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高校生150名が異世界廃墟に集団転移したようです。みんなは戸惑っているようですが、おれたち三人は好きにやらせて貰います。  作者: (=`ω´=)
接触篇

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総力戦(十七)

 このモンスター、抵抗や反撃はしないんだな。

 そう思いながら、恭介はジョブを新しく得たばかりの「魔法剣士」に変えて、大太刀を振りかぶる。

 恭介はその刀身に、無属性魔法を纏わりつかせてた状態で、振りおろす。

 たいした抵抗もなく、大太刀の刃は飛竜の鼻面を切り裂いた。

「便利だ」

 恭介は呟く。

 これまでは、無属性魔法を使った直後に攻撃をしなければ、ほとんどダメージが通らなかったわけだが。

 この魔法剣士の「魔法剣」というスキルを使用すれば、それが一挙動で済む。

 剣士のジョブにも、攻撃力を増加させるスキルは複数用意されていた。

 オーラ斬りとか唐竹割りとか兜割り、斬鉄剣、など。

 名称も効果も様々だったが、剣士のジョブを使いこなす予定がなかった恭介は、その詳細をいちいち記憶していない。

 その点、魔法剣士の魔法剣というスキルは、その効果がわかりやすかった。

 これまで使って来た魔法が付属した剣による攻撃、ということで、かなりイメージもしやすい。

 今回の敵の場合、無属性魔法を剣に纏わりつかせると、単純にそのまま攻撃するだけで十分な効果が得られるようだ。

 だとすれば。

「あとはせっせと体を動かすだけですかね」

 そういう呟き、恭介は無心に大太刀を振りおろし続ける。

 遥は先ほど、

「このモンスターの素材は、かなりの高額で買い取られるようだ」

 という情報を伝えてくれた。

 単なる鱗や肉でもそうなら、さらに希少性の高い、牙や舌などの素材は、もっと高額に設定されている可能性が高かった。

 いや、ポイントよりも、そうした高額で希少な部位には、なんらかの効果が認められる可能性も高く、酔狂連への手土産としてそれなりに喜ばれるものと、予想もされる。

 幸いなことに、この頭部周辺に取りついたプレイヤーは、他にはいないようだった。

 だとすれば、他のプレイヤーたちはこちらに集まってくる前に、希少な素材を採取できるだけ、採取してしまおう。

 と、この時点で恭介は、そんなことを考えている。


「鼻先、飛竜の顔を、なますに切り刻んでいますね」

 例によって、空撮ドローンからの中継映像を観た横島会計がいった。

「馬酔木くん、あの飛竜が怖くないんでしょうか?

 他の人たちは、怖がって頭部には近づいてはいないのに」

「キョウスケ殿は、あのまま首を落とせないものか?」

 シュミセ・セッデスが疑問を口にする。

「どんなモンスターも、首を落とせばそのまま死亡すると思うのだが」

「物理的に考えると、無理かと思われます」

 筑地副会長がそう指摘をした。

「あのモンスターの首回りは、推定で直径三十メートル以上。

 馬酔木くんが所持している刀身の、実に十倍以上のサイズになります」

「あの剣で余計な鱗とかを取り除いて、その上で魔法攻撃をするとかは?」

 小名木川会長が、指摘をした。

「あいつなら、それくらいは出来そうなもんだが」

「そうした方法が仮に可能だとしても」

 筑地副会長が、別の指摘をした。

「それを実行した場合、他のプレイヤーたちが本来得られた取り分が大きく目減りし、その分を、馬酔木くんが独り占めする形となります。

 モンスターが倒せたとしての、そのあとに大きなしこりが残るのではありませんか?

