品、かあ」

 小名木川会長はうっすらと笑みを浮かべる。

「結構なことじゃないか。

 そのまま、竜の肉を全部、プレイヤーの胃袋に送り込めば、いくらなんでもチュートリアルも終了だろう」

「ダメージが通るだけでも膨大なポイントが獲得可能で、なおかつ、そのモンスターは目下、抵抗出来ない状況にある。

 さらに、その肉を食べると強くなれるっていうんなら、かなりおいしい獲物になりますね」

 横島会計はそう指摘をした。

「普通に考えると、ですが」

「なんだっていいが、集まってくるモンスター群が本格的な被害を出す前に、あのデカブツが消してくれないもんかねえ」

 小名木川会長がいった。

「チュートリアルが無事終了するのが先か、それとも、集まってきたモンスター群にわたしら全員が蹂躙されるのが先か。

 割と、予断を許さない状況になると思う」

「それで、どちらを優先させるべきでしょうか」

 アイレスがシュミセ・セッデスに確認した。

「防御か、それとも、攻勢か。

 接近中のモンスター群か、それとも、あの飛竜なるモンスターの始末か。

 両方を一度になそうとすると、半端な結果になりかねません」

「そんなの、決まっているではないか」

 シュミセ・セッデスは即座に断言する。

「飛竜攻略を最優先に、だ。

 守勢に回るのは性に合わん。

 それに、先に大勢があの肉を食らっておいた方が、先々のことを考えても、なにかと融通が利くはずだしな」


「ってことで、しばらくこっちはわたしらだけでやってなさい、だそうで」

「ん。

 別にいいけど」

「でも、大きな鳥に乗っていた人たちは?」

「その鳥さんが、ぼちぼち限界。

 徹夜してここまで来たってことで、これ以上、無理はさせられないんだって」

「もう日が暮れて、視界が効かないしねえ」

 魔法少女隊の四人は、通信でそんなやり取りをしながらも、攻撃の手を緩めていなかった。

 前のチュートリアルでの反省から彼女たちは、

「近接戦闘はとにかく避ける」

「ロングレンジでの範囲攻撃を主体に使う」

「単独行動は避け、お互いの死角を補い合うような位置関係を維持する」

 などの方針を自分たちで定め、それに従って動いている。

「撃墜数を稼ぐより、自分たちが死ににくい」

 布陣を、というわけである。

 聖女様の復活スキルがあるにせよ、それがどこまで当てになるのかは不明のままだった。

 ひょっとすると、死体の損壊状況なども、スキルの成否に関係してくるのかも知れないし。

 今回のような空中戦の場合、最後は地面と激突することが前提になるので、損壊状況もかなりひどいことになるはずでもあり。

 なにより、自分たちがそんなに痛い目に遭うのは、可能な限り避けたかった。

「必ず生き返るから死んでくれ」

 といわれても、素直にそれを首肯する人はそんなに多くはない、のだ。

「わたしらはこれまで通り、専守防衛でいいとしても」

 青山がいった。

「あちらは、凄いね。

 その、物量が」

「桁違い、だよねえ」

 仙崎が、そう応じる。

「ああれだけ派手にやっていると、地上からもかなり目立つはず」

「師匠のやることだから」

 緑川が、平坦な声でつけ加える。

「箒の操縦も、的確だし」

「敵集団の注意を引いて、よく攪乱しているよねえ」

 赤瀬はそう評する。

「師匠の範囲攻撃が絶大な威力なのは前提にしても、それにプラスして、あの状況判断能力で分業してくれる人が居るとのはなあ。

 まあ、普通に強いや」

 恭介と遥が乗る箒は、先ほどから小刻みに進路を変えて旋回している。

 遥の広範な索敵能力と、それに、的確な状況判断能力の合わせ技だ。

 あれほどの急旋回をしても、箒から振り落とされないのも驚きではあるのだが。

 以心伝心というか、乗員二人の間で意思の疎通がよほどうまくいっていないと、二人の箒であれだけ急旋回を繰り返すのは無理だろう。

 二人が乗る箒が敵集団の注意を引きつけつつ、大幅に数を削ってくれるおかげで、魔法少女隊の四人は二人の討ち漏らしを始末するような、補助的な働きに徹することが可能になっている。

 その分、敵集団から目をつけられる頻度も少なくなり、リスクも大幅に減っているはずだったが。

「でも、これ、そんなに長くは保たないと思う」

 赤瀬は、そんな風に呟く。

 少数対多数の集団空中戦である、という前提は、変わっていない。

 ほんの少しの判断ミスが自分の死として跳ね返ってくる状況は、確実に神経をすり減らす。

 そんな状況が長く続けば、どこかで取り返しのつかないミスをする。

 はず、だった。

「下の人たちに、期待するしかないね」

 青山がいった。

「人数、滅茶増えているようだし。

 状況的には、そんなに悪くなってはいないと思うけど」

「こちらが潰れる前に、飛竜殺しを終えてほしい」

 緑川が、結論を口にした。

「そうしないと、このチュートリアルも最初からやり直し」

「やり直しになったら、今度は最初からもっと強いモンスターが出て来るんだろうし」

 仙崎がいった。

「これでビシッと決めてくれないと、いろいろとキツくなるな」


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― 新着の感想 ―
前話と前半部の内容が一緒なのでは?
ん? 前話と同じですよ。
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