 少なくとも、こちらから指示を出してそのような方法を実行させるのは、あまり推奨出来ません」

「モンスターではなく、仲間うちで争いがはじまる、か」

 シュミセ・セッデスは、筑地副会長の言葉に頷く。

「認めたくはないが、よく理解出来る意見だ。

 キョウスケ殿が自発的にそのような方法を採用するのなら、こちらとしても止める筋合いはないのだが。

 こちらから指示をしてそうした方法を示唆するのは、止めておいた方がいいな。

 余計な不和の種を蒔くだけだ」

「この進捗状況を見ると、完全にあのモンスターを討伐し終えるまでには、相応に時間がかかると思いますが」

 筑地副会長はいった。

「逆にいえば、時間さえかければ十分に現状の方法でも討伐可能なモンスターである、ともいえます。

 これまでの挙動を見るに、あのモンスターは、どうやら倒しにくいということに特化した性質を持っているようですから。

 その特性も半分は潰され、もう半分も有効な方法がすでに見つかっている以上、焦らずにじっくりと攻め続けるのが無難でしょう」

「見ていると、討伐というよりも解体作業をやっているような感じになっているもんな」

 小名木川会長が指摘をした。

「結界術で足場を作って、高所を攻撃している連中も増えているし。

 ポイント的にかなりおいしいということで、攻撃に参加する人数はどんどん増えているし。

 副会長がいう通り、このままモンスターが動きを変えない限りは、最後までいくのも時間の問題だろう」

「あのモンスター、動くに動けないんじゃないですかね」

 小橋書記がそういった。

「付与術士の吉良さんが、念入りにデバフスキルをかけ続けているようですから。

 本来の性能を発揮不能な状態であり、なおかつ、麻痺などの付与にも成功しているようですので、動くに動けない状態であるかと」

「多数の召喚獣を提供してくれた者といい、そちらの特殊なプレイヤーたちの功績は大きいな」

 シュミセ・セッデスはいった。

「キョウスケ殿もそうだが、そちらから来た人員が来ていなかったら、どうなっていたことか」

「どうやら、モンスター側はこちらの戦力に合わせて、出現するモンスターの種類や量を調整している節がありますから」

 筑地副会長が、また冷静な声で指摘をする。

「その場合、これまでと大差のないチュートリアルが続いていただけ。

 そのような可能性が、大きいです」

「それはそれ、というやつだ」

 シュミセ・セッデスは声を大きくする。

「現状、うまくいっているし、このまま無事に終わりそうであるから、子細なことに拘ることもなかろう。

 負傷者たちの状況は、どうなっているのか?」

「城内で活動していた救護班が一カ所に集まったこともあって、救護活動の効率化がなされているようです」

 アトォが報告した。

「軽傷の者はすぐに治療され、それ以外の者たちは聖女様の方に回されています。

 意識がある者たちは、負傷の度合いに関わらず、飛竜討伐に参加したがって騒ぐので、そちらの方を鎮める方が大変であるとか。

 動けるようになった者から順番に、飛ぶようにしてまた飛竜の元へと駆けつけているそうです。

 そのおかげで、聖女様の方も、自身では身動きの取れない重症者に専念できているとか」

「つまりは、問題がないわけだな」

 シュミセ・セッデスは大きく頷いた。

「まことに、結構なことだ」


「結構、忙しいかな」

 付与術士の吉良明梨は、クァールの背に乗りながらそんなことをいう。

「あっちからこっちへ。

 こっちからあっちへ、と。

 このモンスター、割と短時間のうちにデバフ状態を解除して暴れようとするから、こちらとしては休む間がない、と」

 恭介をはじめとする多くのプレイヤーたちは誤解していたが、飛竜は別に「積極的攻撃をしてこない、大人しいモンスター」というわけではなく、吉良明梨のスキルによって身動きを封じられているので、大きく動けないだけなのだ。

「付与術士ってジョブも、これだなかなか働きが認められないジョブだよねー」

 などと、吉良明梨自身も、そう思う。

 それで特に、不満はなかったが。

 というのは、この飛竜にデバフ系のスキルをかけるだけで、膨大なPPが獲得出来るということに、気がついていたからだ。

 漏れ聞こえて来る声によると、他のプレイヤーたちも、このモンスターから採取される素材の希少性、換金効率のよさについて、すでに噂となりかなり広まっているらしい。

 だとすれば、獲得PPについてもすぐに誰かが気づき、あっという間にその情報も知れ渡ることだろう。

 こうしている間にも、そうなっていておかしくはなかった。

 このモンスターになんらかの行動を起こせば、それだけで膨大なPPが入手可能。

 やはり、このモンスターは、かなり特別な存在であるらしい。

「一種のボーナスステージ、みたいなものかな?」

 とも考えるが、付与術士である吉良明梨自身がこの場に居なければ、ここまで容易くこのモンスターに攻撃を当てられるわけもない。

 いや、それ以前に、馬酔木恭介というかなり特殊なプレイヤーがこの場に居なければ、この飛竜も悠然とそのままいずこかへと飛び去っていただけだろう。

 今回集まったプレイヤーの面子が、かなり特殊だった。

 あるいは、特殊なプレイヤーが集まったから、こんな特殊なモンスターが出現することになったのか。

 その因果について、吉良明梨自身はどちらとも判断出来なかったが、こんなことが二度と起きないであろうとは、推測が出来る。

 今回のチュートリアルは、様々な要因が偶然組み合わさった結果出現した、かなり特殊なものなのだ。

 おそらくは、だが。

「準備はいいか?

 一斉に、撃て!

 次、実弾、撃て!」

 少し離れた場所から、そんな号令が聞こえてくる。

 高くそびえる飛竜の胴体に向けて、無属性魔法と銃撃の連続攻撃により、鱗に打撃を与えて落とそうとしているのだ。

 やる気のある人手だけは余っていたので、ZAPガンや物々しいライフルを抱えた連中が、そこに数十名単位で集まっていた。

 そうした連続攻撃によって鱗を脆くしておくと、比較的簡単に鱗が剥ぎ取れる、そうだ。

 そうなれば、皮膜に例えられている特殊な結界は作用せず、鱗をはいだ部分にそのままスキルによる攻撃を与えていくだけでいい。

 そうした人数に任せた人海戦術により、飛竜の体は各所から浸食されつつあった。

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……う〜〜ん、生殺しw
